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ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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カクゴノススメ
カタカタ語り
カタコンベ

こんばんは
フェルゼです。

今回更新は、
「絶体絶命都市3」です。
これは災害に襲われた町から脱出するゲームなのですが、
崩壊する街から脱出しているつもりだったけれども、
気づいたら百合の迷路に迷い込んでいた。
な、何を言っているのか(略

もう何年前のゲームになりますかね……

というわけで、カテゴリは徒然にぶち込んでおきますが、
元ネタは絶体絶命都市3。
登場人物は牧村里奈さんと羽月彩水さんで、
お姉様エンド(?)後を妄想しております。
気分はR指定。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。


 「『待っています』か。
  ふふっ」
 彩水からの手紙はいかにも彩水らしくて、笑みが漏れた。
 私からの最後の連絡は、そう、ここの住所を彩水と咲さんの二人に教えた時のものだったと思う。
 ようやく落ち着けると書いたその電子メールに、咲さんは自分の住所とおめでとうという言葉、それからライブをすることになったから来てくれると嬉しいと返事が来た。
 絶対に行くわ、と返信してから暫くして、彩水から返信が来た。
 おめでとうございますという控えめな言葉と、しばらくは忙しくなりそうですという内容。
 何か力になれることはあるかと尋ねた私からのメールに、自分のしたことの責任は自分で取らないといけないから助けてもらうわけにはいかないと、あの子らしい返信が来た。
 そして、落ち着いたら連絡するから、それまで連絡はしないでほしいとも。
 その言葉に甘えてしまうから、と。
 頼もしくも寂しい気持ちに、妹の自立を見守る姉ってこんな心境なのかしらと思いつつ、分かったわと返事をした。
 それ以来の、彩水からの連絡。
 自筆の手紙というのがとてもあの子らしいと思った。
 そんな連絡ができるようになったということは、いろんなことの整理がついて、少しは余裕ができたということだろう。
 今すぐにでも会いに行きたい。
 そう言えば、あの子の住所ってどこかしら。
 封筒に彩水の文字を見つけてすぐに封を切ってしまったから、住所を確認するのを忘れていた。
 脇に置いていた封筒を手にとって、その住所を目で追って。
 「――もう本当に、彩水ったら」
 思わず笑ってしまった。
 それは、このアパートからほど近い場所を示していた。


 『彩水へ
  彩水からの連絡、とても嬉しく思います。
  あなたなりに再び歩み始めることができたことも。
  今すぐにでもあなたに会って――あなたの望みを叶えてあげたい。
  私のほうは、基本的に週末であれば時間は取れるわ。
  平日だと、日によりけりだけれども。
  あなたの方はどんな感じかしら。
  休める予定を教えてちょうだい。
  ただし、折角始めた仕事に支障が出ない程度にね。
  連絡、待ってるわ。
   あなたのお姉様 牧村里奈』

 『お姉様へ
  お返事、ありがとうございます。
  正直、お姉さまはもう私のことなんて忘れてしまっていても仕方がないと思っていました。
  手紙を送るのも躊躇してしまったので、お返事が頂けて、とても、とても嬉しいです。
  それに私と会ってくださるなんて。
  嬉しくてドキドキが止まりません。
  基本的には週末は時間を取ってくださるとのこと、来月6日の土曜日は如何でしょうか。
  お姉様とお夕飯をご一緒させていただけたらと思います。
  今からお願いすれば、土日でもお休みをいただくことができますから。
  お姉様もいろいろとお忙しいと思いますので、ご予定がありましたらその旨仰ってください。
  お返事、お待ちしております。
   彩水』

 『彩水へ
  来月の6日なら、大丈夫。
  7日の日曜日も空いているから、彩水さえよければ泊めてもらってもいいかしら。
  色々と話したいこともあるの。
  何時頃お邪魔したらいいか、教えてちょうだい。
  そうそうそれと、私があなたのことを忘れたりなんてするわけないでしょ。
  お姉様を甘く見たらだめよ、彩水。
   里奈』

 『お姉様へ
  あの、とても、嬉しいです。
  6日は、夕ご飯の支度をしますから、18時ごろに来てくださるとちょうどいいと思います。
  それで、その、お泊りのことですけれど。
  お姉様さえよろしければ、えっと、狭くて汚いところですけれども、泊まっていってください。
   彩水』
 
 『彩水へ
  6日の18時ね。
  分かったわ。
  一か月の待つのは辛いけれど、一年待ったことに比べれば軽いものね。
  それじゃあ、食べさせてもらうのを楽しみしているから。
  キレイにして待っていなさい、彩水。
   里奈』

 『お姉様へ
  ……キレイにして、お待ち申し上げております。
  お姉様に食べていただけるのを。
   彩水』


 それからの一か月は、なかなかに長かった。
 現在日時、6日の17時50分。
 私は、幾度も下見をしたルートを辿り、彩水の住むというアパートの前に立っている。
 号室を確認し、階段を上る。
 エントランスのようなものはない、少し古い建物。
 正直、女の子の一人暮らしには向いていないと思う。
 目的の部屋の前で足を止めた。
 プレートに名前は入っていないけれども、封筒の住所からするとここで間違いない。
 私はお泊り用具一式の入ったカバンを掛け直すと、呼び鈴を鳴らした。
 ありふれた音の後に聞こえる、パタパタという小さな足音。
 それが玄関の前で止まって、レンズで確認しているのか、少しの間があって。
 カチャリと、扉が開いた。
 「……いらっしゃいませ、お姉様」
 「お邪魔させてもらうわね、彩水」
 一年ぶりに再会した彩水は、泣きそうな微笑みを浮かべていた。
 
 玄関に一歩踏み入れると、彩水が扉を閉めた。
 一つしかない鍵とチェーンロックを閉める彩水の横顔を見る。
 綺麗になった、と感じた。
 じっと見ていると、気付いたのか彩水が頬を染めた。
 「あ、あの、お姉様。
  そんなに見つめられると、恥ずかしいです……」
 「恥ずかしがることなんてないわ。
  彩水、とても綺麗になったのね」
 「そ、そんな……私なんて」
 「本当よ。
  謙遜することなんてないわ」
 「き、きっとあれです。
  あの時は、煤や埃で汚れていたから」
 「そんな減らず口を叩く悪い口は、これ?」
 人差し指でそっと、彩水の唇をなぞる。
 「お、お姉様……いけません、こんな所で……」
 フルリと体を震わせた彩水は、そう言いつつも私の手を払おうとはしない。
 そんなところは、変わっていないのね。
 あの公園での夜を思い出して、少し笑みが漏れた。
 「冗談よ、彩水」
 「冗談、ですか。
  もう、ビックリさせないでください」
 ホッとしたような残念なような、複雑な表情を見せる彩水。
 「でも、あなたが綺麗になったのは本当よ」
 「え、えぇ……!?」
 「ふふっ。
  いい匂いがするわね。
  ねえ、早くご飯にしましょう。
  私もうお腹が空いちゃって」
 「は、はい!
  すぐに用意しますね!」
 用意してあったスリッパを履いて、彩水に続く。
 この部屋は、本当にいい匂いがする。
 あの時彩水からもらったハンカチと、同じ匂いが。

 ご飯をよそった彩水が、すでにおかずが並べられている小さな机にその茶碗を置くのを確認して、身を乗り出した。
 彩水の後ろから。
 肩口から顔をのぞかせると、彩水が動きを止めた。
 「お、お姉様!?」
 「ほんと、いい匂い。
  ねえ、今すぐに食べちゃっても、いい?」
 耳元でそう囁くと、見る見るうちに彩水が真っ赤に染まる。
 「お、姉様……。
  で、でも、料理が冷めて……。
  けど、お姉様がそう仰ってくださるなら、私……!」
 私に向き直った彩水の熱い視線。
 それを見て私は。
 「じゃあお言葉に甘えて。
  彩水の作ってくれたお夕飯、いただきましょう」
 そう言うと彩水はポカンとした表情をして。
 それから赤くなったり、青くなったり。
 ほんと、可愛い娘。

 お口に合うといいのですけれど、そう言って並べられた料理は、なるほど食堂で勉強しているだけあって、どこか家庭的な雰囲気がした。
 味の方も、彩水が頻りに気にするから構えてしまったけれど、普通においしいと思えるレベル。
 そのことを伝え、彩水が安心してからは、話をしながら食事をした。
 取り止めのない、話。
 先日行った咲さんのライブの話とか。
 私が今住んでいるアパートの話とか。
 食事をし、デザートにと私が買ってきたケーキを食べて。
 彩水の表情に、影が落ちた。
 「お姉様……」
 「どうしたの、彩水」
 「お姉様は、お優しいですね」
 「なんのことかしら」
 「あれから一年の間、私に何があったのか、尋ねようとなされないところです」
 「……色々、あったのでしょう?
  けれども一応は整理ができた。
  あとはあなたがそれを心におさめるだけ。
  それは……とても辛いことだと思うけれど」
 「……あの島で起こったことは全てが曖昧で、私も兄も、法律上の罪は問われませんでした。
  けれども、罪を犯しているのです、私たちは。
  兄は愛してしまった人を不幸にしたこと。
  私はそんな兄を含め、周囲の人全てを自分の復讐に巻き込み、不幸にしたこと。
  ……問われなかった罪は、どう償ったらいいのでしょうか、お姉様」
 「……難しい、問題ね。
  でも、あなたはこうして生きていくという選択をした。
  自分の力で。
  それが償いの一歩だと、私は思うわ」
 「ありがとうございます。
  私にはまだ、どう償えばいいのか、答えが分かりません。
  でも、いつか、私だけの力でも……」
 「駄目よ、彩水。
  それは駄目」
 「お姉、様?」
 「生きて償うという選択をした以上、あなたは一人でいては駄目。
  ねえ、彩水。
  あなたはあの災害で、何を学んだの?」
 「あの災害で?
  私……私は……」
 「私はね、彩水。
  人は一人でいたら駄目なんだって、それを学んだわ」
 「一人では、ダメ、ですか?」
 「ええ。
  だって私は、一人ではとても弱くて、咲さんやあなたがいなければこうしてここにいることはできなかったのだから。
  言い古されたことかもしれないけどね、彩水。
  人は誰かと一緒に生きていくべき生き物なのよ」
 「誰か、と……?」
 「そう、誰かと。
  あなたは誰と一緒に生きていきたい?」
 「私……」
 「私はね、彩水。
  あなたと一緒に生きていけたら、それはとても素敵なことだって、そう思うのよ」
 「え?」
 「あなたがお兄さんと一緒に罪の意識を背負って二人で生きていくというなら、それでもいいと思っていたわ。
  でも、あなたはそれを選ばなかった。
  一人になったあなたに、ねえ、私という同行者は如何かしら?」
 「お姉様……」
 呟くように言った彩水の目に、見る見るうちに涙が盛り上がる。
 あぁ、崩れるなと思うまでもなくそれは溢れ、零れて。
 「おねえ、さま……」
 しゃくりあげながら、彩水は何度もコクコクと頷いてくれた。
 私は机を回って彩水の傍に寄り、抱きしめる。
 彩水も私に体を預けてくれる。
 「ねえ、彩水。
  一度でいいわ、私の大好きなあなたの声で、返事を聞かせて?」
 そうねだると、しばらく呼吸を整えてから、彩水は。
 「よろしく、お願いします」
 そう、言った。

 片付けくらいはやるわ、そう言った私にけれども、彩水は自分がやると言って譲らなかった。
 お姉様はそこでゆっくりしていてください、そう言われたので仕方なく、机に肘をついて、廊下にあるシンクで洗い物をする彩水を眺めていた。
 途中でふと思いつき、机を端に寄せて立てかけ、空いたスペースに隅に畳んであった布団を敷いた。
 部屋の広さからすると、きっといつもこんな風に寝ているのだろう。
 それですることもなくなったので、今度は床に横になって彩水を眺める。
 やっぱり可愛い。
 脇に積んであった最後の食器に彩水が手を伸ばしたのを見て、立ち上がった。
 足音を消して背後に忍び寄る。
 食器を水切り籠に仕舞ったところで、ギュッと背後から抱き寄せた。
 「きゃ!?
  お、お姉様!
  ビックリさせないでください!」
 「だって、彩水があまりにも可愛かったものだから」
 「か、からかわないでくださいよぉ」
 耳まで赤くなって、本当にかわいい。
 ……ねえ、彩水。
 あなたの手紙、ねぇ。
 いいのよ、ね?
 「ねえ、彩水。
  私、食べたいわ」
 「え、食事なら、今」
 「だって、真っ赤に熟れてとてもおいしそうだもの」
 「真っ赤!?
  え?」
 「いいでしょ、彩水。
  ねぇ」
 「あ、あのお姉様、なにを……」
 私は一つ、息を呑んだ。
 「……食べさせてちょうだい、彩水、あなたを」
 「お、ね……」
 彩水の動きが止まる。
 熱は引かない。
 むしろどんどん熱くなっている気さえする。
 待つ。
 待つ。
 どれくらい時間が経ったのだろう。
 数秒か、数分か、もしかしたらもっと。
 彩水が、小さく頷いた。
 「……お召し上がりください、お姉様」
 「彩水、ありがとう……」
 言葉と一緒に、彩水の白い首筋に唇を落とした。
 彩水がピクリと震える。
 「そこ、から?」
 「どこがよかった?」
 尋ねると彩水は真っ赤な顔のままで、私に向き直って。
 目を閉じ、軽く顎を上げた。
 「唇に、ください。
  最初は、どうか」
 「分かったわ……」
 片手を彩水の頬に添え、ゆっくりと顔を近づけていく。
 彩水の唇が、小さく震えているのが見えた。
 少し笑いそうになって、自分の頬が強張っていることに気付いた。
 うまく笑えない。
 そのことに却って笑いそうになる。
 おんなじね、私たち。
 そっと、そっと。
 彩水の唇に自分のそれを重ねていく。
 触れた瞬間彩水が震え、私も震えた。
 熱、温度、温かい。
 触れる、感触、柔らかい。
 軽く押しつけてから、名残を惜しむように離れた。
 「ありがとう、ございます」
 目を閉じたままの彩水がそう言った。
 「こちらこそ、ありがとう」
 そう返して、こつん、と額をぶつけた。
 波間でそうしたように。
 「……ねえ、彩水」
 「はい」
 「あの島の地下駐車場で、私、あなたに人工呼吸をしたのだけれど、あれはノーカウント?」
 「じ、人工呼吸なんて、ノーカウントに決まって」
 真っ赤な顔のままで否定する彩水に私はもう一度、口付けた。
 彩水は言葉を発している途中で、だから口は開いていて。
 私はその隙間から、彩水の口内へと。
 「……ん、はぁ」
 「お、おねえ、さま、ぁ……」
 ぴちゃり、ぴちゃり。
 唾液のはぜる音がする。
 彩水の腕が、縋るように私の背を握る。
 だから私も、支えるように彩水を抱きしめる。
 「……ね、彩水」
 「はい……」
 「お風呂、もう入ったのよね」
 「……だって、お姉様がキレイにして待ってなさいって」
 「そう。
  いい子ね、彩水」
 「お姉様……でも、何故わかったのですか?」
 「彩水から、彩水のいい匂いと、石鹸の匂いがするから」
 「匂いなんて、そんな……お姉様、なんだか」
 「なんだか、なに?」
 「なんだか……えっち、です」
 「あら、そう?
  エッチなのは誰?
  私はキレイにしてって言っただけなのに、部屋だけじゃなくて自分の体まで磨いたのは、誰?」
 「そん、な」
 「ねえ、彩水。
  なんでお風呂に入っておこうって思ったの?
  何を想像しながらお風呂に入ったの?
  何を期待して、お風呂に入ったの?」
 「期待って、私……」
 「こんなこと?」
 そう言いながら私は、服の上から彩水の胸に触れた。
 「あっ」
 彩水の体が大きく震えた。
 「ねえ、何を期待したの?
  教えて、あなたの言葉で。
  ねえ、彩水」
 私がそう言うと、彩水は縋るように私を見て。
 けれども目を離さない私に諦めたように、彩水はギュッと目を閉じて、小さく震えて。
 「お、お姉様に、触っていただくことを、期待しました。
  おねえ、さまが、彩水の肌に触れるのを、想像して、シャワーを、浴びました。
  あ、彩水は、えっちな期待を、しています。
  でも、どうか、お姉様……こんないけない彩水を、嫌わないで……」
 そう言うと、彩水はぽろぽろと泣き出してしまった。
 「ごめんなさい、あなたを泣かせたいわけじゃなかったの。
  ただあなたの声で聞きたかっただけなの。
  だからねえ、泣かないでちょうだい」
 私は慌てて彩水の頭を抱きしめると、宥めるように撫でた。
 しばらくそうしていると、やがて彩水は泣き止んだ。
 「ごめんなさい、お姉様」
 「あなたは悪くないわ。
  私が意地悪だっただけ。
  こんな私だけど、いい?
  彩水、あなたに触れてもいい?」
 「……はい、触れてください」
 「そう……それで」
 「はい?」
 「さっき待っている間に、布団を引かせてもらったんだけど、そこがいい?」
 「え、えぇ!?」
 「布団が嫌だって言うなら、ここで立ったままっていうのもアリかもしれないけど」
 「た、立ったままですか!?」
 「どっちがいい?
  他がいいって言うなら、それでもいいわ。
  さっき泣かせてしまったお詫びに、あなたのリクエストでしてあげる」
 なんかこう言うと、百戦錬磨っぽくないかしら。
 そんなこと全くないんだけど。
 これがお姉様パワーってやつなのかも。
 「その……お布団、で、お願いします……」
 蚊の鳴くような声で、彩水が言った。

 シンクから布団まで、ほんの数歩の距離。
 私たちは口付けをしながら、ゆっくりと布団に倒れ込んだ。
 仰向けになった彩水の頤に舌を這わせると、彩水は仔猫のような声を上げて鳴いた。
 同じように、手の甲や足の甲。
 服を捲って、すべすべのお腹にも。
 徐々に彩水の肌を曝していき、そこに順々に唇を落としていく。
 その度に彩水は鳴き声を上げ、体を震わせた。
 一つ一つ、私は彩水に私を刻み込み、彩水は私を受け入れてくれる。
 そして最後に、唇では届かない彩水の底に私は指で触れ、身を反らせて震える彩水に深い口付けをした。
 彩水はずっと涙を流していた。
 それはきっと、私も。
 同じように、ずっと。
 そうして鳴き疲れた彩水は、私に縋りつくようにして寝息を立て始めて。
 私もそんな彩水をゆったりと抱いて、目を閉じた。 

 「お姉様、私本当に、生きていてよかった」 
 眠りに落ちる瞬間、そんな声が聞こえて唇に暖かな感触がした気が、した。
 

 翌朝目覚めたら、彩水が私の顔を見下ろしながら微笑んでいた。
 「寝顔を眺めているなんて、悪趣味よ」
 恥ずかしさを誤魔化したくて、思わずそう言ってしまった。
 彩水が困ってしまう、と思ったけれど。
 「ふふ、ごめんなさいお姉さま。
  お姉様の寝顔、とても可愛らしかったので」
 なんて言うから、私は寝起きの体を無理矢理起こして、彩水に触れるだけのキスをした。
 「彩水は、起きていても可愛らしいからずるいわね」
 「そんなことないですよ」
 からかわれたと思ったのか、彩水が少し膨れてみせた。
 そんなところも、とても愛おしい。
 「……ねえ、彩水」
 「はい、お姉様」
 「どうしてこのアパートを選んだの?」
 「え?
  えっと、お兄さんに援助はしてもらっているんですけれども、使えるお金があまりなくて。
  ここはお家賃が手頃でしたので」
 「仕事場の食堂も近いし?」
 「……はい、そうですけど」
 「訊き方を変えましょうか、彩水。
  あなたはまず、仕事を探したの?
  それとも、住む所を探したの?」
 「えっと……住む所、です」
 「全国を探せば家賃がもっと安いアパートだってあるでしょうね。
  なのに、どうしてこのアパートなの?」
 私の言葉に、彩水は拗ねたように上目遣いをしてみせた。
 「……お姉様、気づいていらっしゃいますよね」
 「さぁ、何のことかしら」
 「ずるいです、お姉様」
 「彩水の口から聞きたいのよ」
 「もう、お姉様ってば、そればっか。
  ……私がここに住むことを決めたのは、お姉様が近くに住んでおられるからです。
  私は、お姉様が教えてくださった住所を見て、その近くに住みたいと思って、アパートを探したんです」
 「どうして近くに住みたいって思ったの?」
 「それは、だって……お買い物に出た時に、お姉様と会えるかもしれませんし、お話もできるかもしれないですし……近くに、居たいと思ったんです。
  私にばっかり恥ずかしいこと言わせて、お姉様はやっぱりずるいです!」
 「ふふっ、ごめんなさい。
  それじゃあ、次は私の番かしら」
 「はい?」
 不思議そうに見つめる彩水の瞳を見つめつつ、深呼吸をした。
 大丈夫、これはきっと、二人のためになる。
 「彩水、私と一緒に住まない?」
 「え?」
 彩水が目を丸くした。
 「このアパートは、確かに家賃は手頃なんでしょうけど、どう見ても彩水みたいな女の子の一人暮らしには向いていないわ。
  私のアパートだってそんな立派なわけじゃないけど、それでもここよりはずいぶんましよ。
  その分家賃は少し高いと思うけど、二人で分ければ今よりも少なく済むはずだし。
  少なくとも、私にとっては悪い話じゃないのよね。
  後は、彩水次第よ」
 「え、え、えぇ!?」
 「返事は別に急がないわ。
  折角近くに住んでいるんですもの。
  今はこうやって会えれば」
 「お受けします!」
 「って、彩水!?」
 日頃の彼女らしからぬ勢いに、面食らってしまった。
 「あ、すみません。
  でも、折角お姉さまが今その気になってくださっているんですから、お姉様の気が変わらないうちに……と思って」
 「私の気はそんなコロコロ変わらないわよ」
 「そう、ですか?」
 可愛らしく小首を傾げてみせるけれど、口調は何か含むものがある感じ。
 「何か言いたいことがありそうね?」
 「当ててみますか、お姉様」
 彩水は、ゆったりと笑っている。
 余裕ができたのだろう。
 昨夜からのことで。
 余裕……。
 私はパタンと仰向けになると、腕を額に当てて目を閉じた。
 「どうかされましたか、お姉様」
 彩水の不思議そうな声。
 言うのなら、きっと今だろう。
 そう、思った。
 だから、目を開けて、深呼吸をして。
 もう一度体を起こして、彩水を正面から、見た。
 「本当はね、彩水。
  私、あなたに会うのが怖かった」
 「怖かった?
  なぜですか?」
 「吊り橋効果って、知ってる?」
 「少しは……もしかして、お姉様」
 「ええ、そうよ。
  あの島であなたが私の無茶に応えてくれたのは、あの異常な状態のせいじゃないかって、そう思ってしまったの。
  だから、今になって冷静な目で私を見たら、あなたは幻滅してしまうんじゃないかって」
 私の言葉に、彩水はじっと私を見た。
 「お姉様……目を閉じて、少し我慢をしてください」
 「え、なに?」
 「お願いします」
 「え、ええ」
 言われたとおり目を閉じる、と。
 パチン、と頬を叩かれた。
 両の手で、両側の頬を。
 そして、それから。
 「ん……」
 唇を、奪われた。
 「……彩水」
 開けた視界の中には、少し赤く染まった頬で微笑む彩水がいた。
 「お姉様、メールで仰いましたよね。
  甘く見るな、と。
  だったら、私もお姉さまに言います。
  甘く見ないでください。
  私は、強かな女です。
  お姉様と咲さんが仲良くされているのを見て嫉妬するような、醜い女です。
  昨晩だって、咲さんのライブに行かれたお姉さまのお話を聞いて、お話をなさるお姉さまの表情を見て、私、咲さんに嫉妬していたんです。
  幻滅した相手にそんな感情を抱きますか?
  どう思われますか、お姉様」
 そう言うと彩水は、もう一度黙って、じっと私を見た。
 「抱かない、わよね」
 「ええ、その通りです。
  ですからもう、彩水はお姉様を放すつもりはありません。
  離れる気は、ありませんから。
  私をこんな風にしてしまったのはお姉様なんですから、責任は取ってもらいます。
  覚悟してくださいね、お姉様」
 彩水はそう言うと、とても綺麗に微笑んで見せた。

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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