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ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
left XII -still in the groove-
あなたの望みは
なんですか

こんばんは
フェルゼです。

今回も前回に引き続きまして。
制限はかけませんが、
良い子は見ちゃダメ。

それでは、独り善がりでは為す術もない第十二話。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 歩む先
 向かう場所
 見えない、ただ、無明



 XII -still in the groove-



 「フェイトちゃん、入るで」
 「はやて?」
 はやてが扉を開けると、フェイトは半身を起してそれを迎えた。
 「どうしたの?急に」
 「なのはちゃんのことや」
 「…!なのはが、どうかしたの」
 「どうもしてないて、思っとるんか」
 「…」
 「こないだのお見舞いの時のなのはちゃんの様子見て、どうもしてないって思ったか?」
 「……」
 「揺れ幅が大きなっとる。
  感情の揺れ幅が、以前とは比べ物にならん位に大きい。
  不安定なんや。
  いや、不安定やったんや、フェイトちゃんがいなくなって」
 「私が姿を見せたから」
 「あんな別れ方で終わってまったら、それこそ壊れてまう。
  また姿を見せてくれたこと自体は、多分、必要やったと思う」
 「なら、なんで」
 絞り出すように尋ねたフェイトに、はやてはチップを差し出した。
 「これは…?」
 「あれからなのはちゃんの様子がおかしなった。
  どこがいうんやないけど、なんとなく、な。
  他にも色々あって…すまん、フェイトちゃん。
  なのはちゃんの部屋での様子、録画させてもらった」
 「…それが、この」
 「今の一般機械では再生できんチップや。
  やけど、この再生機なら見れる」
 「はやては、見たの?」
 「すまん、少しだけ確認させてもらった。
  でも、フェイトちゃんには全部を見てほしい」
 「私に、全てを知れ、と?」
 「せや。
  フェイトちゃん、なのはちゃんの恋人…やったんやろ?
  ならフェイトちゃんには見る義務がある」
 持参した再生機と小型のディスプレイを接続する。
 「ええな」
 確認、いや、それ以上の強制力を含ませてはやてが訊ねる。
 こくりとフェイトが頷いたのを確認して、自室と同等の手順を踏んだ。
 一時停止された画像が拡大される。 
 「…これは…」
 「なのはちゃんの手元、よう見てみ」
 「…」
 「わかるやろ、フェイトちゃん。
  なのはちゃんが何もっとるか」
 見つめたフェイトは、奥歯を噛みしめて視線を斜めに外して、そして、もう一度正面から見据えた。
 「…私の腕、だね」
 「私らが最初に見舞いに行った後にな、腕だけ紛失したそうや。
  同じタイミングで、固定用ケースを持ったなのはちゃんがシャマルに目撃されとる」
 「…」
 「私が確認したのは、そこまでや。それ以上は見とらんし、それ以上のことも知らん。
  しばらく席、外させてもらうから…フェイトちゃん、見たってくれんか?」
 「分かった」
 はやてが後ろ手に扉を閉めたのを確認し、フェイトはイヤホンを繋げた。
 一つ深呼吸をして、絵を動かす。
 『ふぇ、フェイトちゃ…ん、ぁ!』
 湿った音が響いてフェイトの手が動く。
 なのはが、動かしている。
 自らの体を離れた指先がなのはの液に濡れて、ぬらりと光っていた。
 『ひゃ!く…ぅん…』
 もどかしげになのはの腰が動く。
 『ん…フェイ、ト、ちゃ…もぅ、ちょっと…!』
 粘性の音が部屋を支配する。
 『あ……!は、ぁ…』
 なのはの背が弓形に反って、小さく震えて。
 つかえたような息とともに、ずるりと、フェイトの指が引き抜かれた。
 咥えていたなのはの部分はまだひくひくと、フェイトを求めるかのように蠢いている。
 『はぁ、はぁ…』
 肩で息をしながらなのはは体を丸め、フェイトの手に顔を寄せた。
 実際に自らがその手を差し出している錯覚に陥って、フェイトの傷口が疼く。
 心持普段より色を深めた朱色がなのはの口内から姿を見せて、フェイトの指先に触れた。
 『ん…』
 なのはの舌が、フェイトの指に絡んだ自らの液を拭っていく。
 其はかつて、二人の行為であったこと。
 「くぅ、ん…」
 ずくん…と、フェイトの中が震えた。
 視覚からもたらされた情報に、脳が行為を錯覚し始めていた。
 『フェイトちゃ…』
 なのはがぼんやりと何かに焦点を合わせる。
 断ち切られた腕の先…なのはの瞳にはフェイトが見えるのだろう。
 そこに、フェイトがいるのだろう。
 それは、なのはを傷付けないフェイト。
 フェイトが望んで、けれども放棄したフェイトの在り方。
 ここにいる自分はもう、いなくなった方がなのはは幸せなのではないか。
 そんな考えが過る。
 ここにいるフェイト自身は、なのはをまた傷付けるだろう。
 けれども、今なのはが見ているフェイトなら…これ以上、なのはを傷付けることはない。
 そんな思い。
 「はは…」
 笑いが漏れた。
 左手で両の目を覆って、天井を仰ぐ。
 分からない。
 何をすればいいのか、わからない。
 なのはを傷付けて、たくさんの人に迷惑をかけて、それでもまだここにいる。
 ここで何もできずにいる。
 何をしたらいい?
 どうすればいい?
 疑問ばかりがフェイトの頭に浮かんで、解かれることのないままに積もっていく。
 「くっ…ぅ…」
 押し殺した声が、小さく響いて消えていった。

 どれほどの時間が経ったろうか。
 小さく響いたノックの音に、フェイトは砂嵐と化した画面から目を動かした。
 「えぇか?フェイトちゃん…」
 「あぁ、うん」
 フェイトの返事に、はやてが姿を見せる。 
 無言で再生機に歩み寄り、チップを吐き出させた。
 薄いそれは、はやてが両の手でもって軽く力を加えただけで、真ん中から二つに折れた。
 「はやて」
 フェイトが左手を差し出す。
 掌の中で、バチッと小さな稲妻が走った。
 少し距離を取ってから、はやては折れたチップをフェイトの掌へと落とした。
 ヂ…
 掌に触れるか触れないかのうちに、チップはただの黒い塊へと変化した。
 漂う異臭に眉を顰めてから、はやてはゆっくりと口を開いた。
 「今度のことやけど、な」
 「うん…」
 掌に視線を落としていたフェイトが、顔を上げた。
 「…なのはちゃんのこと思ってのことやと思う。
  詳しくはわからへんけど、なのはちゃんのためにと考えたんやと思う」
 「……」
 「でも、お願いやフェイトちゃん。
  このままやと、なのはちゃん…」
 言いにくそうに言葉尻を濁したはやての後を継ぐように、フェイトが口を開いた。
 「私が、勝手に姿を消したせいで…逃げたせいで。
  なのはが、潰れかけてる…」
 「私らでは何ともできなんだ…。
  急場を凌ぐのがせいぜいや。
  それに、フェイトちゃんかて、こんな逃げ方ばっかしとったら…壊れてまう」
 「…」
 「次の異動でまた離れ離れになるやもしれん。
  いや…ほぼ間違いなくそうなる。
  でも、大切なのは今このタイミングや。
  今、フェイトちゃんがフェイトちゃんの意志で…」
 「私の意志で、なのはのもとに戻れば、もしかしたら…そういう、事だね」
 「あぁ」
 「何もできないかも、しれないよ?」
 「あんな、フェイトちゃん。
  いろいろ考えとるみたいやけど…」
 「うん…」
 「考えすぎたらあかんで」
 「はやて?」
 「フェイトちゃんに限らず、なのはちゃんもやけどな。
  どうも、考えすぎるきらいがある」
 「…そう、かな」
 「今回のことかて、それを発端としたんちゃうんか?」
 はやての言葉に、フェイトは返す言葉がない。
 苦い顔で俯いたフェイトに、はやてはため息を一つ吐いて。
 「一個だけでええ。
  色んなことを突き詰めて考えたとこで、それが必ずしもいい結果に結び付くとは限らん。
  やから、今フェイトちゃんが考えなあかんことは、一個だけや。
  それだけを、一生懸命考え」
 「一個…?」
 そこではやては、ふっと口角を上げた。
 「お姫様は、ハッピーエンドをお望みや」
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