Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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The Garden of 4
ひだまりハニカムが
襲ってきた

こんばんは
フェルゼです。

この時に、私の書くSSよりも原作の方が甘くてどうしようと嘆いていたのですが、
アニメ化でその原作に輪がかかりました。
やべぇ、私の出る隙がない。

さて、今回更新もカテゴリリリカル。
前回までの続きにして、終幕です。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。





 “フェイト”
 “……なに、アルフ”
 “どうして、偽ったのさ”
 “……偽った? 何を”
 “自分をだよ、フェイト”
 “……私は自分を偽ってなんかいない”
 “フェイトの「自分」って、なんだい”
 “私は、私だよ”
 “フェイト。フェイトは、誰だい”
 “私は、高町に仕える執事”
 “フェイト・テスタロッサだろ?”
 “そう、だよ”
 “さっきのは、誰の答えだい”
 “さっき?”
 “高町のお嬢ちゃんに言ったのは、誰の答えだい”
 “……私の、答えだよ”
 “高町の執事としての? それともフェイト・テスタロッサの?”
 “……私の、だよ”
 “そう……。全然、納得なんてしていないくせに”
 “そんなこと”
 “じゃあ、どうして”
 “……”
 “どうしてフェイトは、そんな泣きそうな顔をしているんだ”




 「フェイトさん」
 翌日、主な者たちは式に向かった後の屋敷でなのはの部屋の掃除をしていたフェイトに、背後から声が掛けられた。
 「何でしょうか、メイド長」
 「旦那さまから、あなたにです」
 フェイトが幼いころから見知っている壮年の女性は、そう言ってフェイトに封筒を差し出した。

 “フェイト・テスタロッサ君。
  君も知ってのとおり、なのはは今日の式が終わり次第スクライアに入る。
  多くの思惑が絡まった末の結末ではあるが、ユーノ君ならばなのはを悪いようにはしないだろう。”
 フェイトは顔を上げて、なのはの相手であるユーノ・スクライアを思い浮かべた。
 なのはの幼馴染である彼だから、フェイトも彼をよく知っていた。
 その性格の穏やかなことも、彼がなのはに想いを寄せ続けていることも。
 当主の言うとおり、彼ならばなのはを不幸にすることはないだろう。
 “だがフェイト君、不幸でないことは幸福であることと等しいのだろうか。
  無論、不幸でないのならばそれは幸いなことだ。
  それでも、親としては我が子の一番望む形での幸を願わずにはいられないのだよ。
  なのはは、出立の時独り言のようにこう言っていた。
  一番好きな人に唇を預けた、と。
  それが誰のことか、私たちは尋ねなかった。
  だから、はっきりと誰とは分からない。
  ――
  君は、有能だ。
  だが、なのははもういない。
  君を解雇する。
  同意しないのであれば、残ってもらっても構わないが、同意してくれるのであれば、別に頼みたい仕事がある。
  この国の辺境に、人がほとんど住まない森の領地がある。
  そんな領地でも領主は必要だ。
  君に任せたい。
  そこで、誰とどのように暮らしてもらおうと構わない。
  そのような辺境で問題が起きたとして、それで痛手を受けるほどこの高町は脆弱ではない。
  行ってくれるのであれば、餞別がある。
  漆黒のバルディッシュを君に譲ろう。
  名馬には違いないが、君にしか懐いてはくれないのでね。
  乗りこなせない名馬に用はない。
  綱は外しておく。
  君が連れて行ってくれ。
  君の行く末に幸多いことを願うよ。”
 読み終えて、フェイトは大きく息をついた。
 もし、フェイトが自身の解釈通りにこの手紙の内容を捉えて、それを実行したとしたら。
 当主はどうするだろうか。
 彼は、笑うだろう。
 どういうことだと激昂する諸侯を前に、大したことではないと笑うだろう。
 彼のそんな場面を、今までにも時折目にしてきた。
 まず始めにニヤリと。
 そして、愉快そうに声を上げて。
 「選んだつもり、だったんだけどな」
 フェイトの握る手紙の端が、クシャリと縒れた。
 フェイト自身、なのはを送り出し、整理を済ませたらここを去るつもりだった。
 他に行くところなんてない。
 けれども、ここにはいられない。
 なのはを思い出してしまうから。
 だから、ここから離れなければいけない。
 ――逃げなければいけない。
 それが、フェイトの選択だった。
 選択のつもり、だった。
 「全然、諦め切れてなんていなかった……」
 どうしようもない運命だと諦めたそれは、フェイトにまだ選択の余地を残していた。
 残してしまっていた。
 選ぶことが、出来る。
 「選んでいないのは、私だけってこと、なのかな」
 ――だったら、私は。
 フェイトの口元に自虐ではない笑みが浮かんだ。
 それは、ここ数年フェイトが閉じ込めていた表情で。
 それは、ここ数年フェイトが封じ込めていた感情で。
 ここにはいない彼に一礼して、フェイトは部屋を出た。
 旅に出る時のために用意した黒い外套を羽織り、フェイトは厩舎に向かった。
 最奥にほど近い場所に、黒い塊が見える。
 柵の向こう、フェイトの気配に気づいて立ち上がったバルディッシュにフェイトは歩み寄る。
 「……行けるかい?
  バルディッシュ」
 高い嘶きでもってそれに答え、ひとっ飛びに柵を越えてフェイトの前にバルディッシュが立った。
 「いいコだ……」
 満足げに首を撫でる。
 と、その時厩舎にもう一つの嘶きが響いた。
 見るとなのはの愛馬、レイジングハートが同じように立ち上がっていた。
 「お嬢さまは、連れて行ってくださらなかったの?」
 フェイトの問いに答えるように、レイジングハートが頭を振った。
 「そうじゃなくて、わざと……?」
 ガサリと音を立てて、レイジングハートが一歩踏み出してきた。
 踏み出して?
 フェイトが見るその先に、常ならレイジングハートにつけられていた綱がない。
 「そういう、こと、なのかな。
  どこまでも私に都合のいい解釈だけれど」
 ほかの馬はつながれているのに、バルディッシュとレイジングハートだけは繋がれていなかった。
 先ほどの手紙と併せて、どう解釈するか。
 屋敷に向かって頭を垂れるフェイト。
 そして。
 「行こう、バルディッシュ。
  レイジングハート」
 バルディッシュに飛び乗ると、それは一陣の黒い風となりレイジングハートの白い姿を伴って瞬く間に、敷地の中から姿を消した。



 高町とスクライア、両国の国境近くにある古城が、数十年ぶりの賑わいを見せていた。
 高町なのは、ユーノ・スクライア両名の婚礼会場として。
 両家に縁のある者たちが集まり、祝福の言葉を述べていく。
 式次第は進む。
 「それでは、指輪の交換を」
 クライマックス、誓いの口付けの前の指輪の交換を司祭が告げた。
 「はい……」
 戸惑いながらも指輪を手にしたユーノ。
 彼自身、この結婚に納得できない物を持っている。
 なのはの気持ちは知っていたから。
 フェイトの気持ちも、なんとなくという程度ではあるが、察していたから。
 けれども、彼には彼の想いがある。
 なのはがここにいてこの流れを受け入れるということならば、それを止める理由はなかった。
 一方のなのはは、ユーノが手にした指輪をジッと凝視している。
 ここでなのはも対の指輪を手に取らなければならないのだが、動く様子がない。
 「高町なのは、指輪を取りなさい」
 司祭が訝しげになのはに行動を促した。
 「……」
 なのはの握りこんだ掌が、震えたその時。
 「なのは!」
 会場の戸が開き、声が響いた。
 外から差し込む日光がその人物を黒く染め上げ、姿は見えない。
 影だけがその声と同じように、大きくその場に飛び込んできた。
 次の瞬間、なのはは先ほどまでの緩慢な動きがうそのように素早く踵を返し、走り出していた。
 「フェイトちゃん!」
 フェイト・テスタロッサの元へ。
 人影――フェイトは肩で息をしたまま、入り口で手を広げて立っている。
 そんなフェイトの一歩手前で、なのはは立ち止まった。
 その瞳を見上げたなのはを、フェイトは謝罪の意を込めた笑みで見つめる。
 それは、なのはが久しぶりに見たフェイトの笑顔だった。
 「なのは」
 それは、なのはが待ち望んでいたフェイトの声だった。
 溢れんばかりの感情の込められた、フェイトのなのはを呼ぶ声。
 踏み出したのは、フェイト。
 最後の一歩。
 距離を取り去って。
 フェイトはなのはをギュッと抱きしめた。
 外套がなのはを包みこむ。
 会場は水を打ったように静まり返っていた。
 目の前の事態を即座に理解した者は、何かを口にする必要を感じていなかった。
 目の前の事態を即座には理解できなかった者は、口にすべき言葉が出てこなかった。
 「式の途中に乱入いたしましたこと、お許しください。
  忘れ物をしてしまいましたので、取りに伺わせていただきました」
 「わ、忘れ物だと?
  なんだか知らないが、さっさと高町なのはを離せ!」
 列席者の一人が声を絞り出した。
 「お嬢さまを離すことは、出来ません。
  これが私の忘れものなのです。
  お嬢さまは……なのはは、返していただきます」
 静かに、けれども明確に、フェイトは告げた。
 「な…何を言い出すんだ君は!」
 「なのはは昔から、私のものですから」
 フェイトは笑みを浮かべる。
 なのはに向けていた物とは全く異なる、余裕を滲ませた笑み。
 凄味と言ってもいい。
 再び静まり返った会場に、別の声が響いた。
 「知っていたさ」
 二人の元へとゆっくり歩み寄る。
 ユーノ・スクライア。
 「ごめん、ユーノ……」
 フェイトの表情が後悔に濡れ、深く、ユーノに向けて頭を下げた。
 なのはも申し訳なさそうな表情を浮かべている。
 「いいんだよ。
  そうでなくちゃ、なのはは幸せになれない。
  君があまりに遅いから、僕が送り届けなくちゃいけないかと思ったじゃないか」
 苦笑するユーノに再度頭を一つ垂れた。
 そして。
 「行こう、なのは」
 「うん、フェイトちゃん!」
 フェイトはなのはを抱えて走り出した。
 会場の外で待つ愛馬のもとへ。
 二人が消え去り、蹄の音が小さくなって、やっと会場がざわつき始めた。
 ざわつきは瞬く間に広がり、パニックと言っても差し支えない様相を呈してくる。
 「追手を差し向けろ!
  高町なのはを連れて行かせるな!」
 「いいんですよ」
 追手を差し向けようとしたスクライア家当主にユーノが再び告げた。
 その表情に、先ほどまでの悲痛さはない。
 むしろ、どこか晴れ晴れとしたような爽やかさがあった。
 「君も相当に不器用だな」
 聞きなれた声に、ユーノは顔を向けずに苦笑した。
 参列していたクロノ・ハラオウンが、ユーノの傍まで歩み寄っていた。
 「そうかな?」
 「好き、だったんだろ?」
 「だからさ」 
 沈黙でもって促すクロノ。
 「好きな人には幸せになってもらいたい。どこかおかしなところがあるかい?」
 「……いや、至極もっともだ」
 擦れ違いざまに、クロノはユーノの肩を軽く叩いた。
 
コメント
この記事へのコメント
探偵GODです
はじめまして探偵GODです。
これは勉強になります。
2012/12/08 (土) 22:27:34 | URL | 探偵GOD #mQop/nM.[ 編集]
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