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ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
手に、手を
雪の重みにへこたれそうです。
主に腰や腕が。

こんばんは
フェルゼです。

あけましておめでとうございます。
本年が、皆様にとってよい歳でありますよう。
できれば当ブログも、よろしくお願いします。
昨年の停滞はちょっと転換点を迎えていたためなのですが、
次の転換点が、すぐそこに迫っています…。
しかも前回よりも、大きな。
果たして乗り越えられるかどうか、どうか…。
私は変わらないつもりなのですがね。
楽しみは減らしたくないので、がんばって続けていく所存でありますよ。

さて、今回更新は昨年はできなかった新年モノ。
初詣のお話なのですが…ちょっと、早すぎたかしらん。
登場されるのは「なのはさんとフェイトさん」
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 『なのは、少し遅れちゃったけど、初詣一緒にどうかな?』
 『うん、いいよ。
  私もまだだから、ちょうどよかった。
  今からでいいのかな?』
 『うん』



 手に、手を



 「よし……」
 一時間前にやり取りしたメールを確認してからパタンと携帯を閉じ、一つ気合を入れなおす。
 今日こそは、手を繋ぐんだ……!
 そんな決意を新たに、時計を見る。
 待ち合わせまであと十分……そろそろなのはは来るだろう。
 顔を上げ、なのはの家のほうを見る。
 と。
 疎らに過ぎる人影の中、小さなその姿が視界に入った。
 はっきりとは見えない。
 けれどもなぜだか、自分でも不思議なくらい見間違えようのないその人。
 すっと片手を上げると、気がついたのか向こうも大きく手を振って、それからタタッと駆けて来てくれた。
 「フェイトちゃん。
  ごめんね、待たせちゃったね」
 「うぅん、ちょうど今来たところだから」
 私が言うと、なのはは少しだけ眉を下げて笑った。
 少しだけ、寂しそうな笑み。
 「直接会っては言ってなかったよね。
  あけましておめでとう、フェイトちゃん」
 「あ、うん。あけましておめでとう、なのは。
  今年もよろしく」
 コートのポケットに入れておいたカイロはそろそろ冷たくなりかけているけど、まだ、手をつないでも大丈夫な温かさは残っているはずだ。

 神社への道すがら、いろんなことを話した。
 休みがちになっている学校のこととか、アリサやすずかのこととか。
 どんどん忙しくなってきた仕事のこととか。
 いっぱいいっぱいの頭を抱えて、会話に回す領域は実は少しだけ。
 だからそれは、会話というよりもなのはが振ってくれた話に答えているだけだったのかもしれない。
 本当はこの会話だって楽しみたい。
 一生懸命に楽しみたいのだけれども……。
 ―――今日一緒に休みが取れていてしかもこっちにいるというのは、またとない機会だから。
 歩みに合わせてふらふらと揺れるなのはの手をじっと見つめる。
 捉えるのは、容易い。
 けれども、難しい。
 本当に、難しい。

 ―――友達だったころは、あんなにも易く出来ていた行動が、告白しただけでこんなに変わってしまうなんて。
 正直、予想外だった。
 何もかもが、関係全てが変わってしまうことは覚悟して告げたはずなのに。
 最悪、終わってしまうことすら覚悟したのに。
 受け入れてくれたなのはは今、私の隣にいてくれて。
 私は、その手を掴もうと必死になっている。
 あの覚悟さえあれば、何でもできると思ったのに。
 今はただ手を掴む事すら、できない。

 ふらふら揺れるなのはの手。
 ゆらゆら定まらない私の視線。
 すたすた歩いて行くなのはと。
 わたわた並んで行く私。

 もう……ちょっと。
 次のタイミングで……!
 「フェイトちゃん、聞いてる?」
 「ひゃい!?」
 足が止まってしまった。
 「え?何?」
 「何?じゃなくて。
  フェイトちゃん、私の話聞いてた?」
 「あー、うん。
  えっと、その……」
 「その?」
 「……なんだっけ」
 「もう……何か気になることあるのなら、無理に今日誘ってくれなくてもよかったのに」
 「無理じゃないから!
  せっかく一緒に休みになったんだし、その、いい機会だったから!」
 「機会?なんの?
  初詣?」
 「あ、あぁ、うん、初詣」
 「ふぅん……」
 小さく頷くと、なのははまた歩き出した。
 何かうまいことでも言えればいいのに……。
 なのはの手に目をやりつつ。
 そんな自己嫌悪に陥りつつ。
 さしたる間もなく、私たちは神社に到着した。

 「さすがに……ほとんどいないね」
 「うん、ちょっと遅いからね」
 話しながら、一通りの手順を済ませて行く。
 柏手打って、新年の、抱負、と、願い事と。
 "どうか、みんなが幸せになれますように……"
 心から、祈る。
 そのためにはもちろん、私たちも努力は欠かさない。
 私が何とかできるのは、私の手の届く範囲だけだから。
 私は、どこまで手を広げることができるのだろう。
 それと……。
 "なのはとの仲が、もうちょっと、進展しますように……"
 すごくスケールは小さくなって、完全な私事だけれど、こっちもまた、結構切実。
 だったりする。
 努力は、してると思うんだけどなぁ……はぁ。
 神様にお願いって言っても、貰えるのは機会くらいだと思う。
 機会だけだと、今回みたくヘタレてしまうのが……。
 自覚はしてるんだよ、自覚は。
 結局、後は私次第、か……。

 「フェイトちゃんは何をお願いしたの?」 
 目を開けると、私を見ていたらしいなのはと視線が合った。
 吸い込まれそうな瞳に、一瞬で鼓動が跳ね上がる。
 「うん?
  みんなが幸せになれるようにって。
  なのはは?」
 「私も、かな」
 そう言って、なのははこくりと首を傾げた。
 少しゆっくり瞬きをして。
 「それだけ?」
 「え?」
 向けられた質問に、私は瞬きを忘れてしまった。
 「なんだか、結構長かったから」
 「え?えと……その……」
 私の言葉は、だんだんと不明瞭な音となって、口の中で消えてしまった。
 自分にがっかりしてしまう。
 なんでここで言えないかな、私は。
 「……なのはは、ね」
 俯いて黙り込んだ私に焦れたのか、なのはがゆっくりと切り出した。
 「え?」
 「なのはのお願いは、もう一個、あるよ」
 「……なに、を、お願いしたの?」
 一つ一つ、言葉を区切るかのようななのはの声に、肺がきゅっと縮まる。
 心臓が早鐘を打っていた。
 吐く息が詰まって、私の声を引っ掛けさせている。
 「……フェイトちゃんが、もっと積極的になってくれますようにって」
 「なのは……」
 なのはが、口を尖らせた。 
 それすらも可愛いと思ってしまう私は、相当にやられている。
 「さっきだって、さ。
  ずっと待ってたのに」
 「あ……うぅ」
 しっかり、ばれてた。
 「フェイトちゃんのいくじなしー」
 ダッと、なのはが駆け出していく。
 思わず掴もうとした手は空を切って。
 バランスを崩したまま二、三歩、前のめりになる。
 そう、バランスが悪いのだ。
 私一人だけの手ではもう、収まりが悪い。
 切っ掛けを作ったのは、私。
 受け入れたのは、なのは。
 だったら。
 私は手をじっと見てから、ギュッと、握りしめた。
 「行くよ、なのは!」
 かけっこなら、スピードなら負けていない。
 この程度の差なら、境内から出る前に埋められるはずだ。
 いや、埋めてみせる。
 
 踏み込む。
 足元の砂利が、擦れた音を立てる。
 同じザリッという音を立てて、なのはもまた私の少し先を走っている。
 横顔が見えて、私もまた笑みを浮かべた。
 全力じゃないなのはと、全開の私。
 瞬く間に距離は背後に流れ去って、私は合図のようになのはの指に触れた。
 ほら、もう捕まえられるよ。
 もう一度指先に触れる。
 触覚だけが、なのはを捉える。
 今度は離れないように、そのまま指を引き寄せる。
 触れる面積が大きくなる。
 熱を、感じた。
 ぬくもり、温度。
 懐かしさすら感じる、求め続けたもの。
 軽くなのはの手を引く。
 二人、速度が穏やかになっていく。
 もうバランスは崩さない。

 捉える。
 包み込む。
 引き寄せる。
 なのはの手を。
 私の手で。

 鳥居の手前、二人足を止めた。
 白い息が空へと昇っていく。
 「捕まえた」
 「捕まっちゃった」
 私が笑う。
 なのはが笑う。
 私の手をきゅっと、なのはが握った。
 「明けましておめでとう、フェイトちゃん」
 なのはの笑みが、深くなる。
 「これからもずっと、よろしく」
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