Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T. 43
がたがたごとごと
歪なままの車輪を回して

こんばんは
フェルゼです。

二度あることは三度あると言いますが、
三度あって欲しくないことも、多々ありますよね。

さて、今回更新もM. T.
なのはさんと、フェイトさんと、そして。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。



 陽の落ちた森を駆け抜け、張られたロープを掻い潜って二人は家に入った。
 フェイト逃亡の話は届いていないのか、一人きりの見張りは表でうつらうつらと舟を漕いでいる。
 「いいね、持っていけるものは最小限だ。
  ここでの仕事の事は考えなくていいから、なのはがなのはであるために必要だと思う物だけ」
 「うん、わかった」
 なのはが自室に入るのを見送ってから、フェイトも部屋に戻った。
 そこでバルディッシュを手にし、作業場にしていた離れに移る。
 「……よし」
 手持ちのジュエルシード、全ての封印を確認。
 まだ生きている魔法関連の品から、重要度や危険度などを基準に何点かをケースに収めた。
 残りの品には、封印を掛けておく。
 簡易的なものだが、夜通し掛ければ十二分に意味を果たすだろう。
 「あとは……」
 作業棚の隅にある小さな引出しに、フェイトは手を掛けた。
 「使う機会が、ないといいんだけどね」
 素っ気ない品々の中で唯一、ビロードで覆われた小箱を取り出すと、話しかけるようにフェイトが呟いた。
 そうして離れを後にすると、暗い廊下でフェイトはなのはとすれ違った。
 「なのは? 終わったの?」
 「うん。
  ここに来た時に持ってきたものをまとめたくらいだから。
  少し、増えたけどね」
 「そっか……どこ行くの?」
 「お部屋の中は確認したから、他に何か、持っていくものがないか見て回ろうと思ったんだけど……。
  もう、行くの?」
 「まだだよ。
  私はこれから部屋を探さなくちゃいけないからね」
 「じゃあ、私は他のところを見てくる。
  手伝えそうなことあったら、声掛けてね」

 最小限の私物をまとめ、自己の足跡になりそうなものを処分し、幾つかの鞄を手にしたフェイトは、廊下で立ちすくむ人影を見つけた。
 「なの……」
 何も考えずに呼ぼうとして、口をついて出た同居人の名を止める。
 「どうかしたの? フェイトちゃん」
 近くの部屋から顔を出したなのはが、ぎょっとしたように足を止めた。
 「誰……あなた」
 そう尋ねたなのはを一瞥して、人影はフェイトを正面から見据えた。
 「私の名前、お忘れですか?
  フェイト先生」
 苛立ち、怒りにも似たもどかしさ、そしてそんな中にある期待。
 なのははそんな感情を、彼女の声から感じ取った。
 「ティアナ……久し振りだね」
 「ティアナ、さん?」
 「初めまして。
  あなたがなのはさん、ですね?」
 ティアナ――そう呼ばれた女性がなのはを見る。
 はっきりと含まれていた険に、なのはが少し怯んだ。
 「はい……」
 「私、以前ここでフェイト先生の助手をしてました、ティアナ・ランスターと申します」
 「あの……!」
 記憶に留まっていたその名に、なのはが目を見開いた。
 「そう、なのはの前に手伝いをしてくれていた子だよ。
  スバルが言ってたよね」
 「そう言えば、スバルが怪我をしたそうですね。
  先生となのはさんが処置されたとか」
 「優秀な助手のおかげで、助かってるよ」
 ティアナの視線に気付いているのかいないのか、フェイトは軽く笑ってなのはを指した。
 「それで、どうしたの急に」
 尋ねられたティアナは、上着のポケットから封筒を取り出した。
 「手紙を」
 「ああ、届いたんだ」
 満足そうにフェイトが言った。
 「手紙?」
 「先生、なのはさんには話されていないのですか?」
 再びなのはを一瞥する。
 「言っても言わなくても、ここに居られないことには変わらないからね」
 「どういうこと?」
 なのはが口を尖らせる。
 「フェイト先生から、この診療所の事を任せると、私に手紙が」
 「私は脱獄囚みたいなものだからね。
  この国に居ても、迷惑がかかるだけだ。
  だから私はここを出る。
  でも、この診療所を朽ちていくに任せるのは、惜しいから。
  ティアナなら、顔見知りも多いだろうし、腕も確かだって聞いてる。
  逆になっちゃうけど、私からの餞別みたいな物と思って、受け取ってもらえないかな」
 乞うようにフェイトが笑って、ティアナが視線を逸らせた。
 「――私が通報するとは、考えないのですか?」
 「通報するくらいなら、ティアナは姿を見せないよね。
  足止めなんかしなくても、ほっといたところで私たちはもう少しここにいただろうし。
  ティアナは頭のいい子だから」
 「……教科書通りなのも良し悪しですね。
  簡単に行動が読まれてしまいました」
 そう言うとティアナは、初めて笑みを見せた。
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