Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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The T 3
てく、てくてく
てく

こんばんは
フェルゼです。

今回更新はカテゴリリリカル。
この為の、警告文。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。




 錆びた鉄と、罅割れたコンクリート。
 それがそこにある全てだった。
 かつては何かの工場だったのだろう。
 過日を思わせる物がそこかしこには点在していたが、どれもが永遠の沈黙に沈みこんでいた。
 辛うじて小さな窓から入り込んだ光が、赤茶けた色を浮かび上がらせる。
 一条の光は空気中の塵を煌めかせて、そして。
 壁に張り付いた体を、あまりにも異質なものを、際立たせていた。
 女性。
 執務官の制服。
 それだけでもその体が誰のものなのかは、その場にいる全員が黙ったままで理解していた。
 執務官の肩書きを持つ女性は少なくはないが、体格から容易に絞込みができた。
 そして何より、今現在居場所がはっきりしていないのは誰なのか。
 条件は四つ。
 執務官であったこと。
 女性であったこと。
 現時点での居場所が不明であること。
 この土地――フロイムと名付けられたここに派遣されていた可能性が高いこと。

 黙り込んだクロノに、しかし、何事かを話しかけないと何も進まないと考えたメンバーの一人が声をかけようとしたその時。
 入口付近から、女性の声が聞こえた。
 「ここで事件があったという通報を受けたと、聞きました。
  本当かどうか確かめさせてください」
 「ダメです、お引き取り下さい」
 進路を遮るように、捜査員の一人が手を広げた。
 「何があったのかだけでも、教えていただくことは」
 「ここは関係者以外立ち入り禁止です!
  お引き取り下さい、高町教導官!」
 「どいて!」
 再び立ちはだかった捜査員を、どこにそれだけの力があったのかと驚くほどの力で振りほどいて。
 クロノ達のそば、壁から数メートル離れたところまで駆けて。
 なのはは、それの正面に立った。
 立ちすくんだ。
 「チッ…」
 一歩間に合わなかったクロノが舌打ちをした。
 しかし、その表情は蒼白で。
 大きな衝撃と、そして怒りを、平静を装った仮面の下に溢れさせていた。
 「あ……」
 なのはの声が、埋まるように消えた。
 破れた窓から差し込む明かりにくっきりと、その姿が浮かび上がっていた。
 鉄柱にぶら下がっていたのは、女の体だった。
 両手は両翼に伸びた柱に太い縄で括りつけられ、両足も同じように、地上約二メートルのところで、縦柱にくくりつけられていた。
 無骨な錆びたボルトが、女の首があったとおぼしい血だらけの穴の上、約十センチのところに突き出していた。
 その損傷された体は、壊れた人形のような、虚しくやるせない雰囲気を作り出していた。
 例えば、その色。
 首から足先まで、地獄にあるという血の池に浸ったように、死体は惨澹たるものだった。

 「フェイト……ちゃん」

 到着してからその場の誰もが口に出せなかった名を、なのはは零した。
 目を閉じたクロノが、奥歯を噛みしめる。
 「間違い、ないか」
 頭痛に耐えるかのような表情で、クロノは知りたくもないことの確認を取った。
 「だって、フェイトちゃん私におそろいってブローチ贈ってくれて……私今もつけてる」
 わななきながら、なのはが自らの左襟を握った。
 握りこまれたその手にクロノが触れると、だらんとなのはの手が落ちて、鈍く輝く星が姿を見せた。
 肩越しに見上げたクロノの目が、死体の変色した襟元に向けられる。
 そこには確かに、同じモチーフを模ったブローチが、輝きを失って貼り付いていた。
 トサリ、という音にクロノが再び正面に顔を戻すと、なのはが、放心したように膝をついていた。
 その目は大きく見開かれていて、小刻みに揺れている。
 左の目から、つ……と、一滴流れおちた。
 それを合図にしたかのように、両の目から次々と雫が零れ落ちていく。
 「フェイ……ちゃ……」
 心に浮かんだ名を、もう一度口にしようとして。
 間に合わず、なのはの感情は、堰を切った。
 「あぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 肺に残る空気をすべて押し出すように嗚咽して、両の手を床について、それで辛うじて体を支えて。
 何を言っていいかもわからないままに声をかけようとした捜査員の一人を手で制して、クロノは死体を下ろすよう命じた。
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