Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
Bye-Bye "B" Day
遠い、な…
歪な月に呟く。
同じ月の下、アナタもいるはずなのに。
こんなにも、遠い。

こんばんは。
フェルゼです。

前回更新でいろいろ使い切りまして。
今回は軽めの一本で失礼します。
登場して頂くのは
「なのはさん、フェイトさん、アルフさん、そして一般の隊員さん達」
です。

それではお付き合いいただける方は、以下よりどうぞ。
 なのはは駆けていた。
 夜の闇に沈んだ街の中を、全力で。
 本当は、なりふり構わず飛んでいきたいのだが。
 流石に住宅地ではまずいと微かに残った冷静な部分が告げて、なのはは駆けていた。
 今日中に辿り着かなければならない。
 愛しい、彼女のもとに。
 誰より大切な、彼女のもとに。
 そう、今日は特別な日。
 フェイトの誕生日。



 Bye-Bye "B" Day




 今日だけは空けてほしい。
 そう願ったのに。
 昨日。
 緊急の呼び出しに、嫌な予感のみを抱いて答えると案の定出動の旨を告げられて。
 最速で駆け付け、最速で事態の収拾を図ったなのはのいつもとは違う気迫に、部隊の仲間が訊ねた。
 何かあるのか、と。
 報告書をまとめようとしていたなのはは、顔を上げることなく告げた。
 大切な人の誕生日だから、今日中に帰らねばならないと。
 どこか切羽詰った響きに、隊員たちは顔を見合せ、そして一つ頷いた。
 では、これとこれの報告をお願いします。と。
 示された報告書は、なのはが書かねばならないもので、でも、それだけで。
 その他の、隊員で分担して書かねばならない報告書は一枚たりとも入っていなかった。
 え…と言ったきり言葉を失ったなのはに、先ほどとは違う隊員が声をかけた。
 今回に限らず、毎回お世話になってますから。
 たまには、お礼もさせて下さい。と。
 

 厚意に甘えて頑張って。
 それでも間に合うかどうかぎりぎりの時間になってしまった。
 プレゼントを家に取りに戻る暇すらなく、おめでとうだけでも伝えたいと、直接会って伝えたいと道を急ぐ。
 こんな時ばかりは、自らの運動能力が恨めしくなる。
 時間を確認する間すら惜しい。
 駆け続けて、ようやく辿り着いた家の前。
 辺りにヒトの気配がないことを瞬時に確かめ、地面を蹴る。
 向かうは彼女の部屋の窓。
 ノックして。
 驚いたような顔をのぞかせた彼女が、窓を開ける。
 駆け続けた脚はもう、立つことすら放棄して。
 膝が、崩れた。
 「どうしたの?なのは」
 「フェイト、ちゃん、今日、誕生日…」
 言って、見上げた彼女の部屋の時計は。
 その、短針は。
 頂点を、回っていた。
 「あ…」
 ―――間に合わなかった―――
 なのはの表情に絶望が下りる。
 その視線を辿って、少し考えて。
 フェイトは理解したように微笑んだ。
 「あ、ごめんね。なのは。
  あの時計、少し前から止まってるんだ」
 言うとフェイトはなのはに背を向けた。
 なのはの視界が、フェイトの背中に置き換わる。
 そのまま手を伸ばして時計を取り、ほらと目の前に差し出す。
 「あ…」
 絶望が消えて、代わりに大きな安堵が表情を覆う。
 差し出された時計は確かに頂点を回ってはいたが、その針は秒針も含めてぴくりとも動いていなかった。
 「フェイトちゃん、誕生日、おめでとう…!」
 「うん、ありがとう。なのは」
 満面の笑みで告げられた言葉に、フェイトも満面の笑みで返す。
 言えた…そう認識した途端、疲れが押し寄せてきて。
 ぐらりとなのはの上半身が傾いた。
 「おっと…」
 抱きとめられた時、すでになのはは穏やかな寝息を立てていた。
 「お疲れ様…それから、ありがとう、なのは…」
 眠り姫に口付けを落とす。
 目覚めないよう、穏やかに。
 「ゆっくり、お休み…」
 抱きかかえて、自分のベッドに横たえた。



 「眠り姫の為ならば、時間も止めてみせましょう」
 そっと部屋を出たフェイトに、おどけた声がかかる。
 「アルフ…見てたの?」
 壁に背中を預けたアルフは、それには答えずに小さく笑った。
 「時間を止めるのは、王子様の仕事じゃないね」
 「…私は王子様なんかじゃないよ」
 「ほぅ?」
 「私はなのはの…魔法使いだから」
 「なるほど…」
 そう言って、楽しげに笑う。 
 「では魔法使い様。そちらの手の中の物は如何致しましょう?」
 「ん…じゃあ、朝食の後にでも」
 「確かに、お届けに参りましょう」
 大仰に頭を下げる。
 「どうしたの?一体…」
 フェイトが苦笑しながらそれを渡す。
 「お姫様がいて、王子様がいるなら道化の一つもいるかと思ってね」
 「残念、王子と思ったのはただの魔法使いでした」
 「それは失敬」
 「気に入ったの?それ」
 「ちょっと、ね」
 「道化の戯れにご用心?」
 「まさか」
 ククッと笑う。
 「お姫様の元に戻らなくていいのかい?魔法使いさん」
 「そうだね、そうさせてもらうよ。道化さん」
 「お休みフェイト」
 「お休み、アルフ」
 部屋の戸が閉まるのを見送って。
 背を向けたアルフが宙に放り投げたのは、一組の。
 単三、電池。






 後書き
 腕時計の電池がなくなったためにできたお話だなんて、そんなことありませんよ?
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2005 Empty Dumpty all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.