Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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The T 11
自分で自分を、するつもりはないのですが
願わくば、誰か私を――

こんばんは
フェルゼです。

ここのところ、自分の書きたい先が見えなくて迷走しています。
私は、どう着地させたくて書き始めたのか。
ししょうからはスランプというやつだと診断されました。
解消方法は分かりませんし、解消されるのかも分かりませんが、
今はただ、書いていようかと思います。
真っ暗な中で彷徨っているみたいでいい気分ではないのが残念ですが。

さて、今回更新もカテゴリリリカル。
なのはさんも登場されますが、オリジナルのキャラクターも出てきます。
やぁ、なのはさん。
お久しぶり。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。


 その夜、クロノがエイミィを伴って訪れたのは古い歌劇場。
 オペラ、もしくは仮面舞踏会を意識したのだろうか。
 客に目から鼻にかけてを覆うマスクを貸与しており、すぐ外の大通りならば明らかに異質なそれは、建物自体が持つ隔絶感に依るものだろうか、さも当然のようにその空間に存在していた。
 「ショックなのは分かる、分かるが……」
 幕間にロビーに出ていたクロノが、エイミィの肩に手を置いて口ごもる。
 俯くエイミィの表情は、目元が隠れてしまっている所為もあるだろうが、はっきりとはしない。
 だが、彼女を知る者が見れば憔悴しているのがよくわかった。
 「うん、そうだよね……私がショック受けてちゃダメだよね。
  せめて、なのはちゃんの前くらいでは、慰めるくらいの気でいなくちゃ」
 ここ数日鳴りを潜めていた、やや前向きな返答にクロノは心の中で安堵した。
 「無理はしなくていい。
  なのははそんなこと望んでいないだろうし、フェイトだって……。
  ただ、悲しみに沈んで、体を壊すようなまねは、やめた方がいい」
 「ありがと、クロノ君」
 「いや……」
 疲れを滲ませて、それでも微笑んだエイミィに、クロノが視線を逸らせて頭をかく。
 今日この選択は、悪くなかった。
 「あれ?」
 そんなクロノを現実に呼び戻したのは、
 「ねえ、あれってなのはちゃん?」
 エイミィの言った、そんな名だった。
 「なのはが?」
 訝しむ様に言ったクロノが視線を向けると、たしかになのはが立っていた。
 教導官の制服ではない。
 色合いからすると執務官のものに似ていたが、若干デザインが異なっていた。
 だが、それ以上にクロノが気になったのは。
 「何してるんだろう、なのはちゃん」
 険しい表情を浮かべて、何者かと対峙しているという状況だった。
 仮面をつけた人々の中で、素顔を晒し、かつ制服のような格好のなのはは却って目立っている。
 それが数人の集団と対峙しているとなれば、耳目を集めるのは避けられない。
 クロノは、なのはと対峙している相手に注意を移した。
 男性四人ほどの集団……いや、後ろに女性が一人控えている。
 数歩下がっている上に極力目立たないようにしているのか、クロノでさえ見逃してしまうところだった。
 空気は、険悪だ。
 そこに至る過程は分からないが、どう見ても友好的には見えない。
 「それで」
 なのはが口を開いた。
 爆発しそうな感情を抑えるように、ようやく、と言った感じで。
 「知らない、と、何度も言ったはずですが?」
 男の一人が、ニヤニヤとした笑いを口に貼り付けてそう返した。
 既に幾度かこういった折衝があったのだろう。
 「何も知らないはずはないですよね」
 「ご期待に応えられなくて、申し訳ないですな、高町教導官殿」
 余裕の笑みの男たちと。
 見ているほうが辛くなるほどに必死さを滲ませるなのは。
 「なのはちゃん……」
 エイミィの声を背に、クロノが踏み出した。
 遠巻きにしていた群集から一歩飛び出して、彼らの目に留まった。
 「やめないか。
  君らにここに来るなとは言わないが、騒動を起こすつもりならば相応の処置は覚悟しているんだろうな」
 「クロノ……提督」
 ようやく気づいたなのはが、声を上げた。
 男たちは怪訝な表情を浮かべている。
 「提督様が如何様でしょうか、ね?」
 「少し前まで執務官をやっていたんだ。
  口を出す権利くらいはあると思わないか?
  なぁ、グラス・ベリル」
 「ほう、執務官」
 グラスと呼ばれた男たちは、その肩書きに楽しげな声を上げた。
 「こちらにみえたのも、お仕事ですかな?」
 「いや、私用だ」
 「なるほど。
  手前どもはこの演目が気に入っていましてね、何度か見に来ているのですよ。
  後半の盛り上がりが、また素晴らしいのでね」
 「そろそろ、お席に」
 大仰に話していたベリルに、男のひとりが声をかけた。
 「おお、もうそんな時間か。」
  では、失礼させていただきますよ」
 男達が去っていく。
 「あなた」
 割れた群衆の間から人々の中に紛れていく男たちの最後尾、終始無言だった女性の肩になのはが手を掛けた。
 「――何か?」
 銀髪が纏わりつくように流れて、その女性が振り返った。
 仮面の奥、向けられた碧眼の冷たさになのはが息を呑む。
 それを振り払うようにして、なのはは口を開いた。
 「知ってますよね?」
 「何をでしょう?」
 「……っ!
  フェイトちゃんの事件について!」
 叩きつけるようになのはが叫んだ。
 「申し訳ありませんが」
 しれっと流して背を向けた女性を、なのはが再び振り向かせる。
 「……!」
 無言で睨みつけるなのはに、女性は一つ、ため息をついて。
 「一つ、忠告をしましょう」
 そんなことを言った。
 「え?」
 「あなたのようなタイプが一番危険なのです。
  激情から冷静な判断を失って首を突っ込み、命を落とす。
  ――馬鹿げていると、思いませんか?
  あるべき場所に、帰りなさい。
  このことは忘れて、あなたの仕事に戻ること。
  それが、あなたの為です」
 ギリっと、なのはが噛みしめる音がした。
 「私のあるべき場所は、彼女の隣と決めていた!」
 意表を突かれたように、女性が軽くのけぞる。
 「そう、ですか」
 しばし、互いに口を噤んで。
 「忠告は、しましたよ」
 なのはの手を外し、踵を返す。
 「あなた!」
 「……」
 言葉は返らない。
 「……名前は?」
 「――ルクレチア。
  ルクレチア・スノウ」
 それだけ言い残すと、女性は今度こそ歩き去った。
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