Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T. 37
夢に届いた者の言葉は、道標。険しい道を、そっと照らす。
じゃあ、夢に届かなかった者の言葉は?

こんばんは
フェルゼです。

近しい人なら、一緒に食べたり飲んだりした時に聞けるんでしょうけどね。
見上げるだけで手を伸ばさなかった話、伸ばしたのに届かなかった物語。
星を見るようなそれは、星の数ほど。
星空が陽の光に溶けるように、眩しい物語に溶けて消えてしまうのでしょうか。
……なんか恥ずかしくなってきた。

さて、今回更新もM. T.
「拍手」ってボタンの名前、「殴打」に変えた方がいいですかね?
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。


 「フェイトちゃん!
  どうするの……国に着いたら、ばれちゃうよ。
  フェイトちゃん、捕まっちゃうかもしれないよ!」
 街道沿いの宿の一室で、なのはは囁くような声でフェイトに尋ねた。
 「いいんだよ、なのは。
  アリシア――姉さんと母さんを失ってからの私の人生は、おまけみたいなものだったんだから。
  遅かれ早かれ、こうなる運命、だったんだよ」
 簡素な造りのベッドに仰向けに転がって、フェイトは何でもないことのように言った。
 「連れ出して、フェイトちゃん。
  それが無理なら、フェイトちゃんだけでも逃げて」
 「扉の向こう、廊下に見張りはいるに違いないし、窓の外にもいるだろうね」
 「こないだ使ったみたいな魔法を使えば、逃げられるでしょ」
 「バルディッシュが、ないんだよ」
 「フェイトちゃん、デバイスは魔法を使いやすくするための物だって言ってた。
  だったら、なくても使えるよね」
 「記憶力がいいね、なのはは」
 フェイトは困ったような笑みを浮かべてなのはを見た。
 「なのはが気に病むことじゃないんだよ。
  これは私の業なんだ。
  なのはの知らないところで、私はたくさんの人を傷つけているんだよ。
  傷つけて、奪って、逃げて。
  どんなに言い繕ったところで、その罪は消えない。
  私はね、罪人なんだ」
 そしてそれになのはを巻き込むわけには、いかない。口には出さずにそう付け加える。
 「私では私を裁けない。
  どうやって贖えばいい?
  これでも少しは良心が残っているんだ。
  その呵責に耐え続けるのには、疲れたんだよ」
 「……じゃあ、ジュエルシードは?
  ジュエルシードを全部封印することは、フェイトちゃんの罪滅ぼしにならないの?
  フェイトちゃんが封印するんじゃないの?」
 「私がジュエルシードを封じるのは誰かのためじゃない。
  復讐だよ。
  極、個人的な理由。
  それもここまでだ。
  ハラオウンがいる。
  後は、彼らが何とかするだろう」
 そう言うと、フェイトはごろりと転がって、なのはに背を向けた。
 それ以上の会話を拒絶するようなその背中に、なのはは掛ける言葉を見つけられなかった。


 しばらくぶりに門をくぐった城の中でなのはを待ち受けていたのは、上へ下への大騒ぎであった。
 半信半疑で待っていた家臣たちは、フードを取ったなのはの素顔に数秒間無言になり、そして歓声を上げた。
 それは、何よりの証拠だった。
 衛兵に引き渡されたフェイトは、なのはが何かを言う前に連行され、速やかに投獄された。
 男たちは意気揚々と帰っていった。
 来る時には持っていなかった袋に何が入っているのか、なんてことは、なのはは知りたくもなかった。
 それが自分とフェイトの値段だと考えると、とてもやりきれなかった。
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