Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T. 5
いつもはお湯で溶かしてから冷ますインスタントコーヒーを、最初っから冷たい水だけで溶かしてみました。
溶けきれなかったのか、少しだけ荒い舌触りのそれ。
いつもより鋭い苦みに、それだけでいい気分になった私は、かなりお手軽ですね。

こんばんは
フェルゼです。

さて
このタイミングで、水樹さんもそうおっしゃいますか!
田村さんと水樹さん、両方が仰られたということはつまり、そういうことですか!
車の両輪は揃ったと!
後は走り出すだけだと!
やぁ、うん…これは大変だ。
前回よりは冷静に受け止めることに成功したようです。

今回も今回とてM. T.
よい子はまねしちゃいけません。
悪い子もまねしちゃいけません。
普通の子もダメです。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。
 
 煙と熱とで、嫌になる。
 「うん、温まったからもういいよー」
 窓の向こうから声がした。
 「ずっと見てなくてもいいの?」
 なのはが返すと、
 「ちょっと仕掛けがしてあってね。うちの浴槽はすごく保温性能が高いんだよ」
 そんな返事が来た。
 やれやれと体を伸ばしたなのはに、もう一つ。
 「暇になったからって、そっから覗いちゃダメだよ」
 「誰が!」
 「覗くのなら、浴室の戸を開けて堂々とだね」
 「だから覗きません!」
 まだなにやら声が聞こえたが、なのはは肩を怒らせながらその場を立ち去った。

 「ヒドイなぁ、最後まで聞いてくれないなんて」
 大き目のタオルで髪を拭いながら、フェイトが口を尖らせた。
 色気と子供っぽさをまとめて放り込んだようなその仕草に、なのはが視線を逸らす。
 「聞かせるつもりなら、話題は選んでくださいね」
 「大事なことなのになぁ…あぁ、そうだ。早く入っておいで。保温性能が高いって言っても、限界はあるから」
 寝巻きにどうぞ、と大き目のワンピースをフェイトが差し出した。
 「どうも」
 しぶしぶといった風を装ってそれを受け取って、脱衣所の戸を閉めた。
 すっかり煙の匂いが移ってしまった服に、洗濯の仕方も聞かなくちゃいけないなと思いながら浴室の戸を開ける。
 「わぁ…」
 なのはの予想以上に、小さいながらもそこはちゃんとした浴室だった。
 手早く掛け湯をして、浴槽に体を沈める。
 「ふぅ…」
 長かった一日の疲れが、溶け出て行くようだった。
 ゆったりと目を閉じると、色々なことが思い出される。
 たった一日で、あまりに多くのことが変わりすぎていた。
 家のみんなは大丈夫だろうか、とか。
 この家に置いてはくれるみたいだけど、これからどうなるのだろう、とか。
 まぁ、あの女性も、一緒に暮らすには面白い人かもしれない、とか。
 一人で考えても詮のないことかもしれないが、考えざるを得ないことが次々と頭をよぎっていく。
 「そういえばあの女の人の名前、聞いてなかったな…」
 「私?私はフェイトだよ、なのは」
 「!?」
 思わず立ち上がって、それから、慌てて浴槽に潜り込んだ。
 お湯が跳ねて大きな音を立てる。
 「何しに来たんですか!」
 「覗くには、ちゃんと浴室のドアを開けて…」
 「覗かないで下さい!」
 「この家には、この家のルールというものがあるんだよ」
 「世間一般の常識を大事に!」
 「郷に入っては郷に従えという言葉があってね」
 「覗き!変態!犯罪者!」
 「うんそうだね、犯罪者だ」
 「出てけー!」
 「まぁ落ち着いて、落ち着いて。本当は石鹸の使い方を教えに来たんだ」
 「石鹸の使い方くらい知ってます!」
 「うちのは三つあって、各々用途が違うんだけど」
 「え?」
 なのはが目をやると、確かに色の違う石鹸が三つ、浴室の隅に並べてあった。
 「適当に使うならそれでもいいけど、髪ががさがさになったりしても知らないよ」
 「ど…どれがどの用途なんですか」
 「こっちから、髪を洗う用、次が洗髪用を流した後につけるヤツ、最後のが体を洗うための」
 「分かりました、分かりましたから至急出て行ってください」
 「一回洗ってあげるよ」
 「…は?」
 「さ、遠慮しないで」
 「遠慮なんかしてません!」
 「大丈夫だよ、変なことはしないから」
 「嘘だ!」
 「ヒドイなぁ」
 グルルルル…と威嚇しながらフェイトを睨みつけるなのは。
 「例えばこれなんて泡立ちにくいし、コツとかがあるんだよ」
 「だからって!」
 「全部私の手作りなんだ。失敗したとかで無駄にはされたくないからね」
 そう言われると、失敗しない自信はもてない。
 「本当に、変なことはしないんですね?」
 半目のなのはに、フェイトの笑顔は崩れない。
 「タオルで体隠せば、そんなに恥ずかしくないでしょ?」
 「…分かりました。ちょっと向こう向いててください」
 「はいはい」
 フェイトが背を向けるのを確認してから立ち上がって、タオルを当てて洗い場に下りた。
 小さな椅子に腰を下ろす。
 「じゃあ、お願いします」
 「はいはい」
 ザバッとお湯を汲む音がして、なのはは体を丸めて目を閉じた。
 頭から、お湯が降って来た。
 「あんまり髪が長くないから、洗いやすいね」
 「そうですか」
 「しかし、いい手入れをしていたんだね。すっと手が通る」
 そんなことを言いながら髪用石鹸の使い方を告げるフェイトの手元を、なのはは片目だけあけて眺めた。
 フェイトの手がなのはの髪を梳く。
 頭皮を揉み解すように指が動く。
 「はぁ…」
 漏らした吐息は心地よさのため。
 王族と言えどある程度成長すれば、誰かに洗ってもらうなどという機会はめっきり少なくなる。
 フェイトの指は、なのはにその久しぶりの感覚を思い出させていた。
 泡立つ石鹸に、警戒心まで流されていく。
 「こっちをしっかり流し終えたら、次はこの石鹸をね、こういうふうに…」
 「ハイ…」
 蕩けていく意識に、そういえば私疲れていたんだ…と思い出す。
 落ちそうになる瞼を、苦労して引き上げる。
 「頭、終わったよ、なのは」
 「あ、はい…」
 なのはが返しても、動きのないフェイトに小さな疑問符を浮かべる。
 ほんの少しの後、フェイトが小さく笑うように告げた。
 「頭、拭いてあげるからタオルかして」
 「はい…」
 体に当てるだけになっていたタオルを渡すと、わしわしと水気を拭われた。
 さっきまでそこにあった布地がなくなったことに、少しだけ寒さを覚え身を震わせる。
 「寒かった?じゃあ、はい、タオル」
 軽く絞ったそれを渡される。
 体に当てようと思ったけれど、温かいお湯を背中から掛けられると寒さも気にならなくなり、手に持ったままぼんやりとしてしまう。
 「次、だけど…タオルはそれきりしかないから、手で、いい?」
 えと、何言ってるの?
 もう言っていることもよくわからなくなっていたけれども、考えることも動くことも面倒で、小さく「うん」とだけ告げた。
 「りょーかい」
 そんな声を聞きながら、徐々に舟を漕ぎ始める。
 頭がガクッと揺れては目を覚まし、体を起こすとすぐにまぶたが落ちる。
 小さな笑い声が聞こえて、そして。
 ペタリと、背中とわき腹にお湯ではない、温かい感触がした。
 ぬるぬると動くそれに違和感を感じ、残っていた意識の欠片で思考する。
 "手で"
 「…!!」
 覚醒した。
 「な、何してるんですか!」
 「何って、洗ってあげているんじゃないか」
 「どうして手で洗ってるんです!」
 「なのはがタオル掴んでるから。了解も取ったよ」
 「た、タオル渡せばいいんですか!」
 動かそうと腕に力を入れると、タイミングを見計らったようにフェイトの指が敏感な肌を滑った。
 「ひゃっ!?」
 背中に渡そうとしていた腕が、反射的に体の前で縮こまった。
 「ほら、なのはタオル渡してくれないんだもん」
 「あ、あなたの…ふゃ!せいで、す…」
 片手では洗いつつも、片手で面白がるようになのはの肌を弄ぶ。
 「んじゃー次は前ー」
 「前くらい、自分…やぁ!」 
 「え?何?聞こえなーい」
 心底楽しそうなフェイトの声と少しだけ色混じりのなのはの悲鳴が、人気のない森の入り口を賑わせた。
 
 「もうお嫁にいけない…」
 がっくりとなのはが肩を落とす。
 結局フェイトに抵抗らしい抵抗をすることすらできず、"隅々まで"洗われてしまった。
 それも、素手で。
 「じゃあ、ますます私のところに嫁に来るしかないわけだ」
 「黙れ犯罪者」
 歯を見せんばかりの勢いで威嚇するなのは。
 フェイトが一歩でも近づけば、冗談じゃなく噛みつかれそうだった。
 「どうどうどう」
 「馬ですか私は」
 「いやぁ、馬はあんなに柔らかくな」
 「出て行け!」
 クッションがまっすぐフェイトを狙って、慌ててフェイトは部屋から出た。
 ここは先ほどなのはに宛がった部屋。
 戸を閉めると、遅れてカタリと鍵を下ろす音がした。
 完全に警戒されているらしいことに苦笑いを浮かべるも、少なくとも今夜は部屋から出ることはないだろうと踏んでフェイトはゆっくりと、渡り廊下へと足を向けた。
 廊下の先、そこには例の離れの一つがある。
 フェイトが床についたのは結局、それから数時間の後だった。





 
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