Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T. 38
砂場で溝を掘るように
この手で無理やり掻き出して

こんばんは
フェルゼです。

立ち止まって振り返ると、私の中の凹凸が均されているような気になっています。
日々を過ごす中で、日常に揉まれて、削られていくような。
そこには個性やら感性やら、感受性やらといった言葉がくっついていたような気もするのですが、今のこのリアルに必要とされていないものたちが、ゴリゴリと。
丸くなってしまえば、転がりやすいのでしょうけれども。
凸凹がなければ、ふとした出来事に引っかかることもできない。
書くことはもしかしたら、せめてもの抵抗なのかもしれません。
半ば無意識に。
半ば意識して。

さて――今回更新もM. T.
頂いております拍手へのお返事は、近いうちにさせていただきますので、すみませんが少々お待ち下さい。
足掻く者、受け入れる者。
では……あなたは?
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 なのはの無事な帰国を祝っての宴が主だった家臣らの家で行われ、それが一巡して。
 フェイトは初めて自己弁護の機会という名目で謁見の間に引き出された。

 カツカツカツ……と、固い足音が聞こえた。
 薄い絨毯の下の硬質の床に反射した音が、謁見の間の扉を通して、なのはの耳に届いた。
 『分かっているな?特例だぞ』
 兵の声が聞こえた。
 一緒に居るであろうフェイトの声は、少しも聞こえない。
 それどころか、足音すら兵たちの物しか聞こえなかった。
 『姫がどうしてもお前の話を王に聞いて欲しいと言うから、特別に謁見が許可されたのだ。
  そうでなければ、今頃おまえは評議会の審判を下されていてもおかしくない。
  姫に感謝することだ。
  それから、くれぐれも妙なまねはするんじゃないぞ』
 フェイトの反応を見ているのだろうか、兵たちの足音が少し遠くのまま止んだ。
 「なのは」
 背後から声を掛けられて、なのはが振り向いた。
 王が、なのはの父が豪奢な椅子にかけてなのはを呼んでいた。
 「はい」
 答えて、王の傍ら、自らの席に向かう。
 もう扉の向こうの声は聞こえない。
 聞こえないし、もう聞きたくもない。
 フェイトは、どうせ何も言わないのだ。
 なのはの足は、自然と早足になっていた。
 カツン
 金属がぶつかる音。
 「入れ」
 王が声を掛けると、一拍置いて戸が開いた。
 「連れてまいりました」
 先頭の兵が頭を下げる。
 別の兵に両脇を固められて、フェイトも小さく頭を下げた。
 「さて」
 口火を切ったのは、王だった。
 「君が知っているかどうかは知らないが、なのは、なのはなら知っているだろう?」
 「……」
 父の言葉に俯いて奥歯を噛みしめるなのは。
 何も言いたくないという思いが、黙っていても伝わってきた。
 その様子に、王も言いにくそうに躊躇を見せる。
 けれども、臣下の手前、法をも預かる者として言わないわけには、いかなかった。
 「王族を誘拐した者、およびそれに故意に加担した者には――」
 「程度の大小にかかわらず死罪を申し付ける」
 独り言のように、フェイトが後を続けた。
 「知って、いたか」
 「えぇ、その程度の事でしたら」
 「覚悟はできていると、そう取ってもいいのかな」
 「御随意に」
 「……では、被告人フェイト。
  君を王女なのは誘拐の廉により、我が国の法に乗っ取って評議会に――」
 「違う!」
 なのはが、王とフェイトの間に飛び出した。
 フェイトを背に立ち、父親をまっすぐに、睨むように見つめる。
 「私が、フェイトちゃんに、連れ出して欲しいって頼んだの!
  騙されたわけでもないし、無理やりだったわけでもない!」
 強いなのはの視線を受け流すようにして。
 それから、王は何事もなかったかのようになのはに声をかけた。
 「そこの彼女とは、一緒に住んでいたそうだね、なのは」
 「それが、どうしたの」
 「なのはがいなくなってから、結構な月日が経った。
  逆に言えば、なのははそれなりに長い時間をそこの彼女と過ごしたことになる」
 「だから、なんなの?」
 「情が移った――評議会は、おそらくそう判断するだろう」
 「な……ッ!」
 「あるんだよ、なのは。
  そういう事例は過去に、何件も。
  重要なのは今のなのはの証言じゃない。
  実際になのはが失踪した時、その時はどうだったかということだ」
 「だから、その時に私から――!」
 「それをどう証明する?」
 「え……?」
 「なのはから言い出したという証拠――手紙でもあるのか?
  証人は?」
 「そんな、もの……」
 「やはり、ないか」
 「……でも!」
 「同じタイミングで、宝石が幾つかなくなっている。
  そこの彼女が宝石を盗みに入り、たまたま目撃してしまったなのはを誘拐した――もしくはその両方が目的だった。
  あり得ない話ではない」
 「それこそ証拠がないじゃない!」
 「ない。
  ないが、同時期に何人もの侵入者を許したとは考えたくないのも事実だ。
  足のつかない宝石の処分法など、いくらでもあるしな」
 要は評議会を納得させられるかどうかだ、そう王は呟いた。
 「賢明な判断です、閣下」
 俯いたままのフェイトが、口を開いた。
 「ほう……?」
 「フェイトちゃん!?」
 視線を向けた二人のうち片方、なのはをちらりと見てからフェイトは視線を王に戻した。
 「黙っていて下さいませんか、王女殿下」
 「王女殿下って……名前で呼んでくれてたじゃない!」
 なのはの声に、縋るような響きが籠もる。
 「もうこうなっては、貴女と親しげに振る舞う必要もございませんので」
 「振る、舞う?」
 呆然と呟いたなのはが、数歩よろめく様に下がって。
 階段にぶつかり、腰を落とした。
 「座っていなさい」
 そうなのはに声を掛けてから、王はフェイトに向き直った。
 「さて、説明してくれるかな」
 「特に付け加えることはございません。
  先ほど閣下が仰られた通りです」
 「とは?」
 「盗みに入った私が王女殿下に見つかってしまったため、殿下を騙して連れ出した……そういうことです」
 「ちが……だって、私……」
 「座って、いなさい」
 声を詰まらせたなのはを、再び王が制した。
 「口を封じようとは思わなかったのか?」
 「人を傷つけるのは好みませんし……後々、何かしら便利に使えるかと思いまして」
 「使えたかな」
 「いえ、全く。
  殿下は日常生活以外の事につきましては、私に非協力的でありましたので」
 「そうか……。
  しかし、なぜわざわざそんなことを証言する気になった?
  心証が悪くなるだけだぞ」
 「なんと言おうが私の処遇は変わらないでしょうから。
  嘘をつくよりは洗いざらいしゃべった方が気が楽です」
 「そうか……。
  分かった、個人的な会見はこの程度にしておこう。
  あとは評議会の場でどうなるか、だ」
 そう重々しく言って、王が歩き去る。
 ふらふらと、視線の定まらない様子のなのはがそのあとに続いて。
 その姿が見えなくなるまで、フェイトが顔を上げることはなかった。
  
 
 
 後日、王を含めた十数名により評議会が開催された。
 審議はごく短時間に終わった。
 王は慎重な討議を望んだものの、大臣以下、この場においては王と同等の発言力を与えられている数名の意見が一致しては、議論は結論へとただ流れていくだけだった。
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