Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
The T 4
止まらない
止められない。

こんばんは
フェルゼです。

でも、止まるかもしれない。

今回更新もカテゴリリリカル。
続いています。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。




 
 死体のそばには、かつて使われていたのか錆びた作業用の車が止まっていた。
 赤茶けた錆に包まれてはいるが、それでも、上部から浴びせられた赤黒い跡は誰の目にも明らかだった。
 適当な台を探しに行った捜査員を見送ったクロノは、別の捜査員にその車を回収するよう命じた。
 命じられた捜査員は、回収すべく道具を取りに外へと出ていった。
 この場に居るもので飛行魔法が使えるのはクロノとなのはだけで、判断を誤ったとクロノは再び舌打ちをした。
 空中での作業が出来れば、二人もいれば下ろすことはわけない作業だった。
 やがて、奥から重そうに台車を押してきた捜査員が死体に近づき、その体を張りつけていた縄を切り離した。
 もう一人が倒れかかって来た体を支え、顔をしかめた。
 二人とも魔力適性はないため、全てが手作業になってしまう。
 すでにこの場に、まともな顔色をした者は一人もいない。
 
 「テスタロッサ……なのか?」
 床に敷かれたビニールの上にその体が横たえられるのをじっと見て居たクロノに、背後から声がかかった。
 「君か……シグナム」
 烈火の将が、努めて冷静な顔をしてそこに立っていた。
 「身に付けていたものから判断すると、そのようだ」
 「そうか……」
 驚愕と、そして落胆とを交互に示して、シグナムはゆっくりとなのはの傍まで歩み寄った。
 「外傷は?」
 「少なくとも、目につくようなものはない。
  頭部については分からないが。
  着衣にも乱れは見られない」
 「そうか」
 クロノとシグナムの見守る前で、ゆっくりと捜査員が死体から離れていった。
 その体は、倒れた大理石像のように手足を伸ばして横たわっていた。
 酷く不自然にぎこちないので、クロノとシグナムはその好まざるべき、だが文句のつけようのない経験からして、まだ死後硬直が去っていないのを知った。
 「包んでから運んでくれ。外からは見えないようにな」
 「はい」
 ガサリ
 先ほどの捜査員が下ろした死体をシートに包もうと、端を捲り上げた。
 誰もが目を逸らしながらもその死体に意識を取られていて。
 だから、見逃した。
 「フェ……ちゃ……」
 這うように、なのはがシートに寄っていたことを。
 その手を、伸ばしたことを。
 「離れて下さい! 高町教導官!」
 捜査員の鋭い声にクロノとシグナムが目を向けると、なのはの手が白変した足に触れようとしているところだった。
 「待て!」
 クロノも声を飛ばすが、捜査員の制止も間に合わず、なのはの手が蝋のような足を掴んだ。
 「ふぇ……」
 その瞬間、だった。
 音もなく、死体が発火した。
 青白い高温の炎を上げ、体を舐め尽していく。
 「離れろ!」
 クロノの叫びに、捜査員らが飛退く様に距離を取った。
 「お前もだ! 高町なのは!」
 きつく掴んでいた手を無理に開いて、シグナムがなのはを引きずるように後ずさる。
 「やぁ! フェイトちゃん!
  フェイトちゃんがぁ!」
 もがくなのはを、抱えるようにシグナムが拘束する。
 ジリジリと、タンパク質が変性していく音と臭いが、そこにいた面々の感覚を占領した。
 一人が、体を丸めて口を押さえた。
 「誰か! 消火設備はないか!」
 慌てて駈け出して行ったまた別の一人が持ってきた水の満載されたバケツから、投げつけるように放水したが、火は収まる気配がない。
 「予め発火する様に仕込んであった、ということか」
 なのはを押さえつつ、呻くようにシグナムが言う。
 「しかもこれは、尋常の炎じゃない」
 クロノら一部の魔導士たちが消火を試みるも、その効果はない。
 異常な、高温の炎。
 それは死体を全方向から侵食して、崩していく。
 皮膚も、肉も、骨すらも。
 人々の見守る前でその蒼炎は、着々と死体をただの炭へと変えていっていた。
 いや、あれは最早灰と言うべきか。
 「フェイトちゃん! フェイトちゃん! フェイトちゃん!」
 「落ち着け! 高町なのは!」
 「離して! フェイトちゃんがいなくなっちゃう!」
 「あれはもうテスタロッサなどではない! 魂亡きただの肉の塊だ!」
 叩きつけるようなシグナムの声に、なのはの動きが止まった。
 そして。
 「うわぁああぁぁ……あぁぁぁ……あ、あ、あぁ……」
 高く、低く響く。
 細く長い嗚咽が、その喉から洩れた。
 誰も何もできず、やがて一同の前には、一山の灰の塊だけが残った。
 
 磔の錆びた十字架も、赤黒く染まった鉄の塊も、そして死体も。
 炎は全て舐め尽し、まるで何も起こっていなかったかのように、蘇ることのない工場の片隅を爛れさせた。
 死体も、周囲の品も何もかもが失われた。
 現場保存や証拠品について思考をめぐらすクロノ。
 その姿を視界の端に捕らえて、シグナムは先ほどまで錆びた十字架を指していた光の行方に、なんとはなしに目をやった。
 すでに光のさす方が変わっていて、その行方に目をやって、気付く。
 埃にまみれた壁に殴るように書かれた文字。
 Testarossa
 歪だが、そこには確かにそう書かれていた。
 「どうした」
 声を掛けたクロノが、シグナムの視線の先に目をやって、眉をしかめた。    
 「テスタロッサの家に恨みを持つ人間の犯行とでも言うのか?」
 「現時点では何も言えないが……この文字は明らかに新しい。
  事件に何らかの係わりはあると考えた方がいいだろう」
 そう言うと、シグナムは目を閉じて大きく息を吐いた。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2005 Empty Dumpty all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。