Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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夜を走る
私を満たす
やさしい光

こんばんは
フェルゼです。

他ジャンルに浮気をしていたら、なのフェイが降ってきました。
人生万事塞翁が馬とはよく言ったもんです。
え?
そんなときに使う例えじゃない?

さて、今回更新はカテゴリリリカル。
フェイトさんとなのはさん。
親友以上、的な、短い短い一コマ。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。



 それは、静かな夜のこと。




 「なのは」
 エンジン音だけが低く響く静寂に溶けそうな声で、フェイトがなのはを呼んだ。
 返事はない。
 「なのは?」
 今度は少しはっきりと、フェイトはもう一度その名を呼んだ。
 やはり、返事はない。
 フェイトが助手席にちらりと目をやる。
 「……なんだ」
 なのはは、静かに寝息を立てていた。
 そのまましばらく走り続けて、そっと、フェイトは車を路肩に寄せた。
 フェイトのもの以外に走行している車の姿はなく、停車させたフェイトがライトを消すと、辺りは疎らな街灯が照らすのみの夜に沈む。
 「なのは」
 もう一度、今度は静かに、静かに、フェイトはなのはを呼んだ。
 なのはを起こしてしまわないように。
 そうして、自身のシートベルトをそっと外した。
 自由になったフェイトは、体をなのはの方へと向ける。
 今度は、その名を呼ばなかった。
 口を開かないままに、穏やかな笑みだけ浮かべて、フェイトはなのはをそっと抱きしめた。
 「世界は、きれいだね、なのは」
 聞こえるのは、なのはの呼吸だけ。
 だから、フェイトは少しだけ、正直になれる気がした。
 いつもは言えないことを、心の中だけで収めてしまっていることを、言葉にできる気がした。
 辛い世界、思い通りにならない世界、誰かと誰かの思惑が交差して濁る世界、けれども。
 フェイトは、少しだけ深く呼吸をした。
 「なのはのあったかい腕に抱いてもらって、私はなのはが好きになったんだよ。
  なのはのことを好きになったら、なのはの周りの人たちのことが好きになったんだ。
  なのはの周りの人たち、なのはの周りのことたち。
  なのはの、好きな世界」
 小さく、深呼吸。
 「なのはの世界を好きになって、私は初めて、私を赦せたよ。
  私を生んだこの世界を、私は好きになれたんだ。
  そうしたら、どうしてだろうね、世界も私を好きになってくれた気がしたんだ。
  私が世界を好きになったら、世界も私を好きになってくれたんだ。
  世界が、私を赦してくれた気がしたんだ」
 抱きしめて、静かな声とはいえ耳元で囁いても反応のないなのはに、フェイトは少しだけ大胆になる。
 熟睡しているなら、きっと、気づかない。
 フェイトはなのはを抱く腕にもう少しだけ力を入れて、もう少しだけはっきりと、なのはの耳元で告げた。
 「ありがとう、なのは。
  私は、ここにいるよ」
 きっぱりと言い切りたかった言葉は少し震えてしまったけれども、聞いてほしかったわけじゃないし、いいよね。
 数十秒ほどその姿勢を保ってから、フェイトは元の体勢に戻った。
 目頭を拭ってからシートベルトを締め直し、エンジンを始動させる。
 ライトをつければ、二人だけの静かな休息は終わりを告げた。
 
 夜の中を、フェイトの車だけが駆けていく。
 フェイトの口元に浮かぶのは、満足げな笑み。
 普段は照れてしまってなかなか口に出せないなのはへの感謝をたくさん口にできた、そんな充足感。
 やがて柔らかく響いてきたフェイトの鼻歌は、二人のアパートの駐車場まで続いた。
 フェイトがなのはを起こそうとして伸ばした手を逆に掴まれて、「お返し」と言ったなのはがフェイトの頬に唇を触れさせるまで。
 赤く染まった顔で笑うなのはと、真っ赤になった顔で呆然とするフェイトが顔を見合わせるまでは。
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