Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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Raison d'être
必須じゃなければ不必要なんて
そんなの、悲しいから。

こんばんは
フェルゼです。

なんとなく、ですが。
私の中で、杏さや(真面目)のイメージソングの一つは、
「シンシア・愛する人」だったりします。
それを意識した物も、書いてみたいものです。
何故か血の臭いのする杏子さんではない、優しいお話を。

さて、今回更新はカテゴリマギカ。
優しくない、わがままのお話。
登場されるのは杏子さんとさやかさんになります。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 あいつが、魔女の結界に飛び込んでからどれくらい経ったろうか。
 ようやく辿り着いたそこには、まだ魔女の結界が残っている。
 嫌な予感に囚われるが、魔女の気配に雑じって、もう一つ。
 慣れた気配がまだ残っていることを確認して一息つく。
 まぁ確かに、あいつは速攻よりもじわじわと削りながら戦う方が多いけれども。
 燃費が悪いからやめろと言っても、ろくに人の話を聞きやしない。
 
 「さて、と」
 私も、行きますか。
 トン、と地面を蹴った。



 結界内を駆ける。
 はち合わせた毛羽立ったような箱――おそらく使い魔だろう――は、次の瞬間には多節槍に阻まれてコマ切れになっていた。
 豚コマならおいしく頂けるのに、こいつらが細切れになったところで何の足しにもなりゃしない。
 あぁ、うざい。
 奥へと駆け続ける私の耳に金属音と爆音が届き、曲がり角っぽいところを曲がった途端、爆風が押し寄せてきた。
 魔女の周囲には宝石が幾つも浮いていて、それがさやかにぶつかっては爆発しているのだった。
 ぶつかれば爆発する、切り捨てても爆発する。
 「相性最悪じゃね?」
 よくやるよ。そう呟きつつ、上に向けて地面を蹴った。
 高く、高く、魔女より高く。
 一定の距離以内に近づいたからなのか、今まではさやかにのみ向かっていた宝石が、私にも飛んできた。
 それで自分以外の魔法少女の存在に気付いたらしいさやかが、振り返って、私を認めて。
 明らかに不快な顔をした。
 いいね、その表情。
 あんたらしくて素直で、実にいい。
 嫌な奴を見たってのが、よくわかる。

 飛んできた宝石の一つに絡めるように節を伸ばして、背後に投げやる。
 案の定、いい感じのところで爆発してくれた。
 爆風を背に、私の運動方向は上方向から魔女方向へ。
 飛んでくる宝石も、あるものはさっきと同じ運命を辿らせて私の推進剤に、あるものは邪魔とばかりに弾き飛ばして。
 魔女の目……のようなものは、まっすぐ私に向けられていた。
 宝石が私の正面に集まって――飛んでこずに、一つに融合した。
 宝石の盾かい、なんとも贅沢だねぇ。
 私は一旦槍を元の形に戻すと、ぐっと力を込めて、槍投げの要領で押し出した。
 と言っても、投げ飛ばしたわけじゃなくて、柄は握ったままだから、鎖を投げたようなものだろうか。
 なんて無駄なことを考えているうちに、カチッという固い手ごたえ。
 穂先は、宝石の盾の上辺。
 軽く引っかかったことを確認して、穂先を展開させた。
 ガチリと音がして、刃が返しのように盾の上辺に固定される。
 さすが、盾にしようとしただけのことはある。
 無駄に固い。
 だが、それがいい。
 突き破ることはできなくても、空間に固定されているだけで爆発しない壁なんて、足場も同然だ。
 槍を縮めれば、体が穂先に引き寄せられていく。
 そのままの勢いで盾の上に足を掛け、刃の返しを解除すると同時に飛び出した。
 爪先あたりの感触で盾がバラけたのを知ったが、んなこともうどうでもいい。
 てかこいつ、遅すぎ。
 正面から貫いた後、すれ違いざまに断ち切った。
 耳に残る悲鳴と共にバラバラと落ちていった魔女。
 残っていた宝石が弾けて、それに混じって魔女の破片も弾け飛んだ。
 ゆらりと風景が歪んで、結界が薄くなる。
 落ちてきたグリーフシードを掴んで、大して溜まってもいない穢れをそこに吸い取らせた。
 「やるよ」
 だいぶん余力を残したグリーフシードを、さやかに向かって放った。
 コツン
 そしてそれは、予想通り受け取られることなく転がった。
 「なによ、何のつもり」
 揺らぐ結界の床に、赤黒い塊が落ちているのが見えた。
 魔女の食べ残しだろう。
 さやかの無くなっている左腕分にしては、量が多い。
 「それ」
 柄で赤い塊を指す。
 「あんたが来た時からそうなってたの?」
 「……」
 無言だが、その表情から察するに、さやかが駆け付けた時にはまだ人だったのだろう。
 「ふぅん。
  ま、どうでもいいけどさ。
  あんた、その腕治さずに帰る気?
  ソウルジェム濁ってて腕生やす余力なさそうだけど。
  悪いこた言わないからさ、腕くらい生やした方がいいと思うよ」
 「……」
 睨むようにこちらを見たまま、さやかがグリーフシードに手を伸ばすのを確認して、私は踵を返した。
 魔女の結界もきれいさっぱり消えた。
 あの元人だった物も、一緒に消えたろう。
 魔法少女の装いを解除しようとして……やめた。
 体に付いた血は洗えば落ちるけど、服に付くと非常に厄介だ。
 量が量だし、洗濯にも出せやしない。
 痛覚も切れないな。
 そもそもにこれは、私の業だ。

 次の瞬間、背後から飛んできたサーベルが、私の右足の腿を貫いた。

 「っ!」
 覚悟していたところで、痛いものは痛い。
 そして、ちょうどいい感じのところを貫いたのか、右足から血と一緒に力が抜けた。
 逆らわずに膝をついたところで、背中を蹴飛ばされた。
 おうおう、乱暴な戦いかただこと。
 前のめりに地面に抱きつく。
 ここの地面は苦いな。
 誰だい、こんなやり方教えたのは。
 ――あたしか?
 「よう、高いトコから何の用だい?」
 首を動かして、さやかを仰ぎ見た。
 頬が地面に擦れてヒリヒリする。
 「黙れ」
 勢いよく背中を踏みつけられる。
 いやー、あたしそっちの趣味はないんだけど。
 直前に目に入ったスカートの中身が眼福眼福……じゃなくて。
 直前に目に入ったソウルジェムが、浄化済みだったことを確認した。
 どうやら、グリーフシードは有効利用されたらしい。
 「邪魔なのよ、あんた!」
 いやいやさやかさんや、そんな踏み直さなくてもいいですよ。
 「あんな魔女くらい、あんたがいなくても私一人で!」
 「そうかよ。
  あたしはそれでも構わないけどさ、あんたの嫌いな犠牲者ってやつが、増えてたんじゃねーの?」
 「っ……黙れ黙れ黙れ!」
 サクリサクリと、背中に浅い傷が増えていく。
 地味に痛い。
 「あんたは、黙れ!」
 「ぐ、ぅ」
 そうして今度は左の二の腕。
 腕を貫いたサーベルがそのまま地面に突き刺さっているから、なんだか張り付けられたみたいになった。
 地面に張り付けられた聖女の像、なんちゃって。
 
 「あんたの所為だ」
 「あぁん?」
 「あんたみたいなのがいるから、犠牲になる人が減らないんだ」
 「へぇ、今度は責任転嫁かい。
  これはえらく立派な魔法少女さんだことで」
 ぎりぎりまで動かして見上げたさやかの目は、私を睨んでいた。
 仇敵のように。
 全ての元凶を見るかのように。

 それでいい。
 さやかは、私を憎んでいればいい。
 さやかにとっての敵は、憎むものは世界じゃなくて、私だ。
 だから、世界に絶望する必要なんてない。
 私をただ憎めばいい。
 いっそ、命がけで憎めばいい。
 でも、分かってるかいさやか。
 分かってるんだろ?
 だから、私を殺せない。
 命がけで憎むことは、命がけで愛することとよく似ているって。
 対象を喪えば、生きる意味を亡くしてしまうって。
 悪いね、さやか。
 もっと曖昧に生きられたはずのあんたを、そんな感情に追い込んじまってさ。
 でも、放っておいたら、あんたの生死はもっと不安定なものに委ねられちまうと思ったんだ。
 だから、今はあたしを憎んでいろよ。
 私はさやかのそばにいるからさ。
 


 今日も今日とて。
 「よう」
 頃合を見てさやかの前に姿を見せる。
 私を討つためだろう、さやかのソウルジェムは透き通っていた。
 上出来だ。
 返事の前に飛んできたさやかの剣を往なしながら、口元を歪めた。
 私の、存在意義に向かって。
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