Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ネジレ・タ
生麦生米
生の人間関係

こんばんは
フェルゼです。

え?
口にしにくいもの一覧の話じゃないの?

さて、今回更新はカテゴリVOCALOIDです。
タイトルでご想像の通り、以前のものの続き?です。
この間の話を書こうか書くまいかで、私の中が大論争。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 「ヤッホー、ルカ。
  相変わらず露出が少ないわね」
 「スーツ姿のメイコさんとなら、そんなに変わらないんじゃないでしょうか」
 「いや、私が言ったのは恰好じゃなくて、メディアへの露出の話よ?」
 「そりゃ、元アイドルのメイコさんに比べれば微々たるものですよ」
 「あんたがその気にさえなれば、出ただけ行けると思うんだけどなぁ」
 私は珈琲を一口飲んでから、横に立つスーツ姿の女性に向き直った。
 「それで?
  元とはいえアイドルがこんなところで何してるんです?」
 「いいカフェね、ここ。
  大通りから少し入っただけなのに、街の喧騒が嘘みたい。
  それに、ルカが贔屓にしてるってことは、味の方も悪くないんでしょ?
  あ、私も彼女と同じものを」
 最後のは、マスターに手を振りながら言ったセリフだ。
 マスターはといえば、コクリと頷いてカウンターの奥で準備を始めた。
 「それで?」
 私の隣に腰を下ろしたメイコさんに、正面を向いたままで質問を繰り返した。
 「傷、見せてもらおうと思って」
 メイコさんはそう言って、私が手首に巻いた包帯を指した。
 「転んで擦りむいただけの傷です。
  お見せするようなものでもありません」
 「ミクちゃんがね、来たのよ。
  だから」
 ――あぁ。
 私は小さく息を吐くと、ゆっくりと横を向いた。
 「私は初音さんと違って、失うものはありませんから。
  公にしたいのでしたらお好きなように」
 「違うって。
  別に脅しに来たわけじゃないの。
  ミクちゃんにね、相談されたもんだから」
 「相談?
  初音さんが、メイコさんに?」
 「そ。
  私、あの子に相談なんてされたの初めてだったから嬉しくて。
  つい、調子に乗っちゃったってわけ。
  それにしてもびっくりしたわ。
  あなたとそんな関係だったなんて」
 「初音さんは脅迫への対処の仕方でも訊いてきましたか?」
 「違うって。
  そんな攻撃体制とらないでよ。
  どうせあの子にも同じような態度なんでしょ」
 「それが私と彼女の関係ですから」
 「いつまでそうやって加害者ぶってるつもり?」
 「ぶってる?
  違います。
  私と彼女の関係は、間違いなく加害者と被害者です」
 「捕食者と獲物じゃなくて?」
 「それでもいいかもしれませんね」
 私は珈琲を飲みほして、メイコさんのを運んできたマスターにお代わりを頼んだ。
 「彼女は、どこまで話したんですか?」
 「どこまでなんて、私には判断できないわ。
  私が聞いたのは、あなたとそういう関係になったってことと、あの子自身の異常行動のこと。
  相談されたのは、あの子自身の異常行動について。
  なんでそういう関係になったのかは聞いてないわ。
  だからまぁ、私が知ってるのは、あなたがあの子を好きに嬲っているってことかしら」
 「異常行動?」
 「それよ」
 顔をしかめた私に、メイコさんは先程と同じように私の包帯を指した。
 「あなたにされているときに、あの子が噛みついたんでしょ?」
 「あぁ、そういうことですか」
 先日のこと。
 いつもどおりにあの子を呼びつけて脱がせ、その体を弄んだ。
 最近は泣いているだけのあの子がその時、初めての行動に出た。
 放心したように倒れたあの子は、自分の其処から引き抜かれた私の手を掴んだかと思うと、そのまま手首に噛みついた。
 躊躇いの欠片もなかった。
 張り倒して無理やり引き抜いていなければ食い千切られていたかもしれない、そう思えるほどに。
 「あの子があなたに噛みついて、そして当然のようにお仕置きを受けた」
 「ええ」
 いつもは泣いたら止めるけど、あの時は泣いても止めなかった。
 小刻みに痙攣する躰を、幾度となく責め続けた。
 それで終わったはずの話だった。
 こんなところで蒸し返されてくるなんて。
 「噛みつくなんて、自分は異常者なんじゃないか。
  あの子の相談はそれ。
  あなたにはできない相談よね。
  異常者だって言われるにきまってるんだから」
 「はぁ」
 二杯目の珈琲を口に含む。
 「それで、メイコさんはどう答えたんですか?」
 「素直になってごらん」
 「はい?」
 「だから、『素直になったらいいんじゃないのかな』って答えたわ」
 「それって答えになってるんですか?」
 「だって、あの子私には絶対教えてくれないんだもの」
 「何をですか」
 「あの子自身を」
 メイコさんはそう言って、珈琲を飲んだ。
 「素直でかわいいだけのアイドルだと思ってたんだけど、相談されたときに気づいたわ。
  それは演技じゃないのかって。
  それも、ずっとずっと前からの、体に染みついた演技」
 「――なんで、そう思ったんです?」
 「私がそうだったもの」
 メイコさんはそこで、大きく息をついた。
 「でもね、それってどこかで破綻しているのよ。
  特に、演技じゃない素の自分を見せている相手の話をするときなんかは、ね」
 メイコさんの目が、じっと私を見ている。
 「素のあの子を知らない以上、それが異常行動だなんて言えないわ。
  あの子にとっては、正常かもしれないでしょ?」
 「世間一般で見れば、他人の腕に噛みつくのは明らかに異常です」
 「他人を、それも自分が付き人をやってる同性のアイドルを弄ぶのも、十分異常だと思うけど?」
 そう言うと、珈琲をぐっと飲み干してメイコさんは立ち上がった。
 「ほんと、いいお店ねここ。
  私もお気に入りにしちゃおうかしら」
 「どうぞ、ご自由に」
 「そうさせてもらうわ。
  それじゃあ」
 「この件はあの子に言うな、ですか?」
 「いいえ。
  だって、あの子も自分が相談に来たことをあなたに言うなって言わなかったもの。
  どうぞ、ご自由に」
 「では、そうさせてもらいます」
 「あ、そうだ。
  最後に一つだけ。
  あの子はね、ルカ。
  あなたの鏡かもしれないわよ」
 「はい?」
 「私の気のせいかもしれないけどね。
  ちゃんと伝えたから、後は知らないわよ」
 そう言うとメイコさんは、手を振って去っていった。
 伝票を置いて。
 「はぁ……」
 携帯が鳴った。
 時計を見る。
 そろそろ、仕事の時間だ。
 あの子の付き人。
 知らず、私は唇を舐めていた。




 「ヤッホー、傷見せて」
 先日と同じように、メイコさんがふらりと姿を現した。
 「何の話です」
 「新しい傷よ。
  どうせまた、作られたんでしょ」
 「またあの子から聞いたんですか」
 「いいえ、私の予想」
 「想像されたのは、これですか?」
 私はシャツの腕を捲った。
 二の腕に巻いた包帯がちらりと見えたところで、袖を戻す。
 「やっぱりね」
 同じものを、そう注文して、メイコさんは隣に座った。
 「私にあなたたちの関係を話したことを理由にあの子を呼び出して、いじめたんでしょ?
  それでまた、噛みつかれた」
 「大筋そんなところです」
 私の返事を聞いて、メイコさんはにっこりと笑った。
 満足そうに。
 「いいこと教えてあげる。
  あの子はね、愛し方を知らないの。
  今まで愛されたことがなかったから」
 「両親に大事にされて育ってきたはずですが?」
 「大事にされたのは、愛されてきたのは、演技をしている自分だって、そう思っているなら?」
 「はい?」
 「それが、愛されるための役だって事。
  そんな風に思ってしまったら、他人の愛し方なんてわからなくなるわ」
 「何をおっしゃりたいのか、よくわかりません」
 「あなたのそうやってはぐらかすところ、変わらないわね。
  いいわ、言ってあげる。
  あなたしか知らない彼女は、相手に苦痛を与えることが愛する手段だって思ってしまったということよ。
  あなたがそうやって彼女に接したから」
 珈琲を飲む彼女に倣い、私もカップを手に取った。
 ゆっくりと数秒間。
 「メイコさんは、私があの子を愛しているだなんて馬鹿げたことを思ってるんじゃないですよね?」
 「私がどう思うかなんて、あなたたちの関係にはそれこそ関係のないことよ。
  関係あるのは、あの子がどう思うか」
 「――失礼します。
  そろそろ仕事の時間ですので」
 「そう、わかったわ。
  こないだおごってもらったから、今日は私がおごってあげる」
 以前からの決め事のように言うメイコさんに、軽く眉を寄せた。
 「おごったと言いますか、勝手に伝票置いていっただけじゃないですか」
 「まぁ、いいじゃない。
  じゃあ、こないだおごってもらったお礼に、もう一つ、いいこと教えてあげる」
 「なんです?」
 「私に相談しに来た時のあの子ね、話が重くなるにつれて泣いたの」
 「そうですか」
 「笑いながらね」
 私は今度こそ、思い切り眉を寄せていただろう。
 ひらひらと手を振るメイコさんはそれ以上何も言うつもりはなさそうだった。
 私も、これ以上話を続ける気もなかった。
 「ごちそうさまです」
 席を立ってドアを開ける。
 途端に、街の喧騒を思い出した。


 扉についたベルが鳴り、ルカが出ていったことが分かった。
 途端に、微笑みを浮かべていたメイコの顔から表情が消える。
 「本当に気づいていないのかしら。
  だとしても教えては上げないわ、巡音ルカ。
  あなたは、とんでもない相手に愛されてしまった。
  でも、そのとんでもない相手を作り出してしまったのも、あなた。
  かわいそうに。
  もう逃げられないわよ、あの小さな兇器から」
 カップを小さく指で弾くと、メイコはクツクツと小さく笑った。
 
 
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2005 Empty Dumpty all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。