Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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The T 13
ゆっくりで行こう
それが許されるところならば。

こんばんは
フェルゼです。

元々急くのは好きじゃありませんし、
急いては事をし損じるタイプなので、
なんて言い訳しつつ。
週一ペースを急いていると見るかゆっくりと見るかは人それぞれでしょうけど、
今の私にはちと急くことになってしまうようです。

ゆっくりで行きましょう。
ここならそれは、許されているはずだから。

さて、今回更新もカテゴリリリカル。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 「面会謝絶、か。
  さて、どうするかな」
 今しがた出てきた建物を振り返りつつ、クロノは呟いた。
 管理局に繋がりの深いその病院は、灰色の壁のようだった。
 ウィルムとタンプ、その名を受付に出すと、面会できないとの返事が来た。
 待たされる間すらなかったその応答は、同じようなやり取りが何度かあったか、あるいは――。
 ふと頭を過ぎったそれに、クロノは首を振った。
 「次の一手……少し、当たってみるか」
 
 ケインフォード・アンプは、定時にしばらくの残業を加えて、事務所を後にした。
 ここ最近は、暇ではないが目の回る忙しさというものからも縁がない。
 これでも昔は研究者からの相談が多い法律家だったんだ、と懐古に耽ってみたりもするが、当時を知る者がほとんど残っていない今は夢物語の類と同じだ。
 あの最も忙しい時期を共にした仲間、アベルはとうに去ってしまった。
 変わらないのは、この習慣だけ、か。
 何も考えずとも馴染みのカフェに向く足に、お前は気楽でいいと胸のうちで話しかけてみる。
 当時からやや変わりつつある町並みを横目にカフェの扉に手をかけようとしたケインフォードに、横合いから声がかかった。
 「失礼ですが、ケインフォード・アンプ先生ですか?」
 「ケインフォードは私だが」
 見ればまだ若く、それでいて頭の切れそうな男性だ。
 相談事を持ってくる研究者たちも優秀なものが多いが、どこか違うタイプ。
 「探偵さんか何かですかな?」
 人を扱っている、そんな感じがした。
 「まぁ、似たようなものです。
  少し昔のお話を伺いたいのですが、少々お時間をいただけますか?」
 「こちらでよろしければ」
 カフェを指して、ケインフォードはそう言った。

 「アベル・ハルトマン先生の事なのですが」
 男性はそう切り出した。
 名前と肩書きは告げられたが、ケインフォードはその経験から男の語った内容が信頼に値しないことを悟っていた。
 それでも、アベルのことをまだ先生と呼ぶこの男の話に乗ってやろうと、既に決めていた。
 しばらくアベルについての他愛もない話をした後、男性は居住まいを直してこう言った。
 「先生の研究について、知りたいのです」
 ここからが本題なのだろう。
 「ならば、彼の論文を探したまえ」
 男性の求めているのが、科学的なものでないことはなんとなく察していた。
 この回答が求められているものでないことも。
 「そういったレベルで分かることではなくて、です」
 「では、何かな」
 おそらく自分は、楽しんでいるのだ。
 「ハルトマン先生から実際の研究のことを聞いてらした先生だからこそ、ご存じなこともあると思いまして」
 「残念ながら、私は周辺の法律が専門でね。
  実験では門外漢だよ」
 アベルの名を口にするのは久しぶりで、その名を口にするたびに色々な下らない思い出がよみがえる。
 けれども残念なことに、そろそろ時間だ。
 これ以上遅くなると、妻が作ってくれている夕飯が冷めてしまう。
 だが、ここまで話に付き合ってくれたのだ。
 無碍に返すこともない。
 「いい人を紹介してやろう。
  彼に聞けば、私なんかよりもアベルのことを詳しく聞くことが出来るはずだ。
  もちろん、研究内容についても」
 「どなたですか」
 「ナブラ・ハルトマン。
  彼の息子だよ」
 



 ケインフォードにもらった紹介状を手に、クロノはウィオンの扉をくぐった。
 アポイントメントはない。
 小ぢんまりとしてはいるが、清潔感と開放感のあるロビーは、知っているものでなければ犯罪組織の関連企業だとは思わないだろう。
 「失礼、ナブラ・ハルトマン氏にお会いしたいのだが」
 「ナブラ、ですか。
  すみません、本日は休んでおります」
 「休み?」
 報告では、今朝は通常通りに出社しており、出張に出た形跡もない。
 と、なると。
 「そうですか、ではまた日を改めさせていただきます。
  いつでしたらおられますか?」
 「申し訳ありません、はっきりとしておりません。
  ご連絡先を教えていただければ、こちらからご連絡させていただきますが」
 「そうですか……。
  いえ、大した要件ではないので、また寄らせていただきます」
 その日を境に、ナブラ・ハルトマンは姿を消した。
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