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ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T. 6
さらす手作りさらさらに
なにぞこの児の、ここだかなしき

こんばんは
フェルゼです。

頂いておりますコメントは、連載がひと段落しましたらお返事させていただこうと思います。
何、そう時間はかかりますまいて。

今回更新もM. T.
少し駆け足です。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。
 
 「朝だよ、なのは!仕事だ!」
 どんどんと戸を叩く音と、フェイトの声になのはが目を覚ました。
 「仕事…?」
 未だ薄明りの外を恨めしそうに見た後、眠い眼を擦りながら鍵を開ける。
 「昨日のうちに説明するのをすっかり忘れていたからね。とりあえず、顔洗っておいで。
  目が覚めたら、話をしよう」
 促されるままに冷水で顔を洗い部屋に戻ると、フェイトが椅子に腰かけて待っていた。
 向かい合うように、なのはもベッドに腰を下ろす。
 「で、仕事って?またどっかにいくの?」
 責めるようななのはの視線に、フェイトは首を振ってこたえた。
 「そっちじゃない。
  表向きの…と言えばいいかな、私がここで普通に生活を営むのに怪しまれない程度の収入を得る手段のことだよ」
 「へぇ…で、何?」
 「診療所」
 「診察するの!?あなたが!?」
 なのはが目を見開いた。
 「そんなに意外かなぁ…?こんなとこに住んでるから、薬草とかも手に入れやすいんだよ」
 「でも、そんな勉強したようには…」
 「見えない?」
 「見えない」
 「ひどいなぁ…。診察や調合の仕方はリニスから魔法と一緒に教わったんだよ」
 「魔法使いって、そんなこともするんだ」
 「私は特に、旅することが多かったからね。魔法使いということはなるだけ知られたくなかったし、自己防衛のための知識だったんだけど」
 「へぇ…で、それが何?私に手伝えって?」
 「いや、その逆だよ。しばらくは患者の前に姿を見せないようにしてほしいんだ」
 「なんで?」
 「なんでって…たぶん近いうちになのはがいなくなったことはこの国にも知らされる。
  いなくなったタイミングで、同じ名前の女の子が現れたら、疑われて当然だと思わない?」
 「あ…」
 「とりあえず一週間は外出禁止。診療所は離れだけど、家から一歩も出ないで。
  極力音も立てないで。家事全般も、診療時間が終わってからでいいよ。お風呂の用意とか、そとに出なくちゃいけないことはその期間は私がやる」
 「音もって…ずっと昼寝でもしていればいいの?」
 「いや、ある程度期間がたったらきっとばれてしまうからね。隠しきれることなんて、そうそうないものさ。
  そうなりそうになったら、なのはには私の助手をしてもらいたい」
 「助手?」
 「そう。だから、ある程度の知識を詰めておいて。関連する本なら、たくさんあるから」
 「あなたの助手、ねぇ…」
 「その呼び方もやめよう」
 「え?」
 「なのはは私の昔馴染みだということにしたい。そんな相手を"あなた"呼ばわりでは、なんだか違和感がないかい?」
 「んー…」
 「だから、気軽に名前で呼んでくれていいよ」
 「えー」
 「嫌そうにしない」
 「分かった…じゃあ、"フェイトちゃん"でいい?」
 「うん、いいね。友だちっぽい。
  "あなた"って呼び方も、お嫁さんみたいでよかったんだけど」
 ニッとフェイトが笑って立ち上がった。
 「じゃあ、朝ごはん作って」


 それからの毎日は、ひどく単調に進んだ。
 朝ごはんを食べたら、診療所が開く前に簡単な掃除と洗濯。
 手を振って出ていくフェイトを見送って、部屋に閉じこもって勉強。
 昼休憩でフェイトが戻ったら、一緒に昼食をとって、ちょっとおしゃべり。
 午後の診療に出ていくフェイトを見送ると、再び勉強。
 ただし、食後なので往々にして昼寝というオプション付き。
 夕方、乾いた洗濯ものを抱えて戻ってきたフェイトが何かをまとめているのを横目に、夕飯の用意。
 夕飯を摂りつつ、その日の進度チェック。
 後は、お風呂に入って就寝。
 適宜、フェイトのイタズラに対する制裁が加わる程度で、なのはの一日は単調だった。
 初めはいろいろなものが新鮮だった。
 家事の大部分について、自分がしなければ進まないという責任を負うことも、自分以外の誰かのために食事を作るということも。
 そして、それに対して時に皮肉交じりの遠慮のない意見が飛んでくることも。
 日が経つとともに、新鮮さは薄れルーチンと化していく。
 けれどもそれはまだ、なのはの中では楽しいままだった。
 少しずつ慣れていく時期、そしてまだ飽きる前の時期、だからだろうか、などとなのはが考え始めた三週間目。
 帰ってくるフェイトを出迎えようかと窓から離れをのぞいた時、窓辺の植木をうっかり落としてしまった拍子に忘れ物を取りに来たらしい患者とバッチリ目が合ってしまった。

 「えー、みなさん」
 診察が始まる時間。
 待合所にいた患者たちを前に、フェイトが咳払いを一つした。
 「今日から、助手を一人入れることにしました。
  紹介しましょう、私の昔馴染みで婚約者の、なのはです」
 「誰が婚約者か!」
 薄い青の上下を着たなのはの一撃が白衣にメガネ装備のフェイトの後頭部に命中して、朝の診療所に乾いた音を響かせた。





 後書き
 書いている時期に読んでる本の影響って、大きいですねぇ…。
 
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