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ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
left V -Beautiful Amulet-
分かり切った結末を
誰か教えてください。

こんばんは
フェルゼです。

このあたりで拍手お返事も…と考えましたが、キリのいい所まで走らせていただこうと思います。
若干のコメントも頂いておりますが、すみません、お返事はもう少し待っていただけないでしょうか。

それでは、刻みこんで封じ込めた第五話。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。


 予定調和【よていちょうわ】世界の調和は予め神によって定められているという説。ライプニッツの説。


 V -Beautiful Amulet-


 「離して!」
 常時は、職員の談話や事務連絡などで比較的静かな隊舎の廊下。
 そこにその日は、悲鳴のような声が響いていた。
 「なのはさん!お願いします、待って下さい!」
 「嫌!離して!私はフェイトちゃんを探しに行くの!」
 「落ち着いて下さい!なのはさん!」
 スバルとティアナからの緊急通信ではやてが駆け付けると、そこには。
 力任せに足を進めようとするなのはと、それに追いすがる二人がいた。
 「なんや!?一体…」
 「私はフェイトちゃんに会いに行くの!」
 その叫びで、はやては全てを理解した。
 「あかん!フェイトちゃんがどこにいったんか具体的な場所は分からんのや!」
 「でも行くの!」
 「今はあかん!」
 「放して!」
 「お、お手伝いします、部隊長!」
 「すまん!頼む!」
 はやてと、見かねた数人の職員も加わって。
 そんなもみ合いが数分ほど続いただろうか。
 ふわりと、リインフォースがなのはの背後に回り込んでいた。
 「ごめんなさい…」
 沈痛な表情で告げ、シリンジのようなものをなのはの首筋にあてる。
 気付いたなのはが逃れようとするより早く、それはシュ…と排気音を発した。
 途端に、がくりとなのはが崩れ落ちる。
 「これは…?」
 「即効性の麻酔、ですか」
 息を切らせたスバルとティアナに、はやても肩で息をしつつ返す。
 「あぁ…ほんとは、ここまでしとうなかったがな…」
 はやての見降ろした先。
 手を伸ばしたままで蹲るようにして床に倒れたなのはが。
 「フェイト、ちゃん…」
 一滴の涙を、零した。



 「フェイトちゃん…どこ?
  ねぇ、フェイトちゃん…フェイトちゃんどこなの?」
 弱い照明の部屋の中で。
 なのはの手が彷徨う。
 いない。
 いない。
 誰も。
 かつて、伸ばしたその手を掴んだ存在は。
 「フェイトちゃん…?」
 その小さな呼びかけに答えるものは、ない。
 気配の残滓すら感じ取れない。
 暗闇が迫ってくる。
 明かりがついているのに、それは確かに闇色をしてなのはに迫っていた。
 まるで質量を持つかのように、その暗闇はなのはを圧迫する。
 フェイトを求めて歩むなのはを、こっちへ来るなと言わんばかりに押し返してくる。
 胸が詰まる。
 うまく呼吸が出来ない。
 薄く漏れた息に、そのまま声をのせたらいっそ楽になるのだろうか。
 声帯を震わせる。
 どこに力が入っているのかも分からない。
 「ぁぁぁぁ…」
 嗚咽か、叫びか。
 ただ一つ確かなのは、それが間違いなく歪であったこと。
 意味をなさない声に引かれて、感情が零れそうになって。
 それが何よりも怖かったから。
 だから、なのはは唯一、今の彼女にとって意味のある単語をのせた。

 「フェイトちゃん…」
 薄暗がりの中。
 浮かぶのは優しい笑み。
 愛しい彼女の、柔らかな微笑み。
 ずっとそばにあった。
 これからも、傍らにあり続けると信じていた。
 疑ってもいなかった。
 初めて出会った時。
 初めて抱き上げた時。
 初めて通じあえたと思った時。
 初めて抱きしめあった時。
 別れて…そして再開した時。
 同じ日常を過ごした日々。
 初めて、口付けを交わした時。
 始めて…抱きあった時。
 彼女との思い出は、大切すぎて。
 失うなんて…あり得ない。
 許さない。
 幻のように浮かんだ彼女に手を伸ばして。
 微笑む、彼女に手を伸ばして。
 「あ…」
 空を、切る。
 それでも浮かんだ笑みは消えなくて。
 なのはは顔を中空に向けたままで、空を切った手を引きよせた。
 自らの体に触れた途端、寒気が走った。
 違う。
 この体に触れるのは、触れてほしいのは、私の腕じゃない。
 模造品には、優しさなど必要ない。
 シャツを握りしめたままで手を引き下ろす。
 指と爪の境が少し裂けて、紅が盛り上がる。
 生地ごと爪を立てられた肌が、寒気以外の感覚を思い出す。
 肌に。
 甦るのは温もり。
 初めて掴んだ彼女の手と、初めて抱きしめた彼女の体と、同じ温もり。
 そして、熱。
 二人幾度となく交わったそれを。
 なのはの躰ははっきりと覚えていて。
 そう、それは深く、深く。
 胎内に感じた、それすらも。
 「ぁ…」
 なのはの表情に恍惚がおりる。
 かつてフェイトのみに侵入を許したそこに、甦って。
 感触が、熱が、快感が。
 甦って。
 なのはは思わず体を折り曲げた。
 下腹部に触れた手。
 さめぬ、熱。
 自分に熱をもたらすモノ。
 「フェイト、ちゃん?」
 眉根を寄せて、それから不思議そうな表情を浮かべる。
 「フェイトちゃんフェイトちゃんフェイトちゃん―――」
 呪文のように繰り返して、ピクリと、なのはの体が震えた。
 「あぁ…!」
 途端に、なのはの表情が輝いた。
 「見つけた…」
 そして、下腹部を愛おしげに撫で擦る。
 ゆっくり、ゆっくりと。
 壊れものを扱うかのように。
 「フェイトちゃん、見つけたよ…。
  こんな所に、いたんだね…」
 なのはに穏やかな笑みが浮かぶ。
 そう、それはどこか。
 聖母と言われる像の浮かべているものと、似ていた。


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