Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
Moonlit Promises IV
え?日曜ですか?
仕事でしたが、何か?

こんばんは
フェルゼです。

先日もなにやら楽しげなイベントがあったようで、
あの方は、どうされたのだろうか…などと、思いを馳せてみるわけです。
すでに拍手コメントにて希望を述べてしまったので、改めてお尋ねするのもしつこいような…。
勝手に動くわけにもいきませんし、少し、待ってみますかね…。

何はともあれ取りあえず、自分のところを動かさねばなんともならないわけですけどねw
というわけで、週末を挟んでしまいましたが続編となります。
お話は現代に戻って、さて…。

お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。



 手で隠した頬をそっと撫でる。
 私の唇はまだ、あの人を求めたままで。

 「なにボーッとしてんのよ」
 「え?」
 咎めるような声に意識が現実へと引き戻される。
 「ホームルーム、始まるわよ」
 「あ、うん」
 そんな時間かと時計を見上げる。
 そのタイミングで、教室の戸が開いた。
 「おはよう。それじゃあ、ホームルームを始める」
 喧騒が収まっていくのを確認して、担任のクロノ=ハラオウン先生が連絡事項等の伝達を始めた。
 
 委員会等からの連絡も終わり、始業まであと5分。
 一時限目はクロノ先生の数学なので、このまま始まるのだろう。
 と、教室内の空気が緩んできたのを感じたのかクロノ先生の口調が変わった。
 「では最後に。
  このクラスでも実習生を一人受け持つことになった。
  担当は数学。よって次の時間、後半をその先生に受け持ってもらおうかと思っている」
 件の朝礼の影響か、戸惑いと期待が混ざったざわめきが起こった。
 「静かに!…では、入ってきてください」
 どうやら廊下に待たせていたらしい。
 扉が開く。
 背筋を伸ばして、前を見つめて。
 その人が歩くたび、黄金が揺れる。
 心臓が、トクンと音を立てた。

 「フェイト=テスタロッサ……です」

 小さなざわめきが起こり、次の瞬間「おぉー!」という声があちこちで起こった。
 「あぁ、そうそう。テスタロッサ先生だ」
 「本当にこのクラスの担当になるなんて、びっくりだね」
 クラスの中の様々な声が耳に入るが、意味をなす前に消えていく。
 意識はただ、彼女のみに集中して。
 気を取られてすぎて、見逃した。 
 小さな、サイン。



 キーンコーン…
 一限終了の合図。
 それと共に張りつめていたそれが安堵の空気に変わる。
 しばらく待ってから板書を消し、クロノ先生と出て行った彼女を見送って。
 教室内が喧騒に包まれた。
 「どうでした、バニングス先生?」
 「初めてにしては上出来ね。どこかの塾でアルバイトでもしていたのかしら」
 隣からはふざけ半分に評価している声が聞こえる。
 「なのははどう思った?」
 身を乗り出してノートを覗きこんだアリサちゃんが、眉をひそめた。
 「あんた全然ノート取ってないじゃない」
 その声にすずかちゃんも身を乗り出してくる。
 「あ、本当だ。どうかしたの?」
 「…別に」
 視線を合わせないまま呟いて、白紙のノートを閉じた。
 「次移動教室だよね。行こう」
 「あ、ちょっと待ちなさいよ!」
 机に押し込んだ勢いで立ち上がると、友人を誘って教室を後にした。


 会いたかった。
 駆け寄りたかった。
 抱きしめて、ほしかった。
 けれども。

 「なのは、私たち数学の質問に行くんだけど、来る?」
 「数学?…うん、行く」
 誘われるままにアリサちゃんたちと出向いたのは職員室…ではなく、実習生の控室。
 「ま、クロノ先生ならいつでも聞けるしね」
 「…そう、だね」
 「失礼しまーす。数学の質問に来ました―」
 そう言ってドアを開ける…と。
 すでに、数名が彼女の周りに立っていた。
 「アリサちゃんたちも質問?」
 「そ。あんたたちも?」
 「ん…まぁ、質問がてら、ってとこかな」
 数学のノートを手にしてはいたが、すでに話題は別の方向へと移っていた。
 「テスタロッサ先生、アリサちゃんたちも質問だって」
 「はい?」
 そう言って振り向いた彼女、の、視界に、私が入ったのがわかった。
 「バニングスさんと、月村さん…高町さん、だよね」
 「当たり。もう覚えてくれたんですか?」
 「担当クラスの生徒たちだからね。
  先生として、これくらいはやっておかないと」
 笑う、彼女。
 …高町さん、か。
 それは私の期待したものとは違っていて。
 でも、少なくともこの状況では、私はただの一生徒なわけだし。
 …でもな…
 「実は、なのはちゃんとは幼馴染なんだ」くらいなサプライズは、言ってもいいのにな。
 「それで、なのははなんで付いてきたの?質問?」
 「ただの付き添い」
 「私は子供か」
 ぼそりと告げた私の返事にアリサちゃんがすかさず突っ込みを入れて。
 その時間は、何事もないままに過ぎた。
 

 「…あ、ごめんアリサちゃん」
 「なに?」
 「ちょっと用事思い出したから…私、後で帰るね」
 「待ってようか?」
 そう言ってくれたすずかちゃんに、ごめんねとだけ告げて。
 私は教室を後にした。
 「…」
 目の前には、実習生控室のドア。
 ノックをしようと腕をあげて、躊躇する。
 人の気配はする。
 けれども、特に話声はない。
 …彼女は、ここにはいないのだろうか。
 逡巡してから、結局私は小さくドアをノックした。
 「失礼します」
 「はい?」
 聞こえたのは、彼女の、声で。
 ドアを開けると、果たして彼女が一人で何やら作業をしていた。
 部屋の中には、彼女と、私だけ。
 「フェ…」
 かつてのように呼び掛けようとした私の声は。
 「高町さん、どうかした?」
 彼女の声に、押しとめられた。
 「…あの」
 「質問、かな」
 「…はい」
 その笑顔も仕草も、みんなといる時と同じで。
 「そう。それで、どこかな?」
 何も、何一つ、変わらない。

 
 彼女は、私を。
 忘れてしまったのだろうか。


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