Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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手のひらを太陽に

爛漫

こんばんは
フェルゼです。

さして書けもしないくせに、
カテゴリがまた一個増えました。
……あ、やめて。
そんな目で見ないで。

と、いうわけで。
今回更新はカテゴリラブライブ!
登場されるのは、矢澤先輩と西木野さんです。
つまり、その組み合わせです。
急にすとんとハマってしまったので、不手際があるかもしれません。
違和感があれば、教えていただけると幸いです。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。



 何言ってんの?
 バカじゃないの?
 その脳みそ実は腐ってんじゃないの!
 
 告げられた一瞬、そんな言葉が溢れた。

 「はぁ?」

 実際に零れたのは、一言だけだった。
 そうして立ち竦む私を、真姫ちゃんは挑むように見る。



 手のひらを太陽に



 音楽室。
 グランドピアノの横。
 真姫ちゃんのとなり。
 うつくしい音が、残響だけを置いて溶けていく。
 その最後の一音が完全に消え去るまで、私たちは無言だった。
 彼女はその視線を白と黒の鍵盤に落としたままで。
 私は音の行方を追うように、虚空に投げたままで。
 ―――はぁ
 彼女の吐き出した息に、私はその時間が終わろうとしていることを知る。
 私の至福の、拷問の時間。
 「それで?
  新曲のイメージとやらは出たの?」
 鞄を手に取りつつ、私は私がここにいる言い訳を口にする。
 「どうかしら」
 ゆっくりと鍵盤に蓋をする彼女との距離が、徐々に離れていく。
 私が足を進めた分だけ、離れていく。
 ぱたりと、蓋が閉じられた。
 二人の時間の終わり。
 「出来なきゃ、部長として確認できないじゃない。
  今日もにこは居るだけ無駄だったみたいね」
 なに、言ってるんだろう。
 もう一人の私が、頭の中で呟く。
 違う。
 うそだ。
 もう一人の私なんていない。
 「……帰るわ」
 踵を返す。
 彼女に完全に背を向けて、私はそう言った。
 「ねえ」
 彼女の声が追ってきた。
 「にこちゃん」
 それは、私の足を止める音。
 「なに?」
 振り向く。
 彼女の視線。
 つい先ほどまでモノトーンにのみ向けられていたそれが、今は私に向けられていた。
 射るように。
 私の意思とは関係なしに、鼓動が一段とベースアップする。
 さっきまでよりも更にドクドクとうるさいそれ。
 だけど、私はいつものように、気づかないふりをした。
 気づかないふりで、無視を決め込んで。
 なかったことにしてしまえばいつか。
 この感情もなかったことになる。
 そのいつかが卒業なんていう強制イベントでしかやってこないことは、薄々気づいていたけれど。
 あぁ、私はあとどれだけの時間を、この幸福な地獄の中で過ごすのだろうか。

 鋭い眼をした彼女は、不機嫌そうな私の声と視線に気圧されたのか、続く言葉を発しようとしない。
 「だから、なに?
  用がないなら、にこ、帰るから」
 そう言ってもう一度、踵を返そうとした私の肩を、彼女が掴んだ。
 「った!
  なにすんのよ!」
 「……にこちゃん」
 思わず顔をしかめた私に構わず、彼女は私の肩を固定する。
 彼女と正面から向き合う形になって。
 まずい、と、思った。
 何がどうこうとか、そんなことの前に、まずいって。
 今まで必死に積み重ねてきたものが崩される、そんな予感。
 背筋を冷たいものが走り、私は大きく体を振った。
 「離しなさいよ!」
 けれど、腕に力を込めた彼女はそれすら許してくれなくて。
 「にこちゃん、好き」
 決定的な一言を、告げた。
 「はぁ?」
 心の中に溢れた言葉の一つも口に出せずに、私は立ち竦んだ。
 懼れたことが起こってしまった。
 そんな恐怖にも近い感情。
 逃げ出したい。
 今すぐに。
 でも、肩を掴む彼女の手が、挑むような彼女の視線が、それを許してくれない。
 勝手なことを言う彼女が。
 私が、殺して、殺して、殺し続けて。
 それでも声を上げる感情を、勝手に口にした彼女が。
 「にこちゃんは、どうなの」
 「どうって、なにがよ」
 「私のこと、好き?」
 「っ!」
 勝手な、事を。
 顔が燃えたのはきっと、怒りのせいだ。
 「っざけんじゃないわよ!
  そりゃあんたが、スーパーアイドルにこにーに恋しちゃうのはしょうがないとしても?
  なんでにこがあんたなんかを好きにならなきゃいけないのよ!
  自惚れもいい加減にしなさいよね!」
 声を張り上げるたびに、ズキズキと頭が痛む。
 あまりの痛みに泣きそうになるのをこらえるのに、必死だった。
 「違うわ」
 「は?」
 激昂する私と反比例するように、彼女は冷静だった。
 「私が好きになったのは、アイドルじゃない。
  矢澤にこっていう、ちっぽけなただの女の子」
 「へ、え。
  ちっぽけなねぇ。
  じゃあ、西木野さんは、そんなただのちっぽけな女の子のどこを好きになったのか、先輩に教えてくれるかしら?」
 「どこ……?」
 そう言うと彼女は、首をかしげた。
 え、ちょっとなにそれ。
 失礼じゃない?
 さっきのちっぽけなただの女の子発言といい、失礼すぎじゃない?
 「……わからないわ」
 止めに、わからないときた。
 こっちにはあんたの考えていることがわかりませんわ。
 一言で人の心をズタボロにしておいて、ふざけてんのか。
 まじふざけてんのか。
 「あんたねえ」
 「だって、気づいたら好きだったんだもの」
 「!」
 「初めはこの気持ちが何なのか、わからなかった。
  でもある時に、これは恋なんじゃないのかって思った。
  そうしたら、すごくしっくりきた。
  これが恋じゃないなら、私は恋なんてできないわ」
 気が付けば、彼女の赤毛から覗く耳が、髪と同じ色に染まっていた。
 いや、もしかしたら、初めからそうだったのかもしれない。
 私と、一緒で。
 「でも、そう、どうしても理由が必要なら、あげる。
  私、あなたに救われたのよ」
 「はぁ?
  救われたから、好きになったっての?」
 ひどい話だ。
 救われたから好きになった?
 それなら私は、メンバー全員を好きにならないといけない。
 いや、好きだけど。
 好きだけど、恋はしていない。
 恋はそんなもんじゃない。
 ……私が恋をしたのは、一人だけだ。
 「どうしても必要ならって言ったでしょ。
  仕方がないじゃない、気づいたら好きだったんだから。
  それじゃあ不満なの?」
 不満とか、そういうのじゃない。
 そんな、簡単なもんじゃない。
 「あんた、自分が何言ってるか、わかってんの?」
 「分かっているつもりよ」
 「……成績がいいって言っても、バカはバカなのね。
  あんたは、女の子に告白したのよ。
  そこんとこ、わかってるの?
  ねぇ、総合病院の次期医院長さま?」
 それは世間に認められないのだ。
 特に、立場がくっついてくるのなら。
 こいつは、何もわかっていないから。
 だから、
 「それは」
 まだ、ひどい言い訳を続けるつもりなんだ!
 「わかってないんでしょ!?
  分かってないから、勝手なこと言えるのよね!?
  ふざけないでよ!
  それで、にこもあんたのこと好きだって言って、じゃあお付き合いしましょうってなるの!?
  ずっと一緒にいましょうねってなるの!?
  ならないでしょ!
  にこはもうすぐここを卒業するわ。
  それで、アイドルを目指すの。
  今と同じよ。
  いいえ、今以上にもっと!
  でも、あんたは医者を目指すんでしょ!
  目指す方向が違う!
  にこはあんたの重荷になんてなりたくない!
  じゃあ、にこはあんたに置いて行かれるしかないじゃない!
  どうせ将来は、どっかの医者と結婚でもして病院を継ぐんでしょ?
  にこは置いて行かれる日を待つために、少しの間一緒にいろとでも言うの!?
  にこのこと、バカにしてんの!?」
 だめだ。
 失敗した。
 私はまだ、演技がうまくない。
 目の前の真姫ちゃんが、滲む……。
 「あんたこそ私をバカにしてるの!?」
 唐突に、滲む彼女の姿が大きくなった。
 抱きしめられるのかと体を強張らせたけれどもそんなことはなく、彼女のすぐ前で体は止まる。
 彼女の顔が、大写しになる。
 「そんなことも考えずに告白したと思ったの?
  私は医者を目指す?
  そうよ、そのとおりよ!
  にこちゃんはアイドルを目指す?
  知ってるわよ、そんなこと!」
 滲んだ視界の中の真姫ちゃんは、真っ赤な顔で。
 でも、泣いてはいなかった。
 「それを重荷に感じて置いて行くですって?
  どっかの誰かと結婚するから置いて行くですって?
  誰が置いて行くもんですか!
  私を甘く見ないでよ!
  私はね、にこちゃんがいてくれるなら、他の人なんて考えられない。
  そりゃ、結婚については周りからいろいろ言われるかもしれないけど……今心配してもしょうがないじゃない」
 まだ、泣いてはいなかった。
 「真姫、ちゃん……」
 更に引き寄せられる。
 ギュッて、今度こそ、抱きしめられた。
 「にこちゃんだって、知らないでしょ。
  アイドルは付きあっちゃいけないとか、恋人なんてもってのほかだとか、そういうこと、にこちゃんが言うたびに私がどれだけ怯えたか。
  さっき告白した時だって、どれだけ絶望的な気分で告白したのか。
  ――でも、もういい。
  そんなこと、知らない。
  私は、私の勝手を言うわ。
  だって、まだまだ子供なんだもの。
  だから、だからね、にこちゃん。
  曖昧な未来の話じゃなくて、にこちゃんの今を、教えて。
  私は、にこちゃんが好きよ。
  にこちゃんは、私のこと、好き?」
 もうその表情は見えなくなってしまったけれど、声が震えているのは分かった。
 あぁ、真姫ちゃんも泣いて――。
 そう思った途端に、色んなものでめちゃくちゃになっていた頭の中が、ポン、て、すっきりした。
 なんだ。
 今のことで、いいのか。
 あまり頭のよくない私だから、考えれば考えただけ、余計なものを巻き込んでしまう。
 でも、今のことなら。
 今のこの気持ちのことなら、私にだって分かる。
 頭の中に唯一明確な形を持って残ったその気持ちに、鼻の頭がつんとして、慌てて私は深呼吸をした。
 なんかもう、二人してぐちゃぐちゃだったけれど、伝えなきゃいけないことは、一個だけ、出来てしまったのだから。
 大きく息をして。
 胸の中まで真姫ちゃんの匂いに満たされて。
 そして彼女の熱に包まれて。
 何を今更って、私は小さく笑った。
 あんなこと叫ばせておいて、何を今更って真姫ちゃんを笑った。
 あんなこと叫んでおいて、何を今更って私を笑った。
 「仕方ないわね、一回しか言わないからよく聞いておきなさい。
  にこはね、真姫ちゃんのこと――好きよ。
  真姫ちゃんと、一緒」
 言い終わるか終らないかのうちに、もう一度ギュッて。
 強く強く、抱きしめられた。
 ちょっとちょっと真姫ちゃん、息、苦しいんだけど。
 文句の一つも言いたいところだけれど、我慢してあげる。
 だってにこは真姫ちゃんの先輩なんだから。
 泣いている後輩にやさしくしてあげるのも、先輩のつとめでしょ?
 私は胸の中でそう呟くと、滲んでぼろぼろになった視界の中でも鮮やかに見えるその髪に、手を伸ばした。

 ねえ、真姫ちゃん。
 にこね、本当はね。
 ずっと触れたかったの。
 真姫ちゃんに、触れたかったの。
 触れてほしかったの。
 こうして。
 二人だけの、特別な想いを込めて。
 あぁ、やっと今、手が届く――






 後書き
 考えすぎて動けなくなる前に、動け。というお話。
 たぶんこの後ちゅーされる。
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