Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
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M. T. 56
正解なんて、
ないはず、なんですけどね。

こんばんは
フェルゼです。

正解のなさを楽しむのもまた、一興ではないかと思うのです。
例えば、旅行なんていいんじゃない?

さて、今回更新もM. T.
お気づきの方もみえたと思いますが、ここ数回、この欄でカウントダウンをしておりました。
今回は、
ひとりとひとり、かけがえのない、ただ、ふたり
ということで、カウント1.
最終回です。
突然でしたか?
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。




 罅と蔦に覆われていた外壁は、今は一面炎に覆われていた。
 破れた窓から噴き出した炎が、誘うように腕を伸ばしている。
 舐めるように外壁を這いあがった炎が、流麗な装飾の名残を残す屋根を呑みこんでいく。
 見つめるフェイトとなのはの目の前で、それは建造物としての姿を徐々に失っていった。
 そして、正面玄関が押しつぶされると同時に、全てが雪崩を打つかのように崩れ落ちていった。
 青い焔はやがて、赤い炎へと移り変わり。
 そして、跡には煤けた炭の山だけが残った。
 「やっぱり……災厄の種、だったね」
 なのはが落としたその声が震えているのに気づいて、フェイトがなのはの顔を覗きこんだ。
 「フェイトちゃんの家、燃えちゃった……。
  なくなっちゃった……」
 絞り出すようにそう言って、なのはがフェイトに縋るように抱きついた。
 「ごめんなさい……」
 「どうしてなのはが謝るの?」
 「だって、私がもっとうまく出来てれば、もしかしたら、こんなことには」
 スッと、フェイトがなのはの唇に指を当てた。
 「フェイ、トちゃ……?」
 なのはの声にも、フェイトはうっすらと微笑みを浮かべるだけで口を開かない。
 つられるようになのはも、口を噤んだ。
 そうして、ようやくフェイトは口を開いた。
 「ごめんね、なのは」
 浮かぶのは、悲しげな、申し訳なさそうな、つらそうな笑み。
 なのはは口を開かない。
 フェイトに止められてしまっているから。
 「私がしっかりしていれば、こんなことにはならずに済んだかもしれない」
 唇から指を離して、その存在を確かめるように頬を撫でる。
 「なのはを」
 幽かに触れているだけの力加減で体を降りて行く、フェイトの手。
 「なのはに傷をつけずに済んだかもしれないのに」
 ふわりとフェイトの手がなのはの傷口を覆う。
 もうフェイトに出来るだけの応急処置は、魔力によるそれは済ませてしまった。
 後は、落ち着いてからの完全な処置となのは自身の治癒力に任せるしかない。
 けれども。
 「なのはに傷を残さずに済んだかもしれないのに」
 この傷は、消えないだろう。
 誰も不幸にしたくないと、強く思ってフェイトはここにあるのに。
 目の前の少女一人、守りきれなかった。
 どうして、こんな。
 考えれば考えるほど、なのはへの思いがフェイトを縛る。
 それではいけないと思っても、縛られて、縛られて、巻き込まれて、進めない。
 思えば……声に出さないままでフェイトが呟いた。
 この邸に来てから、ずっとそうだ。
 過去に縛られ。
 母さんの思い出に縛られ。
 アリシアの思い出に縛られて。
 いや、違う。
 邸に来てからじゃない。
 きっと、もっと前から。
 前から、ずっと、私は。
 ――だから、ずっと、私は。

 

 言うべきじゃないなんてこと、なのはには分かっていた。
 幾つもの咎が纏わりつく彼女に、鎖を増やしたくなかった。
 それが自分からだなんて、したくないと思ってきた。
 でも。
 「じゃあ……じゃあもしも、この傷の責任をとってって、責任をとってなのはの傍にいてって言ったら、フェイトちゃんはいてくれる?
  なのはに、縛られてくれる?」
 フェイトがくれた指輪が。
 左手薬指の紅玉の輝きが、なのはにそんなセリフを吐かせた。
 そんななのはを、フェイトは少し驚いたように見つめて。
 それから。
 「いや――」
 否定の言葉を、零した。
 「そか」
 何でもなかったかのように、なのはが切って捨てる。
 「ごめん、気にしないでね。
  なんとなく言ってみたかっただけだから」
 取り繕うなのはをじっと見て、フェイトは言葉をつづけた。
 「私はね、なのは。
  もうやめることにしたんだ」
 「え?」
 やめる、こと。
 様々な“最悪”が、なのはの脳裏をよぎった。
 「縛られることにね」
 ゆっくりとフェイトの口元が笑みを形作る。
 「もう、縛られるのはやめにするんだ。
  ジュエルシードの記憶にも、テスタロッサにも。
  忘れることはできない。
  けれども、それに私の生き方を規定されるのはもうやめる。
  私、生きるよ。
  自分の意思で」
 フェイトはそこで言葉を区切って。
 小さく深呼吸をして。
 傍らに立つ少女を、見つめた。
 「なのはと、一緒に」
 「フェイトちゃん……」
 「なのはのこと、好きだから」
 笑って告げたフェイトの言葉に、なのはの瞳が再び水没した。
 「うん、うん……!」
 涙を浮かべたまま、大きく頷いたなのはに、フェイトはどこか悪戯っぽい笑みを浮かべて尋ねる。
 「なのはは、私のことどう思ってる?」
 なのはは、手の甲で一度涙を拭って、大きな笑みを浮かべて、それすらもまた涙に沈めながらはっきりと、答えた。

 「大好きだよ、フェイトちゃん!」


 














 後書き
 今はとりあえず、これだけ言わせて下さい。

 終わった―――!!!
コメント
この記事へのコメント
大分時間がたっているので今更ですけど、完結おめでとうございます。
2010/12/16 (木) 17:42:27 | URL | #-[ 編集]
Re: タイトルなし
> 大分時間がたっているので今更ですけど、完結おめでとうございます。

どれだけ時間がたとうが、このブログに載っている限り、私の中では現役ですからー!
お祝いの言葉、ありがとうございます。

むしろ、返事が遅れてしまって申し訳ありませんでした。
これからもよろしくお願いします。

2010/12/26 (日) 00:35:34 | URL | フェルゼ #-[ 編集]
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