Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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The T 7
薬効
逆行

こんばんは
フェルゼです。

今回更新もカテゴリリリカル。
前々回の続きです。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。
 

 
 「コーヒーでもお入れしましょうか」
 かけられた言葉にモニターから目を離して。
 クロノは、ようやく周囲の状況に気がついた。
 多くの者はまだ残っているが、数名の席は既に空いていて。
 時計の示しているのは、家族のいる家に帰る身には少々遅い時間だった。
 「もうこんな時間だったか。
  ――ありがとう、今日はもう帰るよ」
 「わかりました」
 「君達も、無理はしないようにな」
 「はい、ありがとうございます」
 その日の作業、思考をまとめて、鞄を手に取った。
 少々急がねば、店が閉まってしまう。
 仕事の手を止めて挨拶をする捜査員に労いの言葉をかけつつ、クロノは早足で局を後にした。
 

 局近く、閉店の時間が迫りつつあるその食料品店には、夕飯を買いに来たと思しき職員の姿がちらほらと見える。
 籠を手に野菜売り場を抜けたそのとき、背後から声をかけられた。
 「ん? クロノ提督?」
 誰だろうと振り返る途中で、クロノはその声の主に思い至った。
 「ナカジマ三佐。
  いや、今は仕事中じゃない。
  階級で呼ぶのはなしにしませんか?」
 「そりゃ、気ぃ張らなくていいや」
 言葉通り、ゲンヤが砕けた笑みを見せた。
 「夕飯ですか?」
 「あぁ、今ギンガが帰ってきてるんだが、急に食材が足りないって言いだしやがってな。
  まったく、こんな時間に買出しに行かせやがって。
  ――そっちはなんだ?」
 「似たようなものです。
  僕も、買い出しに。
  といっても、出来合いの惣菜ですけれども」
 「……今回の一件かい?」
 「えぇ、ショックが大きすぎたようで」
 「そりゃ、まぁ、そうだろうな……。
  悪い、変なこと聞いちまった」
 「いえ……。
  こちらにはよく来られるのですか?」
 「ん? そうだな。
  来る時は、来るな。
  こう見えても、ここに食材卸してる店の親父たちとも顔なじみなんでね」
 「意外、ですね」
 「誰しも意外な面はあるもんだろ?」
 「確かに」
 男二人、小さな笑みを交わして。
 「大事にしてやんな。
  そうだな、気分転換でもしたら、少しはいいんじゃねぇか」
 「気分転換ですか……。
  ありがとうございます。
  どうも、そういうところに考えが及ばなくてダメですね。
  考えてみます」
 「おぅ」
 それじゃあと、軽く手を挙げて別れた。
 惣菜売り場で足を止める。
 懐具合と、味と、栄養と。
 そんなものを考えつつパックを手にとっては眺めていく。
 不意に少しだけ、クロノは独身の頃を思い出した。
 栄養のバランスを考えて、とは耳にたこができるほど言われていた。
 母親からも、今の相方からも。
 売り場の品揃えはそんなに変わるわけではないから、浅い栄養学の知識ではどうしても選ぶものが毎日似通ってくる。
 栄養バランスはいいのかもしれないが、精神的に少し、よくないのではないかと。
 そんなことを思った日には、体に悪いものが食べたくなったものだった。
 気分転換だ。
 メリットなんて、あまりない。
 それでも、必要なもの。
 「気分転換、ね」
 自分のためでも、何がいいかなんてはっきりとは分からないのだ。
 自分ではない誰かのためなんて、尚のこと思いつかない。
 なら、自分だったら?
 家にいても、悪いニュースが聞こえてくるばかりだろうから、外に出るのがいいかもしれない。
 見えるのが悪いニュースばかりなら。
 「観劇にでも、行ってみるかな」
 呟いた。
 日常が辛いなら、非日常も悪くない。
 現実から目を背けることも、たまには必要だ。
 誘うついでに服でも用意しようか。
 少しばかりフォーマルな装いも、たまにはいいだろう。
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