Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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DeNature 9
さようなら
私の一部だったもの

こんばんは
フェルゼです。

なんだか急に暑くなった気がします。
春よ、どこへ行った。

さて、今回更新もカテゴリリリカル。
後日譚です……もういいですかね?
もうちょっとです。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。



 「なのはママ……」
 小さな声。
 「ヴィヴィオ……ごめんね、起しちゃった?」
 本来の起床時間にはまだかなり時間を残して、ヴィヴィオが目を覚ましていた。
 「なのはママ……」
 問いかけるような、声。
 「どうしたの、ヴィヴィオ?」
 極力平静を装って尋ねたなのはに、ヴィヴィオは。
 「フェイトママは?」
 単純な質問を一つだけ、した。
 「フェイト、ママは……」
 その名を口にして。
 なのはが、揺れる。
 ヴィヴィオに伝えなければならない。
 あの日からヴィヴィオには何も言っていない。
 おそらく、長い出張だと思っていたのだろう。
 けれども、おかしいと、気付いた。
 伝えなければならない。
 でも、どうやって?
 フェイトは"何も遺さなかった"。
 理解はただ、観念上のみ。
 それを伝えるにはどうすれば……。
 迷って、考えて。
 なのはは、一つの言葉を選んだ。
 「フェイトママはね……遠くへ行っちゃったんだよ」
 平易な表現を選んだのは、はたしてヴィヴィオのためか。
 それとも、なのは自身のためか。
 「遠くへ?」
 「そう、遠くへ」
 「ヴィヴィも、行ける?」
 「ヴィヴィオは……今はまだ行けないの」
 「じゃあ、なのはママは?」
 口を吐いて出かけた言葉を飲み込む。
 行けるものなら。
 全て振り払えるのなら。
 なのはは、とうに行ってしまっていたかもしれない。
 行きたかった。
 フェイトのいない世界から、逃げて。
 でも、それは。
 フェイトがかつて、言っていた。
 教えてくれた。
 『亡くなった人が生きていられる場所はね、一つしかないんだ……でも、一個はあるんだよ。なのは。
  それはね、生きている人の中。
  死者は生者の中では、生きることができるんだ。
  だから、私は忘れないよ。
  救えなかった、人たちのこと。
  私が、生きている限り』
 フェイトは、今はいない。
 けれど、いるのだ。
 なのはの、中に。
 ちゃんと、いるのだ。
 だからなのはは行けない。
 フェイトを失うことなど、できないから。
 それに誓ったのだ。
 フェイトと、誓ったのだ。
 なのはとフェイト、二人で、ヴィヴィオをちゃんと育てていこうと。
 だからなのはは行かない。
 フェイトとともに、二人で、ヴィヴィオを見守っていかなければならないから。
 そう、誓ったから。
 そう、決めたから。
 "フェイトちゃん、私……"

 「なのはママも、行けないんだ」
 泣きだしそうな笑顔を浮かべて、なのははヴィヴィオを抱きしめた。
 この子に涙を、見せないように。
 「なのはママも行けないの?」
 「うん……」
 「ヴィヴィもなのはママも行けないところにフェイトママは行っちゃったの?」
 「そうだよ……」
 それでも、ヴィヴィオなりに感じるところがあるのだろう。
 抱きしめられたまま、ヴィヴィオの声は徐々に切羽詰っていく。
 なのはの手が、ゆっくりとヴィヴィオの背中を撫でる。
 何度も何度も、繰り返して。
 なのはさえも気づかないうちに、その抱き寄せる腕には力が入っていく。
 「いつ帰ってくるの?」
 「帰って、来ないんだよ……」
 告げて。
 より強く抱きよせられたなのはの腕の中で。
 ヴィヴィオは、泣きじゃくり始めた。
 「うそ……つきだ……」
 嗚咽に途切れる声を、必死でつなぎ合わせる。
 「フェイト、ママは……うそつき……だ……」
 「ヴィヴィオ……?」
 「一緒にいるって、言った。フェイトママ、ずっと、ヴィヴィと……なのはママと、一緒に、いるって……言った」
 仕事の都合で会えなくなりがちなフェイトに、ヴィヴィオは訊ねたことがあった。
 フェイトママは、一緒にはいられないの?と。
 フェイトは困ったような笑みを浮かべて、それからこう答えた。
 お仕事とかで遠くに行かなくちゃいけない時もあるよ……ごめんね。でも、一緒にいるから。ちゃんとヴィヴィオとなのはママのところに帰ってくるから。ずっと、一緒にいようね。と。
 ヴィヴィオは不安げな表情を吹き飛ばして、満面の笑みで大きく頷いていた。
 ヴィヴィオにとって、大きな約束だった。
 疑うことなど、思いもよらないほどの。
 「ずっと、一緒にいるって、フェイトママ、やくそく……した……!
  ヴィヴィとママ、おいってって、うそ、ついた……!」
 泣きだしたヴィヴィオを。
 ついに、力の限り泣き始めたヴィヴィオをぎゅっと抱きしめて。
 なのははぐっと唇をかみしめた。
 「嘘なんかついてないよ、ヴィヴィオ……。
  フェイトママ、ちゃんといるよ」
 「……どこに?」
 「ヴィヴィオの中に、いるよ」
 「ヴィヴィの中……?」
 「うん、ヴィヴィオの、心の中。なのはママの心の中にも、ちゃんといる。
  ヴィヴィオはフェイトママのこと、覚えているよね……?」
 涙にぬれた顔で、しゃくりあげながら。
 それでも、大きく頷いたヴィヴィオを、なのははもう一度、ギュッと抱きよせた。
 「ずっと、一緒だよ……」
  
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