Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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未来視の未来は
さよなら
サンパギータ。

こんばんは
フェルゼです。

鶏肉うめぇ。

さて、今回更新はカテゴリストライクW。
まぁ、書いたんだしのせんべーっということで。
懲りてません。
めでたし、めでたし、というお話です。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。




 サーニャから結婚式の案内の便りが届いたのは、スオムスの短い夏が始まろうとする頃だった。
 




 
 『私たち結婚します』という簡潔な一文とサーニャの名前、そして相手の名前。
 日時と場所、参加の可否の伺い。
 たったそれだけの手紙を持って、私は暗惨たる気分になっていた。
 「サーニャ、酷いじゃないか」
 私は手紙に向かって愚痴を零す。
 「私に、こんな案内を送るなんてさ」
 無駄だとは分かっていても、言葉は止められない。
 「私に、サーニャが結婚するところを見ろって、そう言うのか」
 自嘲気味に吐いた言葉に、仕方ないと別の私がため息をつく。
 私は自分の気持ちをサーニャに面と向かって伝えたことがない。
 伝えられなかった。
 私なんかじゃ、サーニャを幸せにできないから。
 だから、私は何も言わなかったし、言えなかった。
 サーニャも気づかなかったろう。
 だからこその、この手紙だ。
 嘗ての501の仲間達には全て送ると言っていたし、私にだけ来なかったらそれはそれで落ち込むのだから、仕方のないこと。
 そう、私はこの手紙が来る前から、サーニャが結婚することを知っていた。
 「あいつも、悪いやつじゃないし。
  サーニャ、幸せになってくれるよな?」
 相手の男の事も、知っていた。
 会った事だってある。
 サーニャに請われて、サーニャと一緒にそいつと会った。
 思えば、二人離れてしばらくは割と頻繁に連絡を取り合っていたのに、他愛もないことだらけだったその連絡がどちらからか途絶えて、久しぶりに来た連絡が、それだった。
 届いたときはサーニャはまだ私のことを覚えていてくれたと喜んだのに、開封して酷いショックに打ちのめされたことを覚えている。
 『両親から、ある音楽家の方と結婚を前提にしたお付き合いをすることを勧められています。
  会ったことのない人で不安なので、初めて会うときにはエイラも一緒にいてくれませんか?』
 私が泣きそうになったのは言うまでもない。
 あの時はこれ以上のショックは人生でもうないだろうと思っていたのに、結婚案内のハガキに改めて打ちのめされている。
 これじゃあ、式当日は取り乱して大変なことになるかもしれないな。
 そう、私には不参加の選択肢はない。
 だって、サーニャの一番近くにいたんだ。
 少なくとも501にいたころは。
 一番の友達で、だからサーニャも私を頼ってくれて。
 それを断ることなんてできない。
 言ってやらなくちゃいけないんだ。
 『幸せになれよ』
 って。
 サーニャに、笑顔で。
 『さよなら、サーニャ』
 って。
 私に、心の中で。


 式当日。
 思ったとおり、そこにはほとんどの501メンバーが揃っていた。
 皆それぞれの立場で多忙を極めてるだろうに、よく来れたもんだと思う。
 これも、サーニャの人徳ってヤツだろう。
 ただ、誰も控え室にいるはずのサーニャに会いに行こうとはしない。
 私と同じように疑問に思ったらしいミヤフジが訊ねると、リーネが
 「まだ、誰も入っちゃいけないそうですよ」
 と言っていた。
 式の時間が徐々に近づいてくる。
 と、式場の係から急に声をかけられた。
 「ユーティライネン様、ですか?」
 「ハイ?」
 「リトヴャク様から、控え室にお越し願えませんか、とのことですが、よろしいでしょうか」
 「いいですよ?」
 疑問符を並べたまま、係について控え室に向かう。
 私だけ、というのはなぜなんだろう?
 あと、去り際にリーネやハルトマンたちから妙に冷たい視線を向けられたのはなぜなんだろう?

 「ユーティライネン様をお連れいたしました」
 係が扉の前で声をかけると。
 『ありがとうございます。
  ……エイラ、入って』
 サーニャの、声がした。
 久しぶりに聞くサーニャの声だった。
 それだけで泣きそうになりながら、私は控え室のドアを開けた。
 予想に反して、その中にはサーニャ以外誰もいなかった。
 係が外から扉を閉めると、完全に私たち二人だけの世界になる。
 「エイラ」
 背を向けて座っていたサーニャが、ゆっくりと立ち上がり、そして、振り向いた。
 「……サー、ニャ」
 女神がいた。
 純白の女神。
 透き通るように白い肌。
 色素の薄い髪。
 真っ白なドレス。
 儚げで消えてしまいそうなその中で、その瞳と、仄かに色づいた頬と、紅をさした唇だけが色を持って、サーニャの存在をこの世に留めているように感じた。
 「サーニャ、キレイだよ。
  とても」
 「ありがとう、エイラ。
  来てくれて、嬉しいわ」
 サーニャが緩やかに笑う。
 あぁ、だめだ。
 私は、泣いてしまう。
 「そ、それでサーニャ、どうしたんだ?
  私を呼んで」
 「うん……あのね。
  最後に、エイラに伝えておきたいことがあったの」
 「最後だなんて言うなよ。
  寂しいじゃないか」
 私は、笑えただろうか。
 私自身、サーニャと会えるのはこれが最後だと思っていたから。
 「うぅん、最後にする。
  最後にしなきゃいけないの。
  だって……」
 そこでサーニャは言葉を切って、そして。
 「私は、エイラのことが好きだったから」
 そう、言った。
 「サー……ニャ?」
 「ごめんね、エイラ。
  あなたを困らせることになるって、分かってた。
  でも、言いたかったの。
  言えないままにはできなかったの」
 サーニャは、小さく笑った。
 「私ね、あなたのことが好きだった。
  いつからなのか、分からない。
  会ったときからだったのかもしれない。
  整備を手伝ってくれたときからだったのかもしれない。
  一緒に夜の空を飛んでくれたときからだったのかもしれない。
  チームだろって言ってくれた、あの夜からだったのかもしれない。
  でも、好きだったわ。
  少なくとも、一緒に空よりも高くまで飛んだあのときは、もう」
 サーニャは、泣いていた。
 「でも、言えなかった。
  うぅん、言わなくてもいいって思ってた。
  だって、私、自惚れていたの。
  エイラも私のこと好きだって」
 サーニャは、気づいていた。
 「エイラが私のことを特別大切にしてくれてるって、自惚れてた。
  だから、エイラも私のこと好きなんだって。
  私がエイラのことを好きで、エイラも私のことを好きなんだから、何も言わなくていいって、そう思ったの。
  ……いつか、エイラが私に告白してくれるから大丈夫だって、そう思ったの」
 私は、何も言えなかった。
 「でも、エイラは何も言ってくれなかった。
  私、だんだん自信がなくなってきたの。
  ただの自惚れかもしれないって、気づいてきたの。
  でも、そうしたら恐くなった。
  だって、私はエイラと同じ性別を持っていて、私には取り得も何もなくて、好きになってもらえる理由なんてない。
  恋愛対象になんて、なれないんだって。
  私の気持ちは、エイラにとって迷惑にしかならないって。
  だから、私は何も言えないままでエイラと離れ離れになって。
  でも、エイラのことはずっと好きだった。
  ううん、離れて時間が経っても、一緒にいたときと同じように、どんどん好きになっていった。
  エイラからの手紙で、私をもしかして特別に思ってくれているかもしれないってところを見つけては、喜んだり、悲しんだりした。
  ……ある日、お父さんとお母さんから、結婚の話をされたの。
  相手はいい人だからって。
  無理強いはしないけど、会うだけでも会ってくるといいんじゃないかって。
  私、ずるいことを考えた。
  もしもエイラが私のことを好きなら、私の結婚を反対してくれるって。
  だから、あの人と初めて会うとき、エイラを呼んだの。
  でも、エイラ、いい奴じゃないかって、優しすぎる気もするけど、まぁ及第点だな、なんて、そう、言った。
  私ね、やっと、自分の酷い自惚れに本当の意味で気づいた」
 「サーニャ……」
 違うんだ。そう言いたかった。
 違う。何が?
 それは自惚れなんかじゃないって。
 サーニャのいいところはたくさん、たくさん、本当にたくさんあるんだぞって。
 でも、私が何も言えなかったのは本当で。
 私が結婚に反対できなかったのも本当で。
 そして私は、今も何も言えないままで。
 「もしもエイラが私のこと好きだって、愛してるって一言でも言ってくれたら。
  一度でいいわ、その言葉と一緒にキスをくれたら。
  そうしたら、私は誰のものにもならないって、そう決めていた。
  どんなに離れても私はあなたのものだって。
  ずっと待つんだって。
  ……でも、ごめんね、エイラ。
  私、酷い自惚れで、勘違いで、あなたに迷惑なことばっかで。
  だから、私さよならするの。
  もう、あなたに迷惑はかけないから、だから、最後に一言だけ許して。
  さようなら、エイラ……大好きだったわ」
 ギィと、扉が開く音がした。
 コツコツと、靴音を立ててあいつが入ってくる。
 サーニャはそいつの元へと歩いていく。
 そいつのところへ行ってしまう。
 そいつのものになってしまう。
 「サーニャ……待ってくれ、サーニャ」
 サーニャは足を止めない。
 扉の向こうは光で白に染まっていて、真っ白なサーニャは光に溶けてしまう。
 「サーニャ、サーニャ……」
 サーニャが、部屋から出て行った。
 扉が、閉まる。
 「サーニャ……!」
 





 「サー……!」
 そこで、目が覚めた。
 ゆ、夢だった……ノカ?
 夢だったんだな!?
 酷い寝汗だった。
 荒い息をつきながら、隣にある体温を見下ろす。
 そこには、いつもどおりに少しだけ体を丸めて眠るサーニャがいた。
 昨晩は夜間哨戒はなかったのにここにいることは、まぁいい。
 そんなことよりなにより、問題があるんダ!
 「サーニャ!」
 私はサーニャの肩を揺すった。
 いつもなら絶対にしない行動。
 でも、今日は必然がある。
 「サーニャ、サーニャ、起きてくれ!」
 しばらく名を呼びながら揺すっていると、ようやくサーニャが目を開けた。
 「どうしたの……エイラ。
  まだ早いわ……」
 「サーニャ、言いたいことがあるんだ!」
 再び眠りに落ちそうになるサーニャを、抱きかかえる。
 私の前に座らせて、その目を正面から見つめた。
 「エイラ?」
 見つめ返された。
 「うぁ……」
 怯んでしまう、が。
 ダメなんだ!
 もう、こんなんじゃダメなんだ!
 頑張れ、私!
 「サーニャ!」
 「う、うん、どうしたの、エイラ」
 サーニャの肩をつかむ。
 「サーニャ、好きだ!
  私は、サーニャのことをアイシテル!」
 「エ、エイラ!?」
 赤くなったサーニャが慌てるけれども、それでも私はまだ終われない。
 あのサーニャは、なんて言っていた?
 そう、まだ足りないんだ!
 「キス、していいか?」
 「エ、イラ……」
 「もしもサーニャが許してくれるなら、少しでも私のことを好きでいてくれるなら、私がサーニャにキスすることを許して欲しい」
 今度こそサーニャは真っ赤になって、わたわたとし始めた。
 「口に出して言うのがいやなら、態度で示してくれればいい。
  あと十秒数えるから、その時に目を開けていれば、私はキスしない。
  でも、もしも目を閉じていてくれるなら」
 私の言葉は最後まで言えなかった。
 サーニャが手を伸ばして、私の口を覆っていた。
 「サーニャ?」
 「……ありがとう、エイラ。
  私ね、ずっと待ってたの……私も、エイラのこと、大好きよ」
 そう言って、サーニャは目を閉じた。
 私は息を飲んだ。
 肩を掴んでいた手を、サーニャの頬に添える。
 自分の鼓動がうるさい。
 起き抜けにこんなに心臓が動いたら、私は死ぬんじゃないか。
 そう思いつつ、これをするまでは、キスするまでは死ねないなと思う。
 頬に添えた手を少し引き寄せる。
 私もサーニャに近づく。
 二人の距離が縮まる。
 そして。
 「サーニャ、大好きだ」
 私は、その柔らかな唇に、初めて触れたんだ。












 その日の午後。
 某場所。
 「どうでした……って、訊くまでもないみたいですね」
 「ええ。
  エイラが、告白してくれたわ」
 「それだけですか?」
 「……キスも」
 「本当ですか?
  いいなぁ……あのヘタレなエイラさんがそこまでしてくれるんだから、効果はばっちりですね」
 「魔法を同調させて相手の夢に手を加える……私とエイラみたいにすごく仲がよくて一緒に寝ているくらいの仲なら簡単だったけど」
 「む、私にだってできますよ。
  私たちの仲を甘く見ないで下さい」
 「そうね、ごめんなさい。
  応援しているわ」
 「ありがとうございます。
  あ、そうそう、言い忘れてました。
  おめでとう、サーニャちゃん」
 「ありがとう、リーネさん」

 


 ――未来視の未来は、黒い仔猫の手の内に。

 
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