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ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T. 21
今日も元気だ煮物が美味い。
しかし私は足が短いなぁ。

こんばんは
フェルゼです。

おいしいですよね、煮物。
作って良し、食べて良し。
冬は煮物の季節です。

さて、今回更新もM. T.
一段落、ですが、まだ終わらないのよ。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 コンコン……というノックの音が、思考に沈んでいたなのはを呼びもどした。
 「なのはちゃん」
 「あ、はやてちゃん」
 戸を開けたはやては、ちょっとええかと尋ねて。
 なのはが頷くと、入口の壁に背中を凭せ掛けた。
 「なぁ、なのはちゃん。
  なのはちゃん、ほんとはセンセのおるあの家に帰りたいんちゃうんか?」
 時折つっかえながら、何処か言いにくそうにはやてが告げる。
 ヴィータちゃんから何か聞いたのかもしれないな、となのはは思った。
 でもきっと、それより前から、はやてちゃんは気にしてくれていたんだろうな、とも。
 周囲の機微に聡い。
 もっと幼いころから、はやてはそういう少女だった。
 だから、だろうか。
 つい頼ってしまう。
 甘えてしまう。
 一時羽を休めることを、笑顔で受け入れてくれるから。
 けれども。
 「うん、やっと気が付いた。
  はやてちゃんたちと一緒にいるのも、すごい面白かった。
  でも、私、やっぱりあの場所が一番なんだ。
  フェイトちゃんのところに居たいから、だから私はあそこに帰りたいんだ」
 申し訳なさそうに、それでも笑みを浮かべたなのはの声に、はやてが満足げに肯いた。
 「帰りたい場所がある、居たい所がある。自分で考えてそれをちゃんと決めたなら、それはもう疑ったらあかん。
  居たい場所なら、必死でしがみつかな」
 「うん……ありがとう!はやてちゃん!」
 「礼なら、皆に言ったってな。
  其々に心配しとったんやで」
 「うん!」

 まずは誰に言おう?そんなことを考えながら部屋の戸を開ける。
 と。
 「あ……」
 はやてと同じように、壁に凭れかかって腕を組んだシグナムの姿が目に飛び込んできた。
 「シグナムさん」
 「私だけではないぞ」
 その視線の先、開いたままの扉の向こうでは、畳みかけのタオルを膝に乗せて手を振っているシャマルと、背中を向けたままのヴィータがいた。
 「シャマルさん、ヴィータちゃんも」
 「はい」
 「なんだよ……」
 一歩引いて、手を前にそろえて、なのはは大きく頭を下げた。
 「急にお邪魔して、迷惑かけて、心配かけて、ごめんなさい!
  それから、ありがとう……本当に、ありがとう!」
 「うむ」
 満足げな声を上げたシグナムは、そのまま踵を返した。
 「ほら、ヴィータちゃん」
 シャマルがヴィータをつつく。
 「分かってるよ……。
  あー、その、なんだ。
  別に私らは、邪魔だったとか、迷惑だったなんて、微塵も思っちゃいねぇからな。
  だから、謝る必要なんてねぇ。
  感謝の言葉だけ、受け取っておく」
 言いきって、ヴィータは部屋の奥へと姿を消した。
 「そういうことだから。
  本当に、なのはちゃんがおうちの事たくさん手伝ってくれたから、助かっちゃった。
  帰っちゃうのが残念なくらい」
 変わらぬ笑みを浮かべて、シャマルが告げる。
 「えと……じゃあ、また、お手伝いにきます」
 「それは嬉しい申し出やけど、タイミングが悪いな。
  もうしばらくしたら、またちょいと出てこうおもっとるんよ。
  また帰ってきたら、その時は、なのはちゃんとこ……あのセンセんとこに、遊びに行かしてもらうわ」
 「うん、待ってるね。
  フェイトちゃんもきっと、喜んでくれると思う」
 「ほな、はよ帰り。
  陽ぃ暮れてまうに」
 「うん……ありがとう!」
 ひらひらと手を振るはやての背中にもう一度頭を下げて、なのはは荷作りに取り掛かった。
 フェイトちゃん、許してくれるかな……そんな小さく胸に残る不安は、そっと包み隠して。

 元々少ない荷物をまとめるのにそんなに時間はかからなくて、むしろ部屋の掃除に時間を取られてしまった。
 カバンを手に八神の家を後にする。
 シャマルとはやてが、ザフィーラを伴って角まで見送ってくれていた。
 名残は尽きないけれど、でも。
 大きく手を振って、頭を下げて、なのはは駆けだす。
 帰りたい場所へ。
 なのはの、家へ。

 本当はずっと、ずっと帰りたかった。
 自分の中で当たり前すぎて気付かなかったこと、ただ彼女の傍に、あの場所にいたかった。
 きっと、そうだった。
 それだけだったんだ。

 夕陽がなのはの肌を赤く染める。
 けれどももっと、それ以上に、その頬は上気していて。
 会える!
 会いたい!
 早く!
 彼女の、元へ!

 「フェイトちゃ―ん!」
 一日の診療を終えて、洗濯物を取り込もうとしたフェイトが届いた声に振り向くと。
 「た、ただいま……」
 出て行った時と同じように鞄を手に持って、そして、大きく肩で息をするなのはがいた。
 「ごめんなさい!
  急に出て行って……私……。
  その、私がここにいる理由が分かんなくなって、それだとお城にいた時と同じになっちゃうかもしれないって思うと怖くて。
  この場所を離れたくなったらどうしようって思うと怖くて。
  だから、そう思わないうちに距離を取ろうって、そしたら……」
 手を、伸ばしかけていた洗濯物から下ろす。
 ゆっくりと、フェイトは体ごとなのはに向き直った。
 木の陰から現れた夕陽が、なのはを逆光の中に取り込む。
 フェイトは目を細めて、半ばシルエットになってしまったなのはを見た。
 言葉を途切れさせたなのはの、視線を感じる。
 「おかえり、なのは」
 フェイトの言葉になのはの輪郭がピクリと震えた。
 夕陽が薄い雲に包まれる。
 弱まった光の中に、なのはが見えた。
 「離れてね、色々考えたの。
  色々、いっぱい、いろんなこと、考えたの」
 途切れる声に、なのはの必死さを感じて。
 フェイトは目を細めたまま、
 「うん」
 と頷いた。
 「それでね、やっぱりなのははフェイトちゃんのところに居たいって。
  ここに居たいって、帰りたいなって、思って、だから……」
 途切れながらも早口に紡がれる言葉は、まるで零れるようで。
 なのはの口から零れてくる様で。
 それを抱きしめるような気持ちで、フェイトは口を開いた。
 「うん、分かった。
  色々考えてくれたんだね。
  戻ってきてくれてありがとう、なのは。
  待ってたよ」
 大きな笑みを浮かべたフェイトに、なのははヒクリと息を呑んで。
 それから強く、地面を蹴った。
 「ただいま!フェイトちゃん!」








 後書き
 とりあえず、一区切りではあります。
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