Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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ネジレ
新年あけまして……
もう諦めました。

こんばんは
フェルゼです。

本年もぽつぽつやっていこうと思いますので、よろしくお願いします。

さて、今回更新はカテゴリVOCALOIDです。
登場されるのは、ルカさんとミクさんです。
年の暮れから書いたり消したりしていたのですが、
こんな感じに落ち着きました。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。
 「お疲れさまでした」
 「はい、おつかれー」
 撤収作業にかかったスタッフたちに声をかけつつ、楽屋を目指す。
 心持、足早に。
 急がないと。
 「あ、ミクちゃん、このあとちょっと時間ある?
  ご飯とか一緒にどう?」
 ――こうなるからだ。
 …
 ……
 うっとおしいんだよ!
 こないだから何回目!?
 ねぇ、何回断られたか覚えてないの!?
 そう叫びたいのはやまやまだけど、そこは今を時めくアイドルフェイスで。
 「ごめんなさい。
  明日提出の課題が終わっていないから、すぐに帰らないといけないんです。
  また誘ってくださいね」
 「課題かぁ。
  じゃあ仕方ないね。
  ミクちゃんは、学生もまじめにやっててえらいねぇ」
 うっさいだまれ。
 
 「あー、もううざったい!
  なにあれ!」
 移動用の車に乗って開口一番。
 私は不満をぶちまけた。
 楽屋?
 あんなとこ、誰に聞かれてるか分かったもんじゃない。
 ここなら、その心配もない。
 聞いてるのは私こと、スーパーアイドル初音ミクと。
 「はぁ……そうですか」
 いつものようにカスみたいな返事をする付き人兼運転手だけ。
 「なにその返事。
  私の話聞いてんの!?」
 「聞いてますよ。
  運転席の背凭れ、蹴らないでください、危ないですから」
 「もしも事故って私が怪我でもしたら、あんた、一生働いても償いきれないよ」
 「……」
 黙り込んでしまったのを相手にしても、ツマンナイ。
 シートに深く座りなおすと、私は大きく息をついた。
 これで同じ歌手だって言うんだから、頭にくる。
 「あんたも、いつまでも歌だけの路線にこだわってないで、もっと出てこればいいのよ」
 元からバイリンガルだと言うこの女は、語学はもちろん、基本的に頭がいいらしい。
 その上、車の運転もそうだけど、大抵のことは卒なくこなす。
 「私は、これくらいがちょうどいいんです」
 でも、いっつもこの調子。
 「これくらいって、それがで収入が足りないから私の付き人なんてやってるんじゃないの?」
 「初音さん、知らないんですか?
  初音さんの付き人になるのって、倍率高かったんですよ」
 「当然でしょ、私なんだから」
 「……」
 また、だんまり。
 なんなんだ、いったい。

 緩やかに車が減速して、止まった。
 「着きましたよ」
 「うん」
 運転手の手が――ルカの手が、ハザードランプのスイッチに伸びた。
 カチ、カチ、カチ
 繰り返すランプの音。
 価値、価値、価値
 私はミクだ。
 初音、ミク。
 アイドル。
 それが私の価値。
 真面目な子。
 それが私の価値。
 期待に応える。
 それが私の、価値。
 深呼吸を繰り返した。
 大丈夫。
 この車を降りたら、私はまた演技ができる。
 「……行く」
 「はい。
  今日もお疲れ様でした。
  空気が乾燥気味のようですから、喉には気をつけてください」
 「そんなこと分かってる。
  いつまで私のコーチ気取りなの」
 「……」
 バッグを手に、ドアに手をかけた。
 「明日は、七時に迎えに来ます」
 「そう。
  マネージャーは?」
 「一緒に来ます」
 「そう、分かった」
 ドアを開ける。
 私は、初音ミクに、なる――



 現場ではアイドル。
 学校では真面目な生徒。
 家ではいい子。
 それが私だ。
 そんなことをすれば、当然に私のストレスは溜まる一方で。
 唯一のはけ口が、ルカと二人の車の中だった。
 レッスンを受けていたころから、私の愚痴をずっと聞いてきたルカ。
 だから、はけ口には最適だった。
 なのに。
 唯一のはけ口だったアイツも、仕事がどうこうとかでここ一週間、私の付き人を休んでいる。
 ふざけんな。
 まじふざけんな。
 ホントふざけんな!
 
 今日も私のストレスがマッハで蓄積されていく。
 処理場のない感情のゴミは、私の中のゴミ箱からとうに溢れ出てもう足の踏み場もない。
 いい子、いい子、いい子。
 私はそんなんじゃないんだ!
 街で擦れ違った人を、誰彼構わず蹴飛ばしてやりたくなる。
 あのガラスを叩き割ってやったら、どんなにかスッとすることだろう。
 ワルイコトだなんて知ってるけど。
 だって、私、ずっといい子してるじゃん。
 ワルイコト、ぜんぜんしないいい子じゃん。
 バランス取れてないじゃん。
 私がしてるの、イイコトばっかり。
 だから私には、ワルイコト、必要なんだ。 
 きっとイイコトばっかりしてる私は、少しぐらいワルイコトしたって大丈夫。
 そうじゃなきゃおかしいし。
 ワルイコト、してやるんだ。
 私の足は、ふらふらと目の前のコンビニに向いた。
 店内に入る。
 とたん、有線が私の曲を流し始めた。
 「なあおい、初音ミクってさ」
 私の名前。
 びくりとした。
 気づかれた?
 「ん?」
 「すごい人気だよな」
 「あぁ、そうだな。
  こないだ、コラボでキャンペーン打ったら、コラボ商品だけ通常の比じゃないくらい売れたらしいしな」
 私個人のことじゃ、ないらしい。
 客が入ってきたことにも気づいていないのか、背を向けて棚の整理をしている店員がだらだらと話しているだけだった。
 でも、そうか。
 ここは、私のおかげで売り上げ伸ばしたのか。
 なら、いいじゃん。
 私がちょっとくらい勝手に持って行っても、いいじゃん。
 店員達はこちらに背を向けたままで、客に気づく様子はない。
 私は目の前の小物を手にとる。
 小さく辺りを見回す。
 今なら止められる、そんな声が聞こえた気がする。
 止めない。
 止めてやらない。
 バクバクと心臓が踊る。
 手に取ったそれを裏返して、表示を見る、振りをする。
 もう一度、周囲に目を配る。 
 大丈夫、誰も見ていない。
 戻す振りで、ポケットに。
 「!」
 手を掴まれた!?
 気づかれた!?
 ぶわっと冷や汗が吹き出す。 
 視界が薄っすらと暗くなる。
 誰!?
 店員?
 他の客?
 まさか警官?
 がちがち震えて振り返ることもできない私の手から、その人は。
 小物を取って。
 「これよりも、こっちの方がいいわね。
  こっちを買いましょう」
 そう言って棚に戻すと、隣にあった似たものを手に取り、レジへ向かっていった。
 揺れる鮮やかな色の髪。
 そう、その姿には見覚えがあった。
 その声は、間違えようもなかった。
 「ル……カ」
 「ほら、何やってるの?
  さっさと帰るわよ」
 
 ルカに引きずられるようにして、私は歩いた。
 どこをどう歩いたのかすら、覚えていない。
 気づいたら、見覚えのある建物の前……歌のレッスンを受けていた頃、幾度となく通ったルカのアパートの前にいた。
 「上がってください」
 「なによ、命令しないでよ」
 「早くしてください」
 丁寧なくせに、有無を言わせない口調。
 押し込められるようにエレベーターに乗り、手を引かれるままにルカの部屋へ入った。
 ガチャリと、背後で鍵が閉まるのが、画面の向こうのように感じる。
 連れて行かれたのは、前も通っていたルカの寝室兼リビング。
 レッスンすら可能な防音性で選んだというこの部屋に、他に居場所はない。
 「何、してたんですか」
 「別に……」
 「万引き、しようとしましたよね」
 ここなら、どんな話をしていても、他の部屋に声は聞こえない。
 でも。
 「……してないし」
 私がそれを認めるわけにはいかなかった。
 「結果的にしなかっただけで、私がいなかったら初音さん、アレをポケットに入れてましたよね」
 「……」
 「それがダメなことだって、知っていますよね」
 「知ってるもん!」
 こいつが悪いんだ!
 勝手に仕事を休むこいつが!
 なのに、私に説教なんてして!
 「ダメだったら何?
  私ずっといい子してるじゃん!
  ルカも知ってるでしょ!
  現場でも、学校でも、家でも!
  友達にだって、私いい子じゃん!
  バランス取れないじゃん、そんなの!
  ちょっとぐらい、ワルイコトしたっていいじゃん!」
 「それで……それで今、すっきりしてますか?」
 「は?」
 「初音さんは万引きをしようとして、失敗はしましたけど、それで少しはすっきりしましたか?」
 「……」
 
 「はぁ……」
 ルカは、大きくため息をついた。
 「いずれにせよ、この件は社長に報告しなければなりません」
 「はぁ!?
  なんでよ!
  私結局、何もしてないじゃない!」
 「それでも、初音さんがそこまでストレスを溜め込んだ原因の一つが現場なら、それを改善するためにも、今回のことは報告しなければ」
 「バカじゃないの!
  そんなことがあったってばれたら、改善以前に辞めさせられるに決まってるでしょ!」
 アイドルなんて消耗品だ。
 ガタの来たアイドルなんて、ちょいちょいとうまく使ってぽいして、次の子を出すに決まってる。
 そしてこの場所を狙う子なんて、腐るほどいる。
 「そう言われましても」
 アイドルでいること、期待に応え続けていくこと、それが私の価値だ。
 なら、それをなくしたら。
 私は、私でいられなくなってしまう。
 「ダメ!
  絶対言わないで!」
 そういった私を、ルカは、まっすぐに見てきた。
 「バランス、と言うのなら、初音さんの言い分ばかり聞いてるこの状況は、相当にバランス悪いですよね」
 「……何よ」
 「私の言い分も、聞いてもらっていいですよね」
 「……何か欲しい物でもあるの?
  それとも、誰かプロデューサーにでも話を付けろって?
  いいわよ、それくらいなら、やっても」
 適当に言うことを聞いてやる。
 その上で、私の力を見せ付けてやるんだ。
 アイドルの私は、こんなこともできるんだぞって。
 付き人なら、身の程を弁えろって。
 それが、私の余裕。
 なのに。
 「脱いでください」
 「は?」
 「仕事じゃないです。
  今、ここで脱いでください」
 「……なんでよ」
 「これは取引です。
  履行について、選択権は初音さんにあります」
 「私が、拒んだら?」
 「分かったことです。
  この件は、報告させていただきます」
 それはつまり、私に選択権はないということだ。
 この女……ふざけやがって!
 「……いいわよ。
  脱げばいいんでしょ、脱げば」
 「分かってくれたのなら幸いです」
 そう言うとルカは、ベッドに腰掛けた。
 観客の体勢。
 見る側と、見られる側。
 「ほら、早くしてください」
 そして、私を急かす。
 「分かってるわよ!」
 シャツのボタンを外す手が震える。 
 羞恥?
 屈辱?
 怒り?
 ぐっと奥歯を噛みしめて。
 脱ぐ、脱ぐ、脱ぐ。
 スカートを一気に引きずりおろして。
 「……脱いだわよ」
 告げると、ルカはわざとらしくため息をついた。
 「なによ」
 「初音さん、わかりませんでしたか?
  私は、脱いでくださいと言ったんです」
 「だから脱いだじゃない!」
 「いえ、まだ着てますよね」
 それは、この、下着のことなのか。
 「まさか、これも」
 「当然です」
 「嫌よ、そんな!」
 「そうですか。
  では、取引は不成立ですね」
 「っ……!」
 ルカが、腰を上げた。
 「待ちなさいよ!」
 「はい?」
 「脱ぐわよ……」
 「そうですか」
 そう言うとルカは、もう一度ベッドに腰掛けた。
 「どうしました?」
 「……後ろ、向いてて」
 「脱ぐところを見る、という条件はなかったですね。
  惜しいですが、仕方ありません」
 そういうと、意外と素直にルカは後ろを向いた。
 「10秒経ったら、前を向きますから」
 「は!?」
 「後ろを向いていなくてはいけない、という条件もなかったので」
 慌てて脱いで。
 ルカが振り向くと同時に、何とか手で隠すことができた。
 「ほら、脱いだわよ」
 「……そうですね」
 そう言うとルカは、立ち上がった。
 「ちょっと、何よ」
 「今更隠さなくとも、初音さんの胸が小ぶりなのはよく知ってますよ」
 「うっさい!」
 「でも、控えめな大きさの方が、感度がいいとか言いますよね。
  どうなんです?」
 「知らないわよ!」
 「へぇ……」
 気の抜けたような声でそう言うと、ルカは私の胸に手を伸ばしてきた。
 「ちょっと、何するのよ!
  ちゃんと脱いだわよ!
  これでもう、報告はしないんでしょ!」
 「えぇ、しませんよ」
 ルカが身を屈めて、舐めるように見上げてきた。
 「報告は」
 「……っ!」
 なん、て、こと。
 失敗した。
 どうしようもないくらい、失敗した!
 「手、どけてくれませんか。
  上も、下も」
 「どけなかったらなに?
  マスコミにでもばらすって?」
 震える声が、隠せない。
 「どけてくれませんか?」
 甘かった。
 私が甘かった。
 どうあがいても今の私は、こいつにとって俎板の上の鯉でしかない。
  




 後書き
 ここまで書いたところで満足した。私ってば、なんて謙虚。
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