Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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旅立ちの日に
寂しいのは、一人ではなく
ひとり、ぼっち

こんばんは
フェルゼです。

やられました。
昨今の魔法少女。
赤と、青。

というわけで、
「魔法少女まどか☆マギカ」より
「佐倉杏子さん」と「美樹さやかさん」のお話。
「Scarlet Knight」と「蒼き光の果て」のお話、なんて。

どうでもいいんですけど、
さやかさんを見ていて、誰かを思い出すと思ったら、
「ARIA」の「藍華さん」でした。
憧れの人が金髪だし。
藍華さんはちゃんと幸せになりそうなんで、よいです。
よいです……。

最終話のまどかさんとさやかさんの場面、あそこのifです。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。


 旅立ちの日に
 


 鳴り響くオーケストラ。
 聴衆の誰もが、その美しい旋律に心を奪われていた。
 かつて天才少年と呼ばれ――悲劇の事故を越えて、天才奏者へと評価を上げた彼の紡ぐ旋律に。
 それはもしかしたら誰かのための音楽だったのかもしれないが、少なくとも万感の思いを持って聞きいるこの二人には、万人のための演奏だった。
 存在を越えた概念、鹿目まどかと、『誰かの為』に在った少女、美樹さやかにとっては。
 「――」
 優しい音が、心を震わせる。
 聞く者全ての心を。
 だからそれで満足だった。
 「ありがとう、まどか。
  もういいよ」
 さやかが目を閉じて、軽く頭を振った。
 「……ごめんね、さやかちゃん」
 「いいよ、あたしなら、大丈夫。
  ほら、まどかのこと待ってる子が、他にもいるんでしょ?」
 終わることを想像させない、穏やかな音楽が広がっている。
 だが、何ものにも等しく終わりはやって来る。
 いつしか演奏は終わり、奏者は壇上を去り、聴衆は姿を消していた。
 扉は全て閉ざされて、カシャン、カシャンと音を立てて消えていく照明が、二人の上だけ残される。
 スポットライトのように二人だけを照らす。
 音楽の終わった空間で、静寂だけが、二人を包んでいた。
 「だけど、そうするとさやかちゃん独りぼっちになっちゃう。
  ずっと頑張ってきたのに」
 絞り出すように声を出したのは、まどか。
 「大丈夫だって、さやかちゃんは強いこだから」
 笑い飛ばすかのような勢いでそれを受けたのは、さやか。
 「でも……」
 否定の出来ない、躊躇を残してまどかが言い澱んだ。
 さやかはもう誰もいない正面を見たまま、何も言わない。
 演奏の始まる前、休憩のとき、そして今まで。
 さやかがまどかに言うべきと考えていた事は、もう言い尽くしていた。
 あとは、互いに背を向けて、別れの言葉を伝えるだけ。
 それをまどかが受け入れるだけ。
 それですべてが終わる。
 それでいい。
 それで、いいんだ。
 握ったさやかの手に、微かに力が入った。

 「こんな何もないとこで、一体何してんだい」
 誰もいないはずの観客席、真っ暗な隣の席から聞こえた声に、さやかがぎょっとしたように振り向いた。
 同時に、観客席の照明が戻る。
 ガシャリ
 明々と照らされたホール。
 観客のいないそこには、まどかと、さやかと、そして。
 「杏子……」
 「よぅ、久しぶり」
 目の覚めるような赤。
 祈りの少女、佐倉杏子が、いた。
 片手を上げて軽い挨拶をする杏子に、さやかは言葉が出ない。
 変わらぬ笑みを浮かべる杏子と、杏子を凝視したまま固まったさやか。
 「なんだ?
  私に会えた感動のあまり声も出ないか」
 そんな軽口に解凍されたかのように、がクンとさやかが再起動した。
 「そんなわけないでしょ!
  てか、何であんたがいるのよ!
  ……まさか」
 「後を追ってもらえるような展開を期待したんじゃないだろうな。
  ちげぇよ。
  どっかの神様か何かが、いたずらしたんだろ。
  ここじゃどうだか知らないけどさ、外の世界じゃ結構な時間、経ってんだよ」
 「じゃあ、あんたは、生きたのね」
 「もう、十分さ」
 んー、と伸びをする杏子の表情が、その言葉は嘘ではないと物語っている。
 「心残りは、ないのね」
 「んぁ、一個だけ、ある」
 「残してきちゃったんだ」
 「違う。
  まだ、なんだ」
 言葉と一緒に表情を落とした杏子に、さやかが訝しげな目を向けた。
 「まだ?」
 「あぁ」
 杏子は短く頷いて、小さく息を吸ってから顔を上げた。
 真っ直ぐにさやかの顔を見て。
 そして。
 「――さやか、一緒に行こう」
 片手を差し出した。
 「はぁ?」
 さやかの目が丸くなる。
 「それだけ言いたかったんだ。
  返事は……別に期待してないよ。
  邪魔して悪かったな」
 じゃ、と軽く手を上げて、杏子が席を立っていく。
 まどかはもう、何も言わない。
 「なんで」
 さやかが、はき捨てるように呟いた。
 杏子の歩みが、少しだけゆっくりになる。
 「なんで、あんたは、いっつも、いっつも」
 「あー?」
 ピタリ、左足を止めて、踏み出した右足の勢いで、杏子はくるりと振り向いた。
 「そうやって、私に構うのよ!」
 「だって、なぁ?」
 イヒヒと笑う。
 にやりと笑う。
 「一人ぼっちは、寂しいじゃねぇか」
 「ッ!」
 
 バタン
 音を立てて、杏子の立つ通路正面の扉が開いた。
 ぼんやりとした照明が照らすその先。
 はっきりとは見えないけれども確かに、そこには立つべき場所があった。
 座ったままで背を向けたさやかに微笑んで、まどかはそっと席を立った。
 『もう、大丈夫だよね。
  本当に、大丈夫になったんだよね』
 さやかにその音が届いた時、さやかの振りかえったそこにまどかの姿はなかった。
 もう、見えなかった。
 でも。
 「うん……そうだね。
  強がりじゃない。
  意地でもない。
  私はもう一人じゃないから、まどか、大丈夫だよ」
 伝わると確信して、そう告げて。
 「勝手に行かないでよ、杏子。
  今、行くから」
 さやかが立ち上がった。
 「おう、そうか」
 杏子が満足げな笑みを浮かべる。
 「ほれ、行くぞー」
 「うん」
 差し出された手に、今度こそ手を重ねて、歩き出す。
 二人。
 手を繋いだ影が扉をくぐり抜けて、そして、明かりが消えた。






 後書き
 さようなら
 そして
 いってらっしゃい
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