Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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輪唱、もしくは合唱
私は生きる
蛇足のために。

こんばんは
フェルゼです。

前回がなのはさん暴走だったので、
次のカテゴリリリカルは暴走を控えようと思っていたら、
物語が生まれませんでした。
なんたること。

それでは、今回更新は久方ぶりのミクさんとルカさんの物語。
登場されるのは、ルカさんとミクさん。
たぶん、今まで載せさせていただいたものと、同じ時間軸の物語。
んでもって、一段落かしらん。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 「ルカ―!
  遊びに来たよー!」
 「また来たの?」
 数日おきに尋ねてくるミクに、私は疲れたような声を返す。
 「えー、いいでしょー?」
 それでもミクは、気にしていないように上がりこんできて。
 「仕方ないわね」
 私はため息をつきながら、お茶の用意をする。
 ミクはきっと、分かっていてくれるから。
 私がどんなことを言っても、結局のところ嫌がってなんていないって。
 一緒に、お茶を飲んで。
 ミクが話すどうでもいいことを聞いて。
 私の学生時代とかをちょっと思い出したりして。
 それをミクに話して、興味持たれたり感心されたり。
 時々ジェネレーションギャップが生じたり。
 それから、一緒にご飯を食べる。
 「あなた、まだ帰らないの?」
 「いいのいいの」
 そう言いながら、料理をする私に纏わりついてくる。
 ため息をつく私。
 「ねぇ、ルカー。
  のどかわいた。
  冷蔵庫の中のもの、もらっていい?」
 言いながら、すでに戸を開けようとしているミクの手を。
 「ちょっと待ちなさい」
 私は少しだけ慌てて止める。
 「アイスティーしかないわよ」
 そう言って、ミクの視線から庫内を隠すようにボトルを取り出す。
 「いいよー、自分で出すから」
 「放って置くとあなた、ほとんど飲んじゃうでしょ。
  それに、他の人の手が入ると位置が分からなくなるからいやなのよ」
 そう言って、私は隠す。
 本当の理由を。
 こういう日のために、食材が二人分入った冷蔵庫の中身を。
 だって、待ち望んでいるみたいじゃない?
 そうしてできた食事を、二人で食べる。
 ミクの遠慮のない感想に、こっそり一喜一憂したり。
 お世辞にもいいとは言えないミクのマナーに突っ込みを入れたり。
 食事の後片付けをしていると、大概ミクがテレビに向けていた顔をくるっと向けて、こう言うのだ。
 「ルカー、お風呂入ろうよ、お風呂」
 「入りたいなら、準備なさい」
 答える私は、内心のどきどきを隠すのに必死になっている。
 なぜならミクは、続けてこう言うから。
 「じゃ、入れたら一緒に入ろうね、ルカ」
 ホント、ひどい子。

 お風呂から出るとそれなりに遅いから。
 「用意なさい、ミク」
 「えー」
 「えー、じゃないの。
  送っていってあげるって言ってるんだから、ありがたく思いなさい」
 私はミクを、車で自宅まで送る。
 そして、たまに。
 次の日が私の休みだった時とか。
 「今日は泊まってくもん」
 「学校はどうするの?
  こっからじゃ遠いでしょ。
  あなた、何のために一人暮らししてるのよ」
 「ルカ明日お休みでしょ?
  送ってってよ、車でさ」
 そう言って、ミクは私のベッドにダイブする。
 「ちょっと、ベッドが傷むでしょ」
 「私そんなに重くないも―ん」
 にへら、と笑って、ミクは泊まっていく。
 仕事の関係で平日も休日もない私と 学生ゆえの気軽さが垣間見えるミク。
 うらやましいとか、そういうことは思わない。
 ただちょっとだけ、同じ日にほとんど休みが取れないことが寂しいだけだ。


 こんな、日々。
 いつまでも変わらずに、続くと思っていた日々。
 


 今はもう、あの日々のどこかに感じる愛おしさを思い出すことしかできない。
 届かない思い出として。
 触れることすらできないものとして。
 唐突に告げられた終わり。
 愛しくて、それでいて穏やかだった日々の終わり。



 「ルカと一緒に住むことにしました」
 ……
 …………
 は?
 「何を言っているの?」
 「いや、だからルカと一緒に住むって」
 「いつもいつも私が送って行ってあげるわけないでしょ?」
 「ここの最寄り駅から学校の側まで、地下鉄が開通しました」
 じゃん、とミクが差し出した定期券には、見慣れた駅名と聞きなれた学校名とが印字されていた。
 「――1週間、後?」
 開始の日付。
 「大丈夫、私の荷物はもうほとんどまとめちゃったから」
 「私が大丈夫じゃないのだけれど」
 「ルカの部屋って、ほとんど物がないじゃない。
  大丈夫大丈夫、私だってそんなに荷物ないから」
 「そういうことじゃなくて、それもあるけど、あなた勝手に……」
 「大家さんの了解は得たよ?」
 「ミク、あなた……」
 「引越し屋さんの日程も、ちゃんとルカがお休みの日にあわせたし。
  大丈夫、問題ない」
 「そうじゃなくて」
 「大丈夫!
  ……大丈夫、だもん」
 私の言葉を阻むように早口でまくし立てるミクは、最後にそう言って、俯いた。
 細く途切れた会話に、続く言葉を見つけられない。
 戸惑いながら見下ろす私に、ミクはチラリと、上目遣いの視線を送ってきた。
 その瞳の中の感情。
 あぁ……私は嘆息した。
 なぜ気付かなかったのだろうか。
 その態度に、その雰囲気に、その言葉に。
 彼女自身に、如実に現れていたのに。
 「ミク」
 ミクは怖がっていたのだ。
 私に拒絶されることを。
 自由奔放で、それでいて拒絶に怯える傷つきやすい心を持った彼女のことなんて、私はよく知っているのに。
 それだけの日々は共有してきているのに。
 「ほら、ミク」
 もう一度声を掛けて、ちょいちょいと指先で彼女を呼ぶ。
 「ん……」
 おそるおそる、そんな感じで近寄ってきたミクに手を伸ばして。
 珍しく俯き気味のその頭を、抱きしめた。
 「私はいいのね?」
 「え?」
 「私は何もせずに、ここで貴女を待っていればいいのね?
  それとも、荷物出しの手伝いくらいは行ったほうがいいのかしらね」
 「いい、の?」
 私の胸に顔を埋めたままのミクの、くぐもった声。
 「大丈夫だって言ったのは、あなたでしょ?
  責任持ちなさいな」
 あぁ、この甘さがいつも、私の敗因なんだ。


 そうして失われた、私ひとりの穏やかな時間。


 「るぅかぁ」
 ごろり、私の横で転がったミクが呼んだ。
 「……何?」
 「歌うたってよ、歌」
 「どうして?」
 「ん~?
  聞きたいから」
 ヘラリ、笑うミク。
 あぁ、私一人の優雅な時間はどこに。
 雑誌を見たり、譜面をチェックしたり、アロマを楽しんだりという私一人の時間は消え去って。
 代わりにミクが、脱力しきった笑みを向けてくる。
 なんて言うんだっけ、こういうキャラクター。
 ――そうそう、たれてる、だ。
 たれミク。
 「わ、ルカなにふる……」
 もがもがとミクがもがく。
 ふーん。
 私はミクを枕に押し付けながら、なんとなく納得してみる。
 始めはもごもごしていたミクだけれども、やがて静かになった。
 「うかー」
 「なに?」
 乗せていただけの腕をどけると、ミクはこちらに顔を向けた。
 「ルカのにおいがするー」
 「なっ!?」
 間違いなく赤くなっているであろう私をヘラリと笑って見てから、もう一度ミクは言った。
 「ね、歌って。
  私ルカの歌、好き」
 「……私も、あなたの歌が好きよ、ミク」
 何だかもう、いっぱいいっぱいな私。
 「え、ほんと?
  じゃあ歌う歌う!」
 急に立ち上がったミクを。
 「やめなさい!
  何時だと思ってるの、あなたは」
 慌てて諌めた。
 「ちぇー」
 「明日ね、明日」
 それでも、まぁ、この生活を喜んでいる私がいることは、今はまだ、黙っていよう。









 覚えてないだろうけどね、ルカ。
 ルカが言ってくれたんだよ。
 一緒に住みたいって。
 ルカ、あの時はお仕事の帰りで、酔っ払ってて。
 一見酔ってないみたいだから、私もびっくりしたけどね。
 ルカが、言ってくれたんだよ。
 待ってた私に。
 あなたと一緒に住めたら、あなたに毎日ただいまを言えるのに。――ねぇ、ミク。私と一緒に、住んでみない?
 って。
 私、しっかり覚えてるよ。
 でも、言うとルカ、恥ずかしがるだろうから。
 今はまだ、黙っていてあげる。
 ね、ルカ。
 ずっと一緒にいても、いい?


 
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