Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
Moonlit Promises III
信じられるものは何かー!
自らの目と鼻と勘…だけであります!

こんばんは
フェルゼです。

こうして冷蔵庫の食材(だったもの)が一つ、ゴミ箱へと消えていくわけですね。
ごめんよ…次からはきっと計画的に買うから!

というところで。
王道好きな私の描く、続編となります。
呼称が違うと、なんだか書きにくいですね。

それでは、お付き合いいただける方は以下からどうぞ。




 「なのはちゃん…ごめん。ずっと言いだせなかったんだけど、私、引っ越すんだ…」
 それは、日常の延長線上で告げられた非日常。
 手が止まり、足が止まり、たぶん、呼吸も止まっていた。
 「…え?」
 「少し前から徐々にそんな話が出てきて、でも、決まったわけじゃなかったから言い出せなくて…」
 「…いつ?」
 「…一週間後」
 あと七日。
 「そんな!」
 「突然すぎたよね。ごめん」
 項垂れる彼女。
 言葉を失う私。
 「ほんとう、なの?」
 返事はなく。
 彼女は小さく、うなづいた。
 「っ!」
 涙が、込み上げて。
 「なのはちゃん!」
 追ってくる彼女の声を置き去りに、私は家へと逃げ込んだ。

 …
 ……
 あれから六日目の夜。
 私がフェイトちゃんの前に姿を見せないままの六日目の夜。
 フェイトちゃんが毎日来てくれてるのは知ってた。
 扉の前から、何度も呼びかけてくれて。
 黙ってたこと、何度も謝ってくれて。
 でも、私が出られない理由はそんな事じゃなくて。
 何なのか、自分でもわからなくて。
 会いたくなかった。
 会えなかった。
 怖かった。
 けれども。
 今夜だけ。
 あり得ない奇跡を。
 不意に信じてみたくなって。
 窓のカギを、そっと外した。
 こんな夜中に、あのフェイトちゃんが、そんなこと、するはずがないなんてわかってたけど。
 今夜、もしも、会いに来てくれたなら…。
 ベッドに腰を下ろし、窓をじっと見つめる。
 揺れるはずのないカーテンをにらみつける。
 短針が少しだけ動いて。
 そのまま横向きに倒れこんだ。
 「なにやってるんだろ…私」
 呟いて、ため息をつく。
 あり得ない、期待。
 自分で拒絶したくせに。
 もう、いいや…カギ閉めて寝よう…。
 腰をあげて、窓の外に視線を移し。
 気付いた。
 カーテンの向こうでうごめく影。
 こんこん
 窓をノックする影。

 「…なのはちゃん」

 信じられなかった。
 声が、出ない。
 やがて、窓が少し開いた。
 そのことに驚いたのか、そのまま手が止まる。
 けれども、またしっかりと動き出して。

 「なのはちゃん」

 金色が、月の光に揺れた。
 「行こう、なのはちゃん」
 自然と差し出された手をつかむと、彼女はそっと私を引き寄せた。
 ベランダの下。
 はしごが見えて。
 フェイトちゃんに目を向ける。
 彼女は少しだけいたずらな眼をして 
 「荷物の整理で出てたから、持ってきちゃった」
 ペロッと舌を出して笑った。

 誰もいない丘の上で。
 月明かりと星の煌きの下。
 フェイトちゃんと、二人きり。
 「きれいだね、なのはちゃん」
 夜空を見上げた彼女の声には答えずに、私はずっと言いたかった言葉を紡いだ。
 「行って欲しく、ない」
 俯いたまま、手を伸ばす。
 触れた彼女の服の裾を握りこんだ。
 「私だって行きたくないよ…でも仕方ない。仕方がないんだ」
 少しだけ屈んで私と視線をそろえたフェイトちゃんは冷静で。
 それがすごく、イヤだった。
 「うそつき」
 「なのはちゃん…」
 「イヤならどうしてそんなに落ち着いてるの!?ほんとは私と離れたっていいって思ってるんだ!」
 「そんなことない、そんなことないから…」
 「ウソつき!」
 「ちゃんと戻ってくるから、ね」
 「そんなの信じられない!」
 「約束、するから」
 「イヤだ!」
 私は、そんな約束は欲しくなかった。
 「なのはちゃん、どうして…どうして信じてくれないの?」
 どうして?
 「…私だって、信じたいもん…信じたいけど…」
 信頼したい気持ち、その気持ちの根っこにある感情が、私を不安に陥れる。
 「なのはちゃん…?」
 頭を振ったまま口をつぐんだ私に、フェイトちゃんが顔を寄せる。
 ドクン…と。
 鼓動が跳ね上がる私。
 平気で出来る彼女。
 苦しくて。
 ぶつけてしまえ―――と、声が聞こえた。

 「フェイトちゃんが好きだから!好きだから信じられないの!」

 込み上げてくる熱い塊。
 言うつもりじゃなかったのに。
 ずっと、隠しておくつもりだったのに。
 「なのはちゃん…私も、なのはちゃんのこと、好きだよ」
 いつもと同じ目をしてそう告げる彼女。
 ほら…届かない。
 「違う…」
 「なのはちゃん?」
 「違う!そんなんじゃない!」
 もう、どうでもよかった。
 全てを告げて、彼女と別れて。
 全部、これっきり。
 「友達の好きじゃない…!わた…」
 唇に、冷たい感触。
 フェイトちゃんの人差し指が、私のそれ以上の言葉を止めて。
 「なのはちゃん…」
 頬に触れた柔らかな熱。
 ―――彼女の、唇。
 「私の好きも、友達じゃないよ」
 そろそろと手を上げて、頬を押さえる。
 「いつからかな…。ごめんね…ずっと、内緒にしてきたんだけど。
  きっと、おんなじ気持ちだから。だから、信じてくれないかな」
 微笑む彼女と視線が合って。
 細めた目の奥、気付かなかった。
 フェイトちゃん…そんなに辛そうに笑っていたの?
 「今はお別れしなくちゃいけない。でも、帰ってくるから。会いに帰ってくるから。だから、待っていて」
 「うん…」
 彼女の言葉が素直に受け取れて、自然と頷いていた。
 「また会ったとき、続きをしよう?なのは…」



コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2005 Empty Dumpty all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.