Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T. 49
我々は、たどたどしく生まれ、そして
世慣れぬまま、死んでいく。

こんばんは
フェルゼです。

誰かがそんなことを言っていた気がします。
以前と似た何かに出会っても、それは良く似ているだけで。
全ては、初めてのまま。
正解も知らず、分からず、足掻きつ、歩きつ。
時にガツンとぶつかって、時にのらりとかわして。
そんなふうに生きて行くんでしょうか。

さて、今回更新はM. T.
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。



 「どうしたの?なのは」
 なのはが我に帰ると、フェイトが覗きこむ様になのはを見ていた。
 部屋から駆けだした少女の面影を持って。
 もう一度なのはが廊下の奥に視線を投げる。
 そこにはもう、暗闇が漂っているだけだった。
 「うぅん、なんでもないよ」
 フェイトに続いて、なのはも部屋に入った。
 「ねぇ、フェイトちゃん」
 「ん? どうしたの、なのは」
 「窓、開けていい?」
 フェイトの持つ灯りに、中を漂う埃がきらめいている。
 それらを払おうともせずに、一点を見つめたままなのはが言った。
 「いや、やめておこう」
 「どうして?」
 「道に面してるんだ。
  ほとんど人は通ってないけど、もしかしたら、ということもある。
  誰も住んでないはずの家の窓が開いたら、不審に思われるかもしれない」
 「そうだけど……でも」
 食い下がるなのはに、フェイトは引っかかりを感じた。
 「どうか、した?」
 「――悲しい感じがね、残ってるの」
 駆けて行った幸福な思い出。
 部屋の隅に座り込む、傷だらけの少女の幻。
 「きれいな空気と陽の光を当ててあげたいなって」
 ポツリ、呟いてから、ごめんとなのはが言った。
 「いや……」
 俯いて、フェイトが小さく否定する。
 「そうだね、なのはの言う通りかもしれない」
 フェイトはそう言うと、なのはにランプを預けた。
 軋んだ音が空気を震わせる。
 ガタリという音と共に、一筋の風と、光が。
 隣の窓も同様に開けると、風が通り抜けた。
 部屋の中の空気を連れ去り、外の香りを運び入れる。
 座り込んでいた少女は、フェイトと同じ瞳の色をした少女は、膝の間に埋めていた顔をあげて、目を瞬かせた。
 そして、じっと見ていたなのはと視線が合うと、仄かに、笑みを浮かべた。
 「どう?」
 フェイトが訊ねる。
 「うん、笑ってるよ」
 「そっか」
 「フェイトちゃんには、見えないの?」
 「たぶんそれは、私の記憶とここに残っている気配がジュエルシードの影響で動いているものだから。
  私のものは、私には見えないのかもしれないね」
 「そっか……ちょっと、残念」
 「私は、私だけで十分だよ。
  なのは、ここにも薄く広がった気配だけみたいだから、別の部屋を見に行こう」
 フェイトの言葉を待っていたかのように、少女が立ちあがった。
 「どうしたの?」
 なのはが少女に訊ねる。
 「え?」
 フェイトが疑問符を浮かべた。
 「この子がね、おいでって」
 触れられないままに、なのはを引くような仕草で少女は部屋の外を指し示している。
 「――ついて行ってみよう」
 フェイトの言葉に頷いて、なのはは少女に微笑みかけた。



 「ここ?」
 「――みたい」
 なのはが足を止めた部屋の前。
 フェイトは仰ぐように、その扉を見た。
 「このお部屋は?」
 「ん? 母さんの、だよ」
 そう言うと、フェイトは扉を開けた。
 「ん……」
 なのはが眉をひそめる。
 「なるほど……ね」
 開けた瞬間漏れ出してきた、異質な空気。
 まるで自己主張をするかのようなそれは、部屋の中央の机の上から流れ出していた。
 「あった……!」
 確認するまでもない。
 異質の中心にあるのは、その石一つだけだった。
 「バルディッシュ」
 空気を裂くように、金色の光が走った。
 フェイトがバルディッシュの刃を振り上げて、そして。
 そこで、止まった。
 「フェイトちゃん……」
 その現象には少しだけ慣れたなのはが、それでも驚いたようにフェイトを呼ぶ。
 「なの、は……?」
 「フェイトちゃんにも、今度は見えているの?」
 振り向かないままに、フェイトが頷く。
 なのはの目に映るもの。
 腕を振り上げたまま動かないフェイトと、その前に立つ柔らかな紫の髪の女性。
 「母さん……」
 フェイトが、言葉を落とした。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2005 Empty Dumpty all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.