Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T. 17
歪な…ひどく歪な
私の蜜柑

こんばんは
フェルゼです。

なんだか、蜜柑ばかり食べているように思われそうですが、
リンゴも食べてるんです。
柿だって食べるんです。

さて。
今回更新もM. T.
詳細はお任せします。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 気の乗らないままの夕飯を片づけて、フェイトは部屋に戻った。
 来た人たちの状態等を整理する。
 よくなった人。
 変わらない人。
 新しく掛かり始めた人。
 治療が済んだ人たちもいるから、人数自体はあまり変わらない。
 町の真ん中の方にも診療所はあるけれど、ここを掛かり付けにしてくれている人たちは移るつもりはないらしい。
 「あの子は元気かな」
 スバルの話に、フェイトはふと思い出した。
 以前ここにいた、見習いの子。
 スバルは勘違いをしている。
 あの子がここを去ったのは、決して音を上げたからじゃない。
 あの子はそんな弱い子じゃなかった。
 私が教えられることは全部教えて、違う人からも習いたいともう一つ、町の中央にある方の診療所に移った。
 今はそこで一人前にやっていると聞く。
 別段なのはの前での口止めをしていたわけではないのだけれど……あんな反応を示すとは思わなかった。
 こんな結果になってしまうなんて。
 仕方のないことなのかも、しれないのだけれど。
 「はぁ……」
 フェイトの口から溜め息一つ。
 あの子が巣立った時も、寂しさは感じたけれどもそれ以上に達成感とかそういう感情があったから、こんなことにはならなかった。
 でも、これは達成感だけの問題だろうか。
 自問する。
 思い出す。
 一日の事。
 朝、起き辛くなった。
 生活の物音で、誰かの声で目覚めることが出来ないためだろうか。
 以前ならば気にもならなかった起床という行為が、こんなにも。
 朝食には、以前によく食べていたシリアルなどをまた摂るようになった。
 こんな味だったろうか。
 味気がない。
 いつ食べても変わらない、特徴のない味。
 以前はそれが気に入っていたはずなのに。
 あの、舌に残る苦みが時折、懐かしくなった。
 色々なものが、欠けてしまった。
 食事の際に、言葉を交わす相手がいない。
 分け合って家事を行える相手がいない。
 細かな仕事を担ってくれる誰かがいない。
 患者との間のやり取りに加えて、そこにあったはずの会話がない。
 家に戻っても、ぬくもりがない。
 食事がおいしくない。
 声がしない。
 顔が見れない。
 戯れに触れることもできない。
 なのはが、いない。
 ペンを投げ出して、フェイトは両目を覆って天を仰いだ。
 かけがえのない何かをなくしてしまったような気がした。
 そんなにもあの日々は愛しかったのだと、我が事ながら気付きもしていなかった。
 「なのははずるいなぁ、こんなやり方で気付かせるなんて」
 声にした途端、熱い何かが込み上げてくる。
 もう二度と手に入らないと、諦めたものだった。
 求めてはならないのだと、封じ込めたものだった。
 血塗られたこの両の手で、触れることは許されないから。
 幸せになる資格など、とうに失っていた。
 ―――被害を広げないため。
 そんな大義を自分の中にかざして人を傷つけてきた。
 どれほどの人々を傷つけてきたのか。
 決して、少なくはない数だった。
 時折幻視する緋に染まった手。
 逃げるように目を閉じると、怨嗟の声が頭の中を木霊した。
 鼻先を掠めていく銀色の刃。
 振り抜かれた隙を狙って繰り出した剣が、重い、纏わりつくような感触を伝えてくる。
 引き抜いた瞬間、降りかかる熱い液体。
 気を取られた刹那で、肌が切り裂かれる―――
 体中に残る傷跡が、今もまだ透明な血を流し続けている。
 戯れに始めた生活のはずだった。
 連れ出してほしいと言ったなのはの瞳に、危うげなものを感じたのは事実だったけれども。
 見も知らぬ者同士、生活習慣からすべてが違う者同士、続くはずがないと思っていた。
 全て仮面の向こうに隠してしまえば、一時の気晴らし程度にはなるかもしれない。
 だから、どこまで近づいても、気紛れに触れた時でも、からかうことだけは忘れなかった。
 なのに。
 気付けば、心の片隅を奪われていた。
 暖かさを感じてしまっていた。
 なのははきっと、なのはのために始めた生活で、この結果で。
 私への影響なんて考えもしていなかったのだろう。
 でも、これは卑怯だ。
 なのはに私を苦しめるつもりなんてなかったことは分かっているけれども、それでもそう思わざるを得なかった。
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