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ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T. 53
あ……ないや
甘いの。

こんばんは
フェルゼです。

とある、私の尊敬するSS作家様の一人に、「甘いSSは?」って聞かれました。
……あれ?
もともとは特段何もない日常を、お二人ならばほのぼのとして、時に甘ったるい日常を書こうと思っていたのに。
どこ行ったんだろう、そんななのフェイ。
……
ちょっと和菓子を探しましょうか。

さて、今回更新もM. T.
しめいとうんめいに、しゅくふくを
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。




 「怖いの?フェイトちゃん」
 「……」
 「怖いんだ」
 「……そう、かもしれないね。
  これは今までのものとは違う。桁が違う。
  私なんかが扱えるレベルじゃあ、ないかもしれない。
  いや、きっと、私が扱えるレベルを超えている」
 「でも、やるんでしょ?」
 「うん、私はこのために、これを封じるためにずっと……」
 小さく深呼吸して、もう一度フェイトはバルディッシュに視線を落とした。
 「……どうしたの?」
 なのはの表情は変わらない。
 まだ、揺れていた。
 「ゴメ……手が、震えて……」
 バルディッシュを握った右手を、左手で押さえるように包み込む。
 「情けないなぁ、フェイトちゃんは。
  カッコいい怪盗フェイトちゃんはどこ行ったの?」
 「カッコよくなんて、ないよ。
  カッコつけてただけだ」
 「じゃあ、カッコ、つけちゃいなよ。
  怪盗の最後のお仕事だよ」
 「そう、だね」
 最後――そう、これが最後なのだ。
 レリックを、最後のジュエルシードを封じれば、もう。
 誰も傷つけることはない。
 これからの日々には、後ろめたくなることなんて、きっと、ない。
 終わらせるんだ。
 みんな、みんな。
 悲しいことは、全部。
 目を閉じて、フェイトは大きく深呼吸をした。
 「……なのは、手順を確認するよ。
  レリック周辺のなのはの神経伝達を一時的にブロック。
  バルディッシュの刃で切り開くと同時に、レリックが移動する前に封印する。
  私の全魔力を使ってでも、必ず」
 「フェイトちゃんだけじゃないよ」
 「え?」
 「私の魔力をフェイトちゃんに渡す方法、あるんでしょ?」
 なのはの言葉に困ったように笑って。
 無言のまま、フェイトがビロードの張られたケースを取り出した。
 開けるとそこには、簡素なつくりの指輪と、そして、見覚えのある紅玉。
 「それは……レイジングハート?」
 「レイジングハートを携帯できるようにしたものだよ」
 「じゃあ、私がそれをつけて、フェイトちゃんに手を握っていてもらえばいいんだね」
 「うん」
 「じゃあ、つけて。
  レイジングハートも、お願いね」
 何の躊躇いもなくなのはは、その左手を、薬指を差し出した。
 「なのは……?」
 「私の国だとね、結婚するときに相手の左手の薬指に指輪をしてあげるんだ。
  フェイトちゃんに初めてもらう指輪だから、だから、なのはは……」
 ずくん……となのはの視界が揺れた。
 ぐらりと崩れ落ちそうになるなのはを、慌ててフェイトが支える。
 「レリックが活動を始めようとしているんだ」
 「じゃあ、時間ないね。お願い……」
 「うん……」
 指輪を手に取る。
 しかし、震える指先が上手くなのはに合わせられない。
 「フェイトちゃん!」
 ギュッと目をつむり、指輪を握りこんで、再びフェイトは目を開けた。
 なのはとまっすぐに見つめ合う。
 「なのは……私、なのはと出会えてよかった」
 微笑むなのはに指輪をはめて、フェイトはもう一度眼をつむった。
 手は、震えていない。
 もう大丈夫だと、はっきりと分かった。
 だから、穏やかに手を握って、なのはに告げた。
 「私きっとね、なのはのこと、好きだよ」
 「あは、フェイトちゃん。
  指輪と順番が、逆だよ……」
 「そうだね、ごめん」
 「謝らないで……謝らないでよ」
 手が、震えた。
 握り返したなのはの手が。
 「どうしたの、なのは」
 どこまでも穏やかなままのフェイトの声。
 感覚と感情のすべてをなのはに向けて、その存在と内のレリックの反応に意識を絞る。
 その声に返事はなく、ただ低く、嗚咽が響いた。
 「なのは……?」
 「怖いよ、フェイトちゃん……」
 嗚咽の中、ぽとりと言葉が落ちた。
 「せっかくフェイトちゃんに好きって言ってもらえたのに、やっと私の気持通じたのに。
  もしもって考えると、怖いよ……私ずっと、フェイトちゃんの傍にいたいよ……」
 「大丈夫だよ、なのは」
 片手でなのはの頭を抱いて、フェイトはゆっくりと息を吐いた。
 されるがままに、なのははフェイトの胸に頬を当てる。
 「……どうして?」
 「私はもう、怖くないから」
 「どうして?」
 「なのはと一緒だから。
  だからもう私に、怖いものは……ないよ」
 ゆっくりとフェイトが瞳を開き、なのはの中のレリックを捉えた。
 強い光が宿る。
 開いた眼と同調するかのようにバルディッシュに瞳のような紋様が浮かび上がった。
 「バルディッシュ!」
 洞に水滴が落ちたような音が響き、なのはの中から鋭いレリックの感触が消えて、代わりにぼんやりとした違和感が沸き上がる。
 同時に、バルディッシュが鋭利な刃を形成した。
 「いくよ、なのは」
 「うん……!」
 なのはが目を閉じた瞬間、痛みのない異物感。
 金の刃が侵入したのを瞼に思い浮かべると、体の中に火が点った。
 「あ、あぁ……」
 ぐずり、ぐずりとレリックが悶える度になのはの体が削られていく。
 走る異物感。
 込み上げる嘔吐感。
 そして、左手からの力の抜ける感覚。
 抜けた力の行く先がフェイトだと考えると、"フェイトちゃんに奪われてるんだ"そんな言葉が浮かび、なのはの体に甘い痺れが走った。
 一方のフェイトは、第一段階として魔力の過剰を抑えることにも気を配っていた。
 なのはを切り裂きながら、流れ込む膨大な魔力を制御する。
 フェイトが予想してた以上になのはの魔力は膨大で、内から膨れ上がるそれはフェイトの体を軋ませていた。
 激痛に歯を食いしばりつつも、フェイトには希望が見えていた。
 二人の魔力量ならば、レリックにも対抗しうる。
 一人の魔導師ではありえないこの量ならば、先ほど感じたレリックの力を押さえこめるに違いない。
 細く小さく、なのはに通した孔が、異物に触れた。
 「見付けた……!」
 刃の先端の形状を変化させ、異物を捉える。
 もがくその動きを押さえながら、外へと。
 なのはの体に触れないところへと引く。
 こんなものがなのはの中にあるというだけで、フェイトには我慢ならなかった。
 ずるずる、ずるずると。

 やがて、真っ赤なジュエルシード――レリックが、なのはの体内から引きずり出された。
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