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ヒトもすなるぶろぐといふものを、私もしてみむとてするなり。 徒然なるままに文章を書いてみるつもりです。
left IV -Nocturne-
あなたの価値、私の価値。
必要なモノ、不必要なモノ。

こんばんは
フェルゼです。

今回は特に、諸々の意味で設定がアレですが、
"この話に関しては"そういうものだと思ってくださることをお願いします。

それでは第四話。
お付き合いいただける方は、以下からどうぞ。

 それは突然もたらされたものではあったが、必然でもあった。
 起こり得るべくして起こった結果であるし、もしかしたら。
 私自身が、それを望んでいたのかもしれない。
 ただ、私だけが。


 IV -Nocturne-



 ある日、はやてに呼び出された。
 「教官としてもそうやが、それ以外の面でも二人の成績が明らかに下降しとる」
 前置なしにそう切り出して、はやては私たちの目をじっと見つめた。
 小さく頷く。
 視界の端で、なのはもまた頷いたのが見えた。
 溜息を一つついてはやてが再び口を開く。
 「あたしとしては一時的なスランプや、思って少し見守りたいところやけど…本部が、な。
  トップコンビが時期を同じくして急激に成績を落したいうことで、二人を同じ隊に入れたことに何か問題があったかもしれんって意見が出てな。
  よくて査察、悪くて…」
 はやてはそこで言葉を切った。
 言わなくとも分かるだろう、ということだろう。
 つまり、「別々の隊に転属になり、会えなくなる」と。
 しかし、その時点で部隊長であるはやてすら飛び越えて私に内示が出ていた。
 異常な話ではある。
 どんな形であれ今の上司ははやてであり、そこを通らない異動通知など組織としてあるはずはない。
 ないのだが、その内容を見て私は納得した。
 はやてを通れば、確かに一悶着起こりそうな内容だった。
 曰く、「機動二課第二機動分隊への転属を命ず」と。
 ―第二機動分隊―そこは常に人手の足りない隊。
 志願者が少ないというのも理由の一つだが、主な理由はもっと単純だ。
 殉職率が、異常に高いこと。
 凶悪事件に対して、主に武力による制圧を行う隊であるため戦闘回数が他の隊の比ではなく。
 一定期間勤める、もしくは重傷を負った場合希望の隊に転属できるという特典はあるものの、その期間を生き抜くだけの自信があるものは数えるほどしかいないのが現実だった。
 そこへの転属が命じられたということは、それだけの実力をもつと認められたということ、または。
 規定以上の力を持っているにも拘らず、もう使えないと判断されたということ。
 どちらかはわからないが、はやての話で分かったことはある。
 私が断れば、なのはが転属になると。




 眠り続けるなのはの髪をそっと撫でる。
 私が消えるか、なのはを見送るか。
 いっそ二人きりの反乱を起こしてみるのも面白いかもしれない。
 そうでなくても、二人姿をくらませるとか、退職してみるとか。
 頭を横切る提案に、苦笑を顔に張り付ける。
 なのはは眠っていると思っている。
 けれども、こうでもしないとついうっかり口に出してしまいそうだった。
 言葉になった思考はリアルな音を伴い、現実感を引き連れる。
 そうなった時、私はなのはに提案しない自信がない。
 そして、なのはは私の提案を受け入れるだろう。
 もしも逆であったら、私もなのはの提案を喜んで受け入れるに違いない。
 管理局に背を向ける、刃を向ける。
 "なのはのため"という大義名分が得られれば、私は躊躇しないだろう。
 困ったことに、だ。
 苦笑の色を深める。
 そんなことは、できないのだ。
 なのはは、私たちの関係とはまた別のベクトルで叶えたい夢を持っている。
 望みを持っている。
 私はそのための剣となることを、障害となるものを打ち払うことを決めたから、だからここにいる。
 現状、そして今後。
 なのはの夢のことを鑑みるに、この位置が現在のベストであることは疑いようがない。
 なのはの夢のためには、なのはが今ここから動くわけにはいかない。
 だからなのはが夢を叶えるにはきっと、私が隣に居続けてはいけない。
 「ふう…」
 一つ息を吐く。
 結論など、とうに出ていた。
 エース・オブ・エースと呼ばれるなのはと、部隊長たるはやてやヴォルケンリッターの面々の実力により最近は六課にも徐々に危険な仕事が回されつつある。
 その時なのはの隣にいられないのは、不安だけれど。
 とても、不安だけれど。
 不意に頭をよぎる遠い記憶。
 封じ込めて、でも忘れなかった記憶。
 …あぁ。
 そうか。
 こんな、どうにもできない不安を抱えたとき人は「神」に縋りたくなるのだろう。
 私は宙を仰いだ。
 
 神よ。
 もしも本当に存在するのなら、この愚かな女の願いを聞き入れてはくれないか。
 今ここに眠る彼女は、間違いなく貴方の子の一人だ。
 全ての子らが幸せになることを望むというのなら、どうか。
 どうか彼女を見守ってやってはくれないか。
 彼女に幸せを授けてやってはくれないか。
 …
 今まで貴方の教えに背いてきて何をいまさらと思うかもしれない。
 だが、彼女は悪くない。
 彼女はただ、私を救っていてくれたのだから。
 私は彼女なしでは、生きることすらかなわなかった。
 だから、悪いのは私だ。
 彼女の負う責めは、すべて私が負うべきものだ。
 貴方の子ではない、私が。


 
 神よ。
 どうか彼女にご加護を。
 どうか私を、見捨ててほしい。




 機動六課隊舎から一人の執務官が姿を消した日。
 本部からの異動「報告」で彼女が第二機動分隊に転属になったことを部隊長が知った日の朝。
 六課の皆さんへ、と書かれた彼女の手紙と引き出しの奥にあった日記帳を教導官が見つけ、
 最後のページに記されていた彼女の静かな叫びを目にした。

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