Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ふたりのせかい
あちら、と こちら
どちら?

こんばんは
フェルゼです。

なのはさんの話を書いていたら、収拾が尽かなくなってしまったので、
しばらく様子見です。

そんなわけで、今回更新はカテゴリマギカ。
さやかさんと杏子さんのお話です、が
血の臭いがしません。
やったー
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。



 思考から浮き上がった意識は、小さくなる足音を捕えていた。
 顔を上げる。
 その小さな背中が、離れていく。
 「ちょっと、あんた!」
 私の声に、そいつは立ち止まることはない。
 「待ちなさいよ!」
 間違いなく聞こえているのに、ゆらゆらとふざけたように歩くその足取りはとまらない。
 「もう!」
 仕方なく。
 私は足を速める。
 考え事のできたスピードから、早歩き。
 距離は、縮まらない。
 「待てって言ってるでしょ!」
 早歩きから、小走り。
 このスピードなら追いつく……そう思ったところで、あいつは同じように速度を上げた。
 「なっ」
 こっちを見ようともしない様子に、腹が立つ。
 ポケットに手を突っ込んだままの姿に、腹が立つ。
 「ふざけんなコラッ!」
 追いかける私。
 こっちも見ないくせに、私と同じくらいの速度で距離を縮めさせないアイツ。
 「逃げるな!」
 追う私。
 「あの約束はなんだったのよ!」
 逃げるあいつ。
 体力はまだまだ残っているのに、悲しみに似た情けなさで走れなくなって。
 私は、叫んだ。
 「杏子!」
 途端に。
 杏子の前向きの運動エネルギーはその踵で押し返されて、反動を利用するかのようにして振り向いた。
 「あいよ」
 振り向いては、笑う。
 キシリと、胸が痛んだ。
 「なんで先に行っちゃうのよ」
 「手ぇ繋いでやるって言ったのに、断ったのはそっちじゃねぇか」
 「校門のところから、手を繋いで歩けるわけないでしょ!
  少しは考えろ、このバカ!」
 「へいへい、バカでケッコーコケッコーですよー。
  あーあ、杏子ちゃんバカだから、何の約束だったか分かんないなー」
 「ぐぬ」
 言い淀む。
 「バカな杏子ちゃんに教えてくれないかなー、おりこうさんのさやかちゃん?」
 言えるか、バカ。
 簡単に口に出せるようなことだったら、苦労はしない。
 苦労はないし、言われた時に柄にもなく抱きついたりなんてしなかった。
 でも杏子は確かに言った。
 言ってくれた。
 杏子に言えて、私に言えない理由はない。
 ――恥ずかしさを除いては。
 「捕まえててやる」
 「ん?」
 「捕まえててやるって、言った」
 感情の行く宛を失くして、フラリ、彷徨い始めた私に、杏子はそう言った。
 呼んでもいないくせに現れて。
 話をしたり、しなかったり。
 聞いてくれたり、聞かなかったり。
 何かしたりしなかったり。
 私以上に彷徨っている杏子は、けど、肝心なときはいつも私の隣にいた。
 「あぁ、言った言った」
 わざとらしい、思い出したという演技。
 「なんであんなこと言ったのよ」
 「好きだからな」
 何度訊ねても、同じ言葉が返る。
 そう知っているから、私は何度も訊ねる。
 卑怯な私はそうやって、最後の逃げ場所の確認をする。
 「さやかはどうなんだい?」
 「私?」
 「さやかは、どうしてあの言葉を約束にしてくれたんだ?」
 言葉に詰まる。
 杏子の笑みは、崩れない。
 崩れないけど、その奥に隠れた不安を、私は知っている。
 知っているから、私は応えなくちゃいけない。
 ――まったく、恥ずかしいことだらけだ。
 「っ……好きだからよ」
 そう白状した私に。
 「愛してるぞ、さやか」
 そう言った嬉しそうな顔。
 少女の表情は、忘れない。
 
 ずっと、この表情を見続けていけると思っていた。
 変わらない二人でいられると、油断していたのかもしれない。
 だって、それをどこかで望んでいた。

 なのに。
 あの少女の顔は、もう見られないのだろうか。






















 「ほんと、さやかは素直になれねぇなぁ。
  何年経ったと思ってるんだい?」
 「うっさいわこの!」
 あたしの頬を撫でた手の持ち主に向かって、私は跳び蹴りを繰り出した。
 「おっとぉ」
 ひらりとかわし、ついでとばかりに抱きとめられて。
 そのまま、ベッドに投げ下ろされた。
 意外と大きな音と勢いの割りに、体のどこにも衝撃は来ない。
 何もかも、計算しつくした上での行動。
 そんなことをするヤツの表情はもちろん。
 なにもかも、私の感情も行動も、全てお見通し、みたいな笑みを浮かべる。
 知性を備えた大人の女で。
 それでいて悪戯な少年のような。
 ――たまらなく、蠱惑的。
 「あんた、その顔外でも見せてるんじゃないでしょうね」
 「こいつは私の一張羅だが?」
 「表情のことよ、表情の」
 「どんな表情を浮かべてるんだか知らないけどさ、私のこの表情は」
 ――あんたといるからだよ、さやか。
 耳元で、少しだけ掠れたような響で、そんなことを囁く。
 不意打ちに慣れない心が憎い。
 拒めなくなってしまうこの身が憎い。
 「さて」
 私を見下ろすそいつは、今にも舌なめずりでもしそうな雰囲気。
 「どんなふうにして欲しい?」
 期待してしまう、感情が憎い。
 ため息をつく振りをして、顔を逸らす。
 次の一言。
 私にはまだ、準備が必要だ。
 小さく息を吸って。
 向き直って。
 告げる。

 あ い し て
 
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2005 Empty Dumpty all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。