Empty Dumpty
ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
M. T.
知らないからこそ
できることもあるのです。

こんばんは
フェルゼです。

某アニサマには行けなかったのですが、
断片的に得られた情報からSSを書いてみたらヒドイことになりました。
それは置いておいて。

今回載せさせていただくのは、並行世界モノと分類されるもの。
なんとなく思いついたので書いてみました。
主に登場されるのは「なのはさんとフェイトさん」
魔法も関係なくはないですが、撃ち合ったりなんだりということはしておりません。
至極適当ですが、お付き合いいただける方は以下からどうぞ。
 特殊ケースの中、毒々しいまでに鮮やかに輝く種を見つめる。
 そう、これは種だ。不幸の、種だ。

 テスタロッサといえば、かつての大地主の名だった。
 爵位すら与えられ、その栄光は衰えることがないと思われていた。
 気高く、けれども優しい母と穏やかに微笑む才に溢れる姉。
 父親こそいないものの、フェイトは満ち足りた中にいた。
 それが欠けたのはある日のこと。
 まるで修道者のような黒衣の男が持ち込んだ、宝石…ジュエルシード、そう彼は呼んでいた。
 あれが我が家にきてから、母は変わってしまった。
 優しさが鳴りを潜め、周囲に当たり散らすようになっていった。
 ある日、姉はあっけなく死んだ。そして、母は狂った。
 ついていけないとばかりに使用人は次々とやめていき、代々使えてくれていた彼らを、母を最後まで諌めようとしていた彼らを母が解雇したとき、テスタロッサから爵位は既にはぎ取られていた。
 なぜ私は狂えないのか、それを呪った。
 荒廃していく家の中、どれだけ傷つけられようと私は母の傍らにいるつもりだったのに。
 母は、姉のもとにいくと一言書き残して、飛び降りた。
 居場所をなくし、私は彷徨った。幸い路銀に困ることはなく、優しい人々にも会った。
 無論、すべてがそううまくはいかなかったけれども。
 色々な町を回り、様々な話を聞く中で、私は気づいた。
 宝石、ジュエルシード、それは一つではなかったということに。
 そう呼ばれた石の所有者とその家族がすべて呪われたような最期を迎えていることに。
 私のような生き残りは珍しい部類らしい。
 そして誰一人とて、幸せであったという話は聞かなかった。

 そのとき私が感じたのは、良く言えば使命感みたいなものだったのだろう。
 悲惨さを良く知る私が、何とかしなければいけない。そんな決意を漲らせていた。
 そして私はあの石の力は魔術によるものだと、なぜかそう決め付けて魔術師を探した。
 魔法が衰退してしまった昨今、師となれるだけの技術を持ったものは稀で、難航はしたが諦めることはなかった。
 結果的にその勘は当たっていたのだけれど、リニスが言っていた魔力資質という物が私にあったからだろうか。
 リニスというのは私が師事した魔術師の名で、変わったことに自らを呼び捨てにするよう約束させられた。
 他にもやたら体術や剣術を教え込もうとしたりするなど色々変わっていたけれど、結局彼女が何者だったのか分からないまま、私はあそこを旅立った。
 それ以来、ジュエルシードが関わっていると思しき話を聞いてはそれを封印するという日々を過ごしている。
 大概それは富裕層に属する人々の宝石コレクションの一部として紛れ込んでいるので、勝手に封印料として足のつかなそうなものを拝借したりもしているけれど。
 そして今回。
 いつもと同じように、とある国の王室にそれがあると聞いて私は封印に乗り込んだ。



 「はぁ…」
 数少ない自由な時間に溜め息なんてつきたくないけれど、出てしまったものは、まぁ仕方がないよね。
 そんな言い訳を自分にしてみる。
 誕生日を越えて16歳。
 婚姻可能な年齢になった途端押し寄せるように"お見合い"というものに割かれる時間が増えてしまった。
 写真と資料だけ見せられて、結婚するかどうかなんて決められるわけがない。
 自分達は恋愛結婚なんてしたくせに、仕方がないなんて苦笑いしながらそんなもの見せないで。
 「結婚、か」
 正直、今まで考えたこともなかった。
 会った事がある男性は肉親かお城に仕えてくれている人たち。
 いい人たちだけれど、そういう目で見たことは一度もない。
 ふと、肉親でも仕えてくれているのでもない男性に会った事があるのを思い出した。
 けれどもそれは、申し訳なさと苦笑いとを呼び起こすだけだった。
 「ユーノ君とはやてちゃん達には悪いことしちゃったなぁ…」
 各国を旅してまわっているという人たちがお城に来たことはあったけれど、私と同世代の人がそれも複数人来るなんてことはあの一回きりだ。
 思えばその時からだろう。
 私が、外の世界で暮らしたいと思うようになったのは。
 お城の外で暮らしたいと思うようになったのは。
 こんな深夜の徘徊を始めたのも、そんな願望を一時的に充足させるため…なんて言ったらいいのかもしれない。
 お城の中の徘徊。衛兵に見つからないようにこっそりと行っていたそれに、今夜はどうも先客がいたらしい。
 倒れたままの衛兵。開けられたままの扉。月明かりの下揺れる金の髪。
 どうしたらいいのか分からなくて途方にくれた私に、声を掛けてきたのは向こうだった。
 「衛兵ではないようだし、お后様にしては幼すぎる。キミはいったい誰なんだい?」
 ワンテンポ遅れて、自分に話しかけられているのだと気づいた。
 「なのは…」
 「なのは…?あぁ、お姫様、か…」
 大仰に驚いた声を出した相手に、私の中のどこか冷静な部分が小さく声を上げた。



 M. T.



 "しくじったな"
 フェイトは表面上平静を装いつつ、内心で苦笑を浮かべた。
 まさかこんな時間にお姫様が歩き回っているなんて、予想外もいいところだった。
 しかも、立っている位置が悪い。
 気絶させた衛兵の体が扉を閉めることを難しくしていたので、開けておいたのがまたまずかった。
 こちらの立ち位置は部屋の奥。
 あちらの立ち位置は廊下。
 下手に叫ばれでもしたら、止める前に他の衛兵に聞こえるだろう。
 今夜は諦めて帰るか?
 そう自問して、小さく後ずさった時だった。
 「黙っていてあげようか」
 「は?」
 耳を疑った。
 「だから、黙っていてあげようか。あなたがそれを持って行くこと」
 「どうして?」
 「黙っていて欲しいの?欲しくないの?あ、妙な気を起こしたりしてもダメだよ。ちょっとでも怪しい素振りを見せたら、力一杯叫んでやるんだから」
 何を言っているんだと思ったが、同時に嘘もついていないだろうと思った。
 ならばどうする?
 今回の一件の所為で衛兵による監視も強化されるに違いないし、巡視のパターンも厳重なものに変わるだろう。
 この部屋については尚更だ。
 再びパターンを研究し、こちらのリスクが少ない日時を絞り込むまでにどれくらいかかる?
 …
 口を噤んで考える。
 フェイトの目の前にあるジュエルシードはまだ微弱な影響を与えているに過ぎないようだった。
 ここでいったん引いても、次の機会までもつだろうか?
 胸の中で首を振る。
 いつ大きな厄災を振りまき始めるか分かったものではないのだ。
 しかも今回の持ち主は王室…単位が国となればその被害はどこまで広がるか、想像したくもない。
 可能であるならば今日この機会、逃すわけにはいかなかった。
 「そうだね、私としては是非とも黙っていて欲しいところだね」
 「なら一個、条件があるの」
 「…そんなことだろうと思った」
 溜め息が漏れた。
 こちらとら、そちらさんのための泥棒稼業だぜ?そんな言葉が漏れそうになる。
 しかし、次の一言でそんな言葉は全て吹き飛んでしまった。
 「一週間後の夜、私も攫って」
 目が点になる、というのはこういうときの事を言うんだろうなと、フェイトはぼんやりと考えた。
 「は?…キミは自分が何を言っているのか分かっているの?」
 「八日後にお見合いがあるの。私はそんなものしたくない」
 「だから私に攫えと?保育園じゃないんだ」
 「一時的なんかじゃない…私、ここを出たい。外で暮らしたいの」
 「苦労知らずのお姫様の戯れ言だね。キミは外がどんなところか知りもしないんだろ」
 「そうだね…私はお話を聞いたことがあるだけ。でも、だから知りたいと思った。あなただって、私の暮らしを知らないで否定することなんて出来るの?」
 「そうじゃない。ただ、考えが甘すぎると言っている。行く当てはあるの?生活するためのお金は?どう稼ぐつもり?」
 「だから…」
 そう言って、なのははフェイトを指した。
 「黙っていてあげるって言ってるじゃない」
 「驚いた…取引かと思ったら恐喝だったのか、さっきのは」
 「どう取ってもらってもいいよ。あなたがすべきことは、選ぶこと」
 「…負けたよ、負けた。私のことは黙っていてくれ。そちらの条件が果たされたようだと判断したら、一週間後にキミを攫いに来よう」
 「ん…待ってる」
 「…私が嘘をついて来ないとは思わないの?」
 「月明かりだけど、あなたのことは少しは分かるもの。それだけ長身で綺麗な髪を持った女性は、そうそういないでしょうね」
 「なるほど…どう転んでも私に不利なわけだ」
 「それじゃあ、一週間後に待ってるわ」
 「キミを攫って、君と暮らす…ね。仮にも一国のお姫様なんだ。私がキミをどこかに売り飛ばすとかは考えないわけ?」
 「あなた、そんな卑劣なことをするひとなの?」
 「お忘れかいお姫様、私はこの通りの犯罪者だ」
 「そうね、確かに犯罪者。でも、あなたは卑怯なことはしない。私、ヒトを見る目には自信があるの」
 「それは結構なことだ。じゃあ、仮にキミを売り飛ばさなかったとしよう。君と一緒に暮らす、その目的がキミの体だと言ったら、どうする?」
 「え…?」
 なのはが固まった。
 「女だからって油断したらいけないよ。転がり込んでくるからには、それくらいの覚悟はあるんだろうね」
 思いもよらなかったのか、なのはが口をぱくぱくさせる。
 心持ち顔が赤い。
 「どうせ…」
 「ん?」
 「どうせここに居たって思い通りにならない体だもの。だったら、私は私の思った通りに行動する」
 「それはつまり、私に襲われてもいいというわけだ」
 「…よくはないけど」
 「はっきりしてくれないかな」
 「…いいよ、襲ってきたら返り討ちにしてやるから」
 「勇ましいことだ」
 大仰に肩をすくめる。
 「じゃあ、これで契約成立だ。一週間後の夜、私はキミを攫いにくる。キミは私に攫われて、後は私のなすがまま、と」
 「思い通りになるなんて、簡単に思わないでよね」
 「分かった分かった、じゃあ今夜はこれで退散しよう。目当ての物は手に入れた。そちらも、約束は守ってくれよ」
 そう言って、フェイトが闇に溶ける。
 姿が消えて、気配が消えて。
 帰ったのだろうかとなのはも踵を返した。
 と、その時。
 なのはの背後の闇から腕が伸びてきて、なのはの口を塞いだ。
 「…!」
 叫ぼうにも声が出ない。
 もがこうとして、逆に引きずり込まれる。
 踵が絨毯の端に躓いて、口を押さえていた手が外れた。
 今だ…と、なのはは倒れ込みながらお腹に力を入れる。
 そして、叫び声をあげようとした瞬間。
 グッ…と、再び口を塞がれた。
 手ではない。
 頭がパニックに陥る。
 呼吸を止めていた。
 無意識に薄く開いた唇を割って、熱い固まりがなのはの口内に侵入した。
 「ふ…んぅ!」
 チュ…クチュ…
 暗闇に小さく、湿った音と鼻にかかったような息が漏れる。
 絡めとられ、弄ばれて吸い上げられる。
 「ぁ…ふぁ…」
 頭が、霞む。
 初めての経験に意識が霞んで、いつ解放されたのかすら、気がつかなかった。
 抱き寄せられていた腕を失って、床にぐったりと崩れる。
 赤い顔のまま肩で息をするなのはに、フェイトがそっと忍び寄る。
 びくりと、なのはの体が固まる。
 その様子に小さく笑みを浮かべるフェイト。
 「ごちそうさまでした、姫君。この続きは、私の家でということでよろしいですね?」
 「な…ぁ!」
 反射的に顔を向けたなのはと至近距離で見つめ合う。
 「おや…近すぎても遠すぎても分からないものですね。あなたは、私が思った以上に可愛らしい方だ。一週間後が楽しみになったよ、なのは」
 「ッ!!」
 クスクスと小さな笑いを残して、今度こそフェイトが闇に消える。
 キィと窓が閉まる音がして、静寂が戻った。
 残されたのは、コレクションが一つだけ欠けた宝石箱と、未だ目を覚まさない衛兵と、真っ赤な顔で唇を押さえるなのは…だけ。 



 後書き
 なんとなく書いてみたかっただけなんです…。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2005 Empty Dumpty all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.