Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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The Garden of 3
なにしてたかってーと
風邪ひいてたわけです。

こんばんは
フェルゼです。

全身倦怠感と喉の痛みで病院に行ったんですが、
ろくすっぽ診断もせずに
「がーが―口開けて寝てただけじゃないの?ハハッ」
って言われました。
測ったらバッチリ熱まで出てたんですけどね。
うーむ、言われてみると、寝てる時口開いてたかもしんないなぁ。
鼻炎持ちですし。
何のかんので寒くもなってきました。
皆様もお体にはお気を付け下さい。

さて、本日更新もカテゴリリリカル。
前回の続きです。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。
 


 一人テラスに立ち、中庭を見下ろす。
 金の髪が、月明かりに輝いていた。
 中庭を見降ろしていたフェイトはふと、その隣に気配を感じた。
 フェイトは動かない。
 靄のようだったそれはやがてヒト型を作り、赤い髪の女性が立っていた。
 いや、女性の映像を結んでいたというのが正しいか。
 背後の光景がうっすらと透けて見えている。
 「……アルフ」
 目を向けないままフェイトが呟く。
 気付いていたから。
 テラスのドアからこちらを見つめる小さな影に。
 幼いころ、高町に来る前から共にいたただひとり。
 “フェイト”
 赤い髪の女性の足元に、こちらははっきりとそこにいる子犬。
 狼のように鋭さを感じさせる毛並とは裏腹に、気遣うような瞳。
 フェイトに出会うまでの生活の影響で、未だに優しげなそれはほとんどフェイトに向けることしかない物だけれど。
 フェイトはその優しさをよく知っていた。
 「アルフ」
 フェイトはもう一度その名を呼んだ。
 それは子犬の名前であり、そして女性の名前でもある。
 それは彼女の姿が子犬であり、そして女性でもあるからだ。
 フェイト自身、そのことに違和感がないと言えば嘘になる。
 けれどもそれがどうしようもなく本当のことだったから、フェイトはそのまま受け入れた。
 記憶にある一番幼いころからフェイトと共にあり、ずっとフェイトを見守ってきた彼女を。
 “フェイトは何をしているんだい?”
 「何って、私はなのはの執事をしているんだよ」
 “どんな執事だい?”
 「目指すのは、完璧な執事だよ」
 “どうして完璧を目指すんだい?
  完全な執事を目指すんだい?”
 「……なのはの迷惑にならないように。
  高町の迷惑にならないように」
 “それだけ?”
 「……他に何があるって言うの?」
 “あのとき当主は言った。
  世話係の域を超えて、と。
  フェイトはまだ世話係でもあるんだ。
  でも、それを放棄してまで執事であろうとする。
  完全な執事で”
 「……」
 “世話係では、世話できる期間が限られるから。
  違うかい?”
 「……」
 “有能であろうとし続けるのは、そうでないとなのはのそばにいられないと思ったからだろ?”
 「だったら……だったらなんだって言うの」
 “……いや、何でもないよ。
  おやすみ、フェイト”
 女性の姿がかき消えた。
 フェイトが足元に視線を向ける。
 子犬のアルフが悲しげにも見える視線をフェイトと交差させて、踵を返して去って行った。
 「私に、どうしろって言うの――」
 呻いたフェイトに声だけが届く。
 “幸せになればいいのさ、フェイトが。
  幸せにすればいいのさ、フェイトの想う人を。
  その二つは、そんなにかけ離れたことかい?”
 フェイトの瞳は、月に揺れている。

 揺れる瞳をフェイトが持て余したまま、さらに数年の時間が流れた。 

 「フェイトちゃん、ちょっと、いいかな」
 「如何されました?
  お嬢様」
 「フェイトちゃんと、お話したいことがあるの」
 「明日の準備は御済みですか?」
 「……」
 「御済みでないのでしたら、私もお手伝いしますので。
  さ、荷物をまとめて……」
 「フェイトちゃん!」
 なのはは隣室に向かおうとするフェイトの手を掴み、引き留めた。
 「どうされました?」
 正面を向いたまま返事を返すフェイト。
 その手を掴んだまま顔をあげないなのは。
 「……分かってる、くせに」
 「何をでしょうか?」
 「惚けないでよ!
  フェイトちゃんだって、気付いてるんでしょ!
  私が誰を好きなのか!」
 「お嬢様がどなたに想いを……寄せておられるかは、存じ上げておりませんが。
  お嬢様が明日、スクライアに嫁がれることは存じております」
 「違う!
  私は……!」
 なのはがフェイトの手を引く。
 急に加わった背後への力に踏鞴を踏んだフェイトは、しかしなのはの一歩前で立ち止まった。
 あと一歩の距離。
 “あの日”からフェイトが決して踏み込んでこない距離。
 もどかしくて、それでもいつかはと願っていた。
 けれど、願うだけでは届かないなら。
 想うだけでは伝わらないなら。
 その距離をキャンセルできるのは、自分だけ。

 「フェイトちゃん!」
 呼ぶと同時に掴んだ彼女の手を更に引きよせ、空いた左手で彼女の肩を掴む。
 こちらを向いたフェイトの表情を確認することもせず、なのはは一歩踏み出した。
 二人の距離を、キャンセルする。
 ゼロになる。
 なのはが掴んでいたのはフェイトの左手と右肩。
 扉に押し付けて。
 なのはの唇がフェイトのそれを塞いだ。
 フェイトの表情が一瞬動いて。
 目を閉じた。
 振り払うでもなく、抱き締めるでもなく。
 「ん……」
 時間にして数十秒。
 肺が悲鳴を上げ始めて、なのははフェイトから体を離した。
 再び目蓋を上げたフェイトの目に、なのはの視線が向う。
 睨むような、挑戦するような視線。
 時折なのはが示す、純粋な怒りの目。
 「フェイトちゃんが言ってくれないなら、私から言う!」
 頬の赤みはその怒りと。
 押し付けただけで感じた、唇の気持ち良さの所為。
 だから。

 「私はフェイトちゃんが好きなの!
  主従なんかじゃない!
  友達としてでもない!
  知っていたんでしょ!?
  ずっと、知らない振りをしていたんでしょ!?」

 まっすぐにぶつけた視線と言葉に、返されたもの。
 「……」
 無言と、少しだけ逸らされた視線。
 隠される月に揺れた瞳。
 「……っ!」
 フェイトの頬に手をのばして、視線の先を確かめて、なのはは再び視線を交わらせた。
 「奪って。
  私を、ここから連れ出して。
  もしもフェイトちゃんが、私のこと……」
 「それはご命令ですか?」
 なのはの言葉を断ち切って、フェイトが訊ねた。
 「……命令なんかじゃない。
  これは、私のお願い」
 間は、数瞬。

 「それは……できません」
 小さく息を吐いて、告げられたのは簡潔な答え。
 「高町に仕える身として、そのようなことをするわけには参りません」

 頬の色を深めて。
 再びなのははフェイトを睨みつけた。
 なのはが聞きたかったのは「なのはの執事」の答えではなかった。
 聞きたかったのは、「フェイト・テスタロッサ」の答え。
 彼女そのものの答え。
 でも、もうそれは告げられることはないと。
 執事という外套に身を包んだフェイトから、彼女の答えを得ることはできないとなのはは悟った。
 再び開いた距離を、今度は踏み出すことなく。
 なのはは再びフェイトに口付けた。
 「預けていくから」
 「お嬢様?」
 「私の唇は、フェイトちゃんに預けていくから。
  他の誰にも、許さないから」
 それだけ告げると、なのはは乱暴に寝室の扉を閉じた。
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